月布川の幸
山形県大江町、月布川での釣り。
今年で3回目。恒例となった感のある6月の山形釣行。今回はエサ釣りの友人2人との
同行だ。金曜の夜10時半、友人のビッグホーンが迎えに来た。さっそく、道具を積み
込んで車中の人となる。車は一路東北道を目指す。
東北道は順調に流れていた。途中、蓮田付近で突然の大雨。その雨のせいか、起こり
たての交通事故現場を見る。トラックと乗用車が大破しており、破片が路上に散乱し
ている。一瞬車内に緊張が走り、運転は慎重に行こうと3人はうなずき合う。
月布川の河畔に着いたのは朝4時半。もう、すっかり明るい。さっそく仕度して川に
降りる。柳川地区の橋上流からの入渓、いつものようにエルクヘアカディスの16番で
ポイントを探るが、反応はない。朝早いせいか、虫も見えないしライズもない。これ
はダメかな?と不安になるが、下流から釣り上がってきた稲垣さんが、小さいポイン
トで良型ヤマメをポンポンとたて続けに上げた。ビクを見るとすでに10尾くらいの型
揃いのヤマメが入っている。エサ釣り恐るべし。
広い瀬に出た。突然、小さいライズ!黒胴のエルクヘアカディスを結んで慎重にキャ
スト、ライズのあったところで見事にパシャッと反応!すかさず合わせると18cmの
ヤマメ。月布ヤマメ第一号は巾広のベッピンさんでした。その後15cm、16cmくら
いのヤマメがたて続けに来る。久しぶりに楽しい釣りとなる。
7時、2日分の日釣券を買う。その足でそのまま中沢口へ。目指すは昨年大ヤマメをバ
ラシた忘れられないポイント。そのポイントの前で車から降ろしてもらう。2人は上流
へ行く。さあ、大ヤマメに見参だ。気持ちが引きしまる。そっとアプローチする …
ここまでは完璧。
昨年の実績通りにCDCダン16番を結び慎重にキャストするが、水面は炸裂しない。
フライを変え、再度キャストするが反応しない … ??? 沈黙したままである …?
ハッチがまったく見られない … 30分粘ったがこれ以上探っても無理と判断し、この
ポイントをあきらめる。
月布川本流に戻りエルクヘアカディス20番を結び、平瀬のヤマメと遊ぶ。集合時間ま
でに2尾の18cmクラスのヤマメが遊んでくれた。
集合時間 車に戻ると満足そうな2人の姿があった。ずいぶん多くの魚が出たようだ。
ウ〜ン、今日はエサ釣り日和だったか、そしていつものように昼食は「板そば」だ。
ビールがおいしい、久々の大漁に話がはずむ。板の間の縁側のような席で通り抜ける
風が心地良い。2人のエサ釣り師の舌は実に滑らかだ。
午後 朝一番に釣りをした場所で車を降ろしてもらう。2人は神道峡へと向かう。ビ
ールの酔いもあって橋の横にある家の車庫前で昼寝をきめ込む。風が気持ちいい。
ひと寝りしたら、急に寒くなってきた。空も暗くなってきて…そのうち、ポツリポツ
リと雨が降ってきた。これは夕立ちかな?…と思う間もなくバババッと雨粒が落ちて
目の前のアスファルトからホコリと湯気が上がる。アッという間に雨のカーテンが降
りてきて、一面の水煙に包まれていく。車庫の軒先で膝をかかえるように小さくなる
が徐々にしぶきで濡れていく。川は濁りが入り増水していく。本格的な夕立ちだ。
「これで魚の活性が上がるか、濁りで釣れなくなるか、どうなるかだな…」
一人言を言いながらの雨宿り、雨に洗われて山の緑が濃くなっていくようだ。この川
の河畔には大きな木が多い。クルミの木や杉の大木が急に存在感を持って浮かび上が
ってくる。雨の山里の景色は、なぜか心を落ち着かせてくれる。1時間程雨の中に溶
け込んで、山里の一部になってしまった。
4時 雨が上がった。腰を上げパラつく雨の中を橋の上に立って川を見る。濁りはあ
るが釣りが出来ない程ではない。さあ、7時まで3時間、ゆっくりやるとしようか …
流心の太い流れ込みの向こう側でライズがある。黒胴のエルクヘアカディス14番を流
れに取られないようメンディングしながら流す。何回かくり返すうち見事にライズ。
白い飛沫が上がり、16cmくらいのヤマメがフッキングしてくれた。同じ場所でたて
続けに3尾のヤマメがフライをくわえてくれた。おまけにそのうち1尾は20cmオーバ
ーのグッドサイズ。満足、満足。
夕陽が反射して見にくい平瀬を釣り上がるが、反応はない。流れがカーブしているぶ
っつけ、流心の向こうに柳がせり出しているポイントがある。茶のパラシュートフラ
イを柳の葉から落とすようにキャストする。何度目かのキャストにいきなり、モッコ
リと岩魚らしき茶色の頭が出た!反射的に合わせをくれるが、合わせが早かったか、
見事な空振り。ビッグサイズだったのに、残念。
夕まずめ、加藤さんが「この下の淵にライズがあるよ」と教えてくれる。いそいそと
淵に行くと、あるある、散発のライズが鏡のような水面に波紋を作っている、時々姿
を見せてボチャンと飛ぶ元気のある奴もいる。飛んでいる虫を見ると大きいのやら、
小さいのやら、白いのやら、茶色いのやら、さまざまだ。とりあえずCDCダン18番を
結んで流してみるが、反応はない。しばらくじっと見るがどうも一定しているライズ
ではない。グリーン胴のエルクヘアカディス20番を結んで淵尻のライズに向けてロン
グキャスト。いきなりバシャッと飛沫が上がるが、合わせられない。ラインが長いと
どうも合わせが遅れる。結局三度あったライズも一度もフッキング出来ず、課題の残
るイブニングだった。
今日の宿は柳川温泉。自炊の宿だが、この地区に住む佐竹さんご夫妻が夕食のごちそ
うを作って来てくれた。山盛りの鰍の唐揚げ、佐竹さんの家の前で採れた天然鮎の塩
焼きワラビの煮物と漬物、ミズナのタタキ、ブナハリタケの煮物、平茸の汁物、冷た
いビールと大江錦が次々と空けられる。一年ぶりの楽しい宴会が続く。気が向いたら
温泉に入れるし、眠くなったら寝れば良い。まことにぜいたくな一夜となった。
翌朝 佐竹さんと大頭森山へ、根曲がり竹の筍採りに同行することになった。朝5時
起きだ。この筍採りの顛末は、別項「山形 大江町 大頭森山の山の幸編」にまとめ
た。
そして夕方、帰途に着く前のラストチャンスの釣り。場所はもちろん中沢口の例のポ
イント。時間は2時間。例のポイントではやはりライズは見られない。フライを変え
つつ何度かキャストして、15分休みをくり返すが反応はない。時間はどんどん過ぎ
ていく。そして約束の7時が目前に迫った時、いきなりガボッ!!という心臓が止ま
るかのような大きなライズ音!。動機が激しくなり、神経がキューンと集中していく
のが分かる。「よし、今なら釣れるかもしれない …」
茶のパラシュート14番を出来るだけソフトにプレゼンテーション。流れの筋に乗る
フライが流れる … バシャ!と大きな飛沫が飛ぶ!アイズスリーが弓なりに曲がる。
「これはデカイ!」魚はグングンと竿を絞り、ギラリギラリと反転する。竿をためな
がら「はずれるな、はずれるな」とくり返す。手ごたえ充分の魚をじっくりためて、
護岸の上に抜きあげる。フキの葉の上に横たわったのは巾広24cmの山女魚だった。
最後の最後に女神がほほえんでくれたようだ。リリースも含めて百尾は釣ったという
エサ釣り2人を大きさで上回るビッグワンが最後に私に出てくれた。月布川は期待通
りの結果を見せてくれた。
来年もまた、と帰途に着いた。満足の山形釣行だった。