ぶなの森体験塾 その2
かんじき、炭焼き、きりたんぽ、紙風船・・・初体験いろいろ。
ぶなの森体験塾の2日目はかんじきを渡される事から始まった。初めて履くかん
じきは思っていたよりも小さく、簡単に履けるものだった。聞くと地元でもこの
かんじきを履く事はほとんど無く、今回のかんじきも前回の体験塾で参加者が製
作したものだそうだ。
かんじきを履くと今まで踏み抜いていた雪面を難なく歩く事が出来るのには本当
に驚いた。森の案内人が4人付いてくれてぶなの森の散歩が始まった。しばらく
歩くと見上げるように大きなブナの林に入っていった。幹が一抱えもあるブナの
林だ。近づいて幹に耳をあてブナの吸う水音を聞く。
別の木には5メートルくらい上までくっきりと付けられた熊の爪痕があった。裏
側には熊が降りる時にブレーキのように付けた爪痕が上から下まで付いている。
熊も下るのは苦手のようだ。タヌキやヤマドリの足跡が雪の上につけられていて
森の案内人がそれぞれを説明しながら歩いて行く。
雪の中を歩いて向かった先は鶴の湯の炭焼き小屋だった。小屋からは煙が上がっ
ていて炭が焼かれている事が分かる。ここは鶴の湯で使う炭を焼いているだけな
ので社長がその気になった時だけ使うという贅沢な炭焼き小屋なのだ。ここで焼
かれている炭は「白消し」という炭で火持ちが良く、たたくと「キン・・」と澄
んだ音がする。炭焼き小屋に入り炭の掻き出しを体験させてもらう。参加者もそ
れぞれに真っ赤になっている炭と格闘した。
昼食は、鶴の湯山荘でキリタンポを自分で作って食べる。広間の真ん中に大きな
すり鉢が置いてあり、これであつあつの「あきたこまち」を半殺し(半練り)に
する。そしてそれを木串にかぶせて形を整え囲炉裏で焼くのだ。参加者それぞれ
大騒ぎしながら自分のキリタンポを作る。ところが焼くのに時間がかかり、待ち
きれなくなった人は鍋が来る前に味噌を塗って食べ始めてしまった。これはこれ
で味噌の焼けた香りが何とも言えずおいしい。
その後鍋が来て自在鍵に吊され、きりたんぽ鍋となった。これがまたおいしい。
張り切ってキリタンポを作ったものだから、沢山食べるはめになってしまった。
参加者はほとんど食後は動けなくなってしまい、そこかしこでゴロリゴロリと、
トドの昼寝状態になってしまった。
午後2時、場所を国民休暇村乳頭山荘に移して、ぶな林の観察会とぶな林での記
念写真の撮影をした。その後、会議室で田沢湖神代診療所長の斎藤先生の講義。
演題は「温泉浴と森林浴」。笑い転げる話が続き、アッという間の1時間半だっ
た。
休憩後、夕食。時間はまだ5時、昼食で満腹になったお腹はまだすこしも小さく
なっておらず、かなりきつい夕食となった。スケジュールの都合とはいえ、これ
には参加者からも苦情が出た。やっとの思いで食べ終わり、そそくさとバスに乗
り込み今晩の宿ファミリーオ田沢湖に向かう。
夕方6時、ホテルで待っていたのは、西木村の高橋林業係長の一行だった。これ
から西木村の小正月伝統行事「紙風船上げ」を体験させてもらうのだ。広い会議
室の机を片づけた床の上に横3メートル、縦6メートルの巨大な和紙が敷かれて
いて、これに参加者が思い思いの絵や言葉を書き込む。そして、それを両面テー
プで貼り合わせて巨大な紙風船を作る。ここで、時間は8時を回ってしまった。
出来上がった紙風船を外に運び全員で広げながらガスバーナーで熱気を送り込む
。ところが、折しも雨混じりの雪が強風で横殴り状態。最悪の天候となってしま
った。ふくらみ始めた紙風船が風で横倒しになり支えた手と強風のために破れて
しまった。2メートル近く破れてしまった紙風船を両手を広げて支えながら「こ
れはもうダメかもしれない・・・」と思ったのだが、高橋係長の「絶対上げるか
らね〜」という懸命なガムテープ補修が始まり、それを手伝った。
風の影響の少ないところに場所を移動して二度目の挑戦。今度は無事にふくらん
だ。「さあ、放すよ〜」「いち、にぃ、さん!」のかけ声で紙風船が雪の舞う夜
空に放された。紙風船は驚くほどの速さで暗い空に吸い込まれて行く。サーチラ
イトに浮かんだその姿は感動的なものだった。「やったー」「ばんざ〜い」全員
の声が夜空に飛び交う。参加者の気持ちが一つになったフィナーレだった。終わ
ったのは9時、西木村の皆さんお疲れさまでした。そして、ありがとうございま
した。
解散した後、食堂でビールを飲みながら高橋係長と西木村の市民参加林業の話を
した。高橋さんの話では大きな3本の柱を考えているとの事。一つはイベントと
しての林業参加。一つはふるさと作りとしての林業参加。そして最後は我々のよ
うな積極的に活動する市民がつくる森。この方針の上に西木村の市民参加林業は
進められる事になる。