秋の道東 1、阿寒川

阿寒川では素晴らしい景色の中での釣り。


秋の道東 1、阿寒川

10月9日、3時20分釧路空港のロビーには、西別川さんとハミングウエイさんの笑顔が
待っていた。私と鵜住居さんはターンテーブルから荷物を取り、合流する。挨拶もそこそこ
に私は西別川さんの車に、鵜住居さんはハミングウエイ号に乗る。これから阿寒川へと向か
うのだ。                                     

車中で西別川さんと久しぶりの会話が弾む。夏の西別川OLMの事、私のこの秋の個展の事、
そして瀬音の森の事など・・・・市街から畑の広がる郊外へ、そして阿寒の山がグングン迫
ってくる。「今年は夏が寒かったので紅葉があまり綺麗じゃないんですよ」と西別川さん。
確かに山ブドウやツタウルシの赤がくすんでいるようだ。寒かった夏のOLMを思いだし、あ
の影響がまだ残っているんだと今さらのように今年の異常気象を考えてしまった。    

東北地方の川に大きな被害を与えた連続台風は勢力を衰えさせる事なく北海道を襲った。 
特に道東はその影響をまともに受けたようで、今回のオフも開催可能かどうか西別川さんは
だいぶ気を揉まされたらしい。                           

阿寒川の上流についた。ここはもう阿寒国立公園の中である。道の横に車を止めて釣り仕度
に着替える。車から出るとさすがに寒さが身を引き締めるが、西別川さんとハミングウエイ
さんが「今日はあったかいですねえ~」「ほんとですねえ」と会話しているのを聞くと寒い
とも言えなくなってしまった。                           

阿寒川は透明な重い流れを静かに下流へと運んでいる。周囲は国立公園の手つかずの森と言
う、絵のようなロケーションである。この川は途中にある堰によって海とのつながりが断た
れてしまった。その為アメマスがおらず、釣れるのはほとんどがニジマスだそうである。 
何カ月か前に、上流に「ノーキルゾーン」を設定したという漁協の新聞記事が話題になった
川でもある。                                   

私と西別川さんがルアー、ハミングウエイさんと鵜住居さんがフライというスタイルで川に
入った。浅いけれど強い流れに足を取られそうになる。初めての川に入る最初の一歩という
のはちょっと緊張する。あこがれと畏れなのだろう・・・水に入り、手先を水に付け、時に
は口をすすぐ。入渓の儀式のようなものだ。                     

こうして川の住民の仲間入りをさせてもらい、しばらくこの場所で遊ばせてもらう。魚が釣
れればもっと親密になり、仲間と楽しい時間を共有することで忘れられない川になる。さあ
阿寒川の釣りの始まりだ。                             

景色は最高なのだが、魚はどうも機嫌が悪そうだ。アタリが無い。西別川さんも首をかしげ
ている。私は久しぶりのルアーの感触を思いだそうと投げては引くをくり返す。絵のような
景色の中を1時間ほど釣り下る。この川のニジマスは流心ではなく、たるみや倒木の影にい
るらしい。                                    

西別川さんが25センチくらいのニジマスを釣った。近寄って見ると背の青い黒点の鮮やか
なニジマスだ。西別川のニジマスよりもスラリとしている。ルアーはプラグではなくてスピ
ナーを使っている。聞くと阿寒川スペシャルというスピナーで、阿寒川ではこれが一番なの
だそうだ。 う~~~む、知らなかった・・・・・                  

大きなプールでガツン!というアタリがあったが乗らなかった。残念・・・・      

その後、倒木の影で15センチくらいのニジマスを釣ったが、小さかったのでそのままオー
トリリース。阿寒川での私の釣果はそれが全てだった。                

ハミングウエイさんのドライフライにアタックがあり、合わせられなかったニジマスを横に
いた西別川さんがルアーで釣ってしまった。これがなんと30センチ近い良型!ハミングウ
エイさんの悔しがること悔しがること・・・西別川さんは身を小さくして恐縮していた。 

「さあ、そろそろ上がりましょう」と言われて時計を見るとまだ4時半。西別川さんが言う
「ことらの夕方は早いですよ。あと一時間で真っ暗ですからね」・・そうか、そういう事か
残念だけれど仕方ない。                              

こうして阿寒川一時間半の釣りは終わった。明日、明後日の準備運動だと思えば釣果は気に
しなくて良い。何より、この景色を堪能できた事が指し大の収穫だった。