解禁は小菅川で
猫ミュウさんと小菅川で釣りと巨木の景色を楽しむ。
すでに関東は解禁を迎えて、誰それがどこでどのくらいのヤマメを釣ったなどと
いう話が聞こえてくる。仕事やら何やらでなかなか釣りに行けず、ジリジリする
ような日が続いていた。そんな時やっと時間が空いた。「明日は休もう」と決め
猫ミュウさんと連絡を取り、急遽小菅川に行くことにした。
朝7時に家を出て目指すは小菅村の村営釣り場の駐車場。ところが青梅街道が渋
滞でまったく進まない。余裕を持って出掛けたはずなのに到着したのは10時の
待ち合わせにギリギリの時間になってしまった。反省しなくてはいけない。
猫ミュウさんがやってきて相談する。上流に行こうという事になり、黄色のジム
ニーに荷物を積み替える。猫ミュウさんは幌の開くタイプを探して買ったのだそ
うだ。ボンネットには放射能マークが描かれている、さしずめ核ジムニーといっ
たところだ。核ジムニー猫ミュウ号はガンガンと車体を揺らしながら高度を上げ
て行く。
途中吊り橋がある場所で「ここならすぐ降りられますから、ちょっとやって見ま
しょうか?」という声にすぐに頷き仕度する。今期初めての釣り仕度である。ち
ょっと緊張する。うまく振れるかな??
川に降りると水量は少なく、果たして魚が出るかどうか不安になる。広い河原に
も助けられてキャストはまあまあだ。倒木の裏側へキャスト、パシャッと水しぶ
きが上がったのに反応してロッドをあおるとなんとチビヤマメが空を飛んだ。
今期第一号は10センチにも満たないおチビさんでした。すぐに針がはずれて、
チビヤマメは難なく流れに帰っていった。ここではそれしか反応がなかったので
上流に移動する。
林道終点から入渓する。ここはもう原生林の世界だ。まだ雪も残っていて、山の
深さを感じさせてくれる。一抱えもあるサワグルミの巨木が根こそぎ倒れていた
り、石を抱くようにブナの巨木がそそり立っていたり・・と景色に圧倒されてし
まう。
まだ木の芽が出ていないので冬の山だが、これが新緑の季節だったらどんなに素
晴らしい景色だろうか?想像すると楽しくなる。パックロッドをつないでライン
を通し、源流釣りのシステムをセットする。階段状の流れはなかなかフライでは
大変だ。
渓相は最高なのだが、魚が出ない。この寒さではドライには反応しないだろうと
思う。猫ミュウさんが餌で釣った山女魚を見せてもらうとサビもなく綺麗なもの
だった。魚はいる、毛針に出てこないだけなのだ。あれこれフライを変えるが、
さっぱり反応はない。
大きな花崗岩の上でおにぎりを食べながら色々な話をする。そのとき上流から山
道を歩いてくる釣り人の姿が見えた。手には網ビクを持っている。う〜〜ん、平
日で、この寒さで、先行者かあ・・・・「下流に移動しましょうか?」「そうで
すね」しばらく休んでから道まで直登する。
この山道が何とも気持ち良い道だった。木々は冬の装いだが、馬酔木の群落があ
ったり、そこかしこにモミの巨木が立っていたりして伸びやかな気分になる山道
だった。尾根の突端にモミが重なるように繁っている一帯があった。普通こうい
う場所には山の神が祭られている。何かがいるような気配を感じるのだが、それ
が何かは分からない。
もし、秩父にシシ神の森があるとすればこんな森だろう。不思議な雰囲気の漂う
場所だった。上機嫌で記念写真を撮ってもらう。
下流へ下り、入渓しようとするとテンカラ釣り師の姿が見えた。もう少し上流に
行こうと歩くと、今度はフライマンの姿が見えた。それも2人だ。平日だという
のに釣り人は多い。これだけ首都圏に近い場所だと仕方のない事なのかもしれな
いが、平日くらいはゆっくりと釣りたいものだ。
さらに上流に入渓する。午後の日差しは柔らかく広い河原に降りそそいでいる。
しばらくアタリの無いまま釣り上がる。猫ミュウさんはずっと私に先行させてく
れる。申し訳ないことだ。
そこはごく普通の淵だった。たまたま流れ出しの水流がよれている場所にフライ
を落としたところ、いきないバシャっとライズがあったのだ。これをはずした。
今日初めてのライズをはずしてショックだったが、気を取り直して慎重に同じ場
所にフライをキャストした。・・・来た!水しぶきが上がる。竿に心地よい振動
が伝わる。ネットに納まったのは18センチ程のオレンジヤマメだった。
更に同じ淵で20センチと15センチが出た。猫ミュウさんの見ている前で釣り
上げる事が出来たのが嬉しかった。記念の写真を撮ってもらい、もう大満足。
時間はちょうど4時、これからがフライの時間なのかもしれないが、この3尾で
満足してしまい、ここで納竿する事にした。
猫ミュウさんありがとうございました。素晴らしい山の景色もきれいなヤマメも
本当に聞いていた通りのものでした。また会いに行きたいと思います。