月山和紙
月山和紙の匠 三浦一之さん
1996年 9月7日 山形県西川町大井沢に自然と匠の伝承館がある。平成元年
7月17日、朝日連峰の自然の数々と、月山周辺に伝わる技の数々を伝承して行
くために建てられた博物館である。月山和紙、木地木工、メノウ細工、はた織
草木染めなどの工房があり、見学や体験ができるようになっている。
入館料は、大人200円 子供100円と格安である。
私が見学したときは和紙の原料の『こうぞ』の繊維のあく抜きと精製をやって
いた。これをキチンとやらないと、漉き上がった紙が無垢な色に仕上がらない
そうで、かなりの量の繊維を取り除いている。残ったものの丁度半分くらいだ
ろうか?
手漉き和紙にとって最も大切なのは水。鉄分を含んだ水で和紙を漉くと後で茶
色の斑点があらわれて脆い和紙になってしまうとのこと。月山水系の水は適度
のアルカリ性で、しかもきれいで柔らかい(軟水)ので手漉き和紙には丁度良
いということだ。
三浦さんは埼玉県小川町の和紙の里で7年修行を積み、ここに来た。ここでは
月山の自然を和紙に反映することを目標にもう3年になる。 今、伝統的な月
山和紙のほかに、山ぶどうのツルを漉き込んだ和紙や、草花、木の葉を漉き込
んだ和紙を新しく開発しているところだと言う。四季折々の月山周辺の自然を
和紙の上に定着させることに苦心しているということだ。
私が見せてもらったのは、アジサイの花を漉き込んだ和紙とコスモスの花を漉
き込んだ和紙の2種類。これからの季節は紅葉を漉き込んだ和紙になっていく
そうである。まさに四季の色を漉き込んだ和紙といえる。
この和紙の漉き込みは、まず普通に漉いた和紙に花や葉を散らしその上にごく
薄く漉いた和紙を重ねる手法だ。とこう書くと簡単だが、実際にやるとなると
大変な作業になると思う。絵画のように仕上げるには、その素材がないといけ
ない。同じ形、同じ色の花や葉を集めるだけでも大変な作業だし、しおれてし
まっていては役にたたない。三浦さんは、その上に花の色が変わらない工夫も
しなければならないし・・・・
このホームページのバックに使っている和紙が三浦さんの漉いた『山ぶどう』
の和紙である。これは山ぶどうのツルを2〜3センチに切り、鍋でグツグツ煮込
んでその繊維を和紙に漉き込んだものである。大判の和紙なので全体に均一に
繊維を散らさなくてはならない、それも流れる水中で自然にそうなるように。
大変な技である。 どうしても中央が薄くなり、上下が濃くなると三浦さんは
言うが、私には平均に見えた。 つくづく大変な技である。
この技をもっともっとみんなが知って、手漉き和紙の価値を見直してくれれば
三浦さんに続く人達が出て来るに違いない。
仕事柄、紙というものに日常接していると、この手漉き和紙の手触りの暖かさ
に驚かされる。伝統工芸品としてではなく、手元に置いておきたくなる手触り
である。気に入っている本のカバーなどにすると、贅沢な質感を味わえるので
はないだろうか?
山形に釣りに行ったら、ちょっと寄って話してみませんか? きさくな人です。
山形県西村山郡西川町大井沢4110
自然と匠の伝承館 月山和紙 三浦一之
0237-76-2112