韓国紀行 その2


朝早くから夜遅くまでソウルを堪能しました。



韓国紀行 その2

朝7時に起きてシャワーを浴び、着替えて一人で出かけた。目的はソウルのワールド
カップスタジアムを見ること。集合時間の10時までに戻らなければならないので、
かなり忙しい。何せ右も左も分からない場所なのだから大変だ。市庁前の駅でスタジ
アムまでの切符を買い、地下鉄に乗り込む。地下鉄は通勤時間より早いためか空いて
いて車内の様子が良く分かる。日本の地下鉄よりも車内が若干広いように感じる。新
聞を読む人、本を読む人、寝る人と日本と変わらない光景が展開されている。車内広
告を見るとワールドカップ関連の広告が多い。そういえば、駅のコンコースや地下通
路など至る所でワールドカップの広告がある。こうしてみると、日本はいったい何を
やっているのだろうと不安になる。韓国の方がよほど熱心だししっかりと準備出来て
いる。このままでは日本は国際社会から見放される結果になるような気がして恐い。

今回の旅行で泊まったホテル。これほど格式のあるホテルとは思いませんでした。 ソウルの地下街にはワールドカップの広告看板がたくさんありました。


これも同じ場所にあった看板です。雰囲気が出てますね。じつに良いです。 地下鉄も日本よりきれいです。天井も高いし掃除も行き届いています。

合井(ハジェン)で6号線に乗り換える。地下鉄の乗り換えも表示がハッキリしてお
り分かりやすい。駅の天井が日本より高く、遠くまで見通せるのもありがたい。駅そ
のものも日本の地下鉄よりもずっときれいだ。6号線の3駅目がワールドカップスタ
ジアム駅だ。出口の上に巨大な韓国代表の試合の電飾看板が掲出されている。その看
板に出迎えられて出口を出ると、目の前に巨大なスタジアムがそびえ立っていた。エ
スカレーターで上に昇るとそのままスタジアムの入り口である。このアクセスの良さ
はどうだ!・・・日本のどのスタジアムでも経験できないアクセスの良さ。これでこ
そアジアナンバーワンのスタジアムと言えるのだろう。素晴らしい!!      

スタジアム駅の出口には巨大な韓国代表の電飾看板がついていました。 地下鉄の出口から見上げるスタジアムの雄姿。これがアジア最大のスタジアムだ。

スタジアムの周りには一定の間隔で二人組の警備員が立っている。警備員というより
も警察か軍隊か?こちらをじっと見ている。立っている二人組とは別の二人組が一定
の歩調で巡回している。開会式に向けて今からこの厳戒態勢なのだ。観光客である事
が分かるように写真を撮りながら周辺を見て歩く。ここでワールドカップの開会式が
行われるのだ。近くにいた掃除のおじさんにお願いして記念の写真を撮ってもらう。
10時までにホテルに戻らなければいけないのでゆっくりもしていられず、急いで地
下鉄に乗って来た道を戻る。乗り換えもスムーズだったがホテルに戻ったのは集合の
10分前という忙しさだった。昨夜買っておいたオニギリ1個が朝食になった。  

警備員が立ち、巡回する中で北正門の写真を撮りました。すばらしいですね。 掃除のアジョシに頼んで写真を撮ってもらいました。記念の一枚です。

10時、ホテルのロビーに集合。ソンミンさん何やら焦っている様子。聞くとお城の
ガイド時間締切まで30分しかないとのこと。そんな訳で集合してすぐにスタート。
ソンミンさんは足が速い。ここからみんなのソンミンさん追っかけ大会が始まった。
朝はのんびり過ごす人が多いので、このペースは面食らった。私と金子さんが追いつ
くのがやっとというペースで歩くソンミンさん。あっという間に後ろの人は見えなく
なってしまった。地下鉄の駅で切符を買っている間にやっとみんな追いついてきた。
地下鉄2号線から3号線に乗り換えて二つ目の駅安国(アング)で降りた。ここから
ソンミンさんを先頭にソウルの街を走る走る。現代(ヒュンデ)自動車の本社前を走
り抜け、現代美術館の前を走り抜け、目指す昌徳宮(チャンドックン)に到着した。

昌徳宮(チャンドックン)についても急がなければなりません。 前にいるはずの団体を追って急ぎます。すごい建物なのに見ることも出来ません。

受付で頼み込んで何とか入場できた。今度は先に行くガイドのところまで走らなけれ
ばならない。ここは観光地なのだが、勝手に見歩くことは許されていない。ガイドと
係員の監視付きで見ることが許される場所なので、ゆっくりしていることも出来ない
のだ。素晴らしい楼閣や建物をじっくり見ることもなく、はるか前にいるはずの集団
を追う。やっとガイド付きの集団が見えた。100人くらいの日本人集団だ。韓国訛
りの日本語がスピーカーから流れているが、スピーカーの調子が悪いのか、日本語が
下手なのか、語尾の「〜でございます。」という言葉しか聞き取れない。まあ、解説
を聞くつもりもないので、とにかくこれでゆっくりできると一安心。       

昌徳宮(チャンドックン)は王様の離宮で王様が生活した場所である。様々な文化財
、建物、庭園があり都心とは思えない静かな森(秘園)がある。最初に目を引いたの
は600年生のケヤキの巨木。最後尾に係員がいて列からはみ出さないように監視し
ていて、私はこの係員からしきりに「早く行け」とか「そっちに行くな!」と注意さ
れていた。ところが、この木の前では「この木は600年前の木だ。」と自慢そうに
言う彼としばらく二人でケヤキを見上げて「すごいね〜」などと言っていた。カササ
ギが何羽もその上空を飛び交っていた。                    

ケヤキの巨木。600年前のものだそうです。立派な木です。 この樹木が秘園を形成しています。

一行は宮殿から秘園と呼ばれる森に入った。この森は冷温帯広葉樹林をそのまま保存
した素晴らしい庭園だ。自然そのままのように見えるが、様々な景観を配慮して造園
されているのだという。韓国人の庭園に対する美意識を考える上でとても重要な意味
をもっている。日本人が庭園を造営する際に考える形而上の美意識とはまったく違い
、韓国人は庭園に自然そのままの美を再現しようとする。自然の中にある美しさをそ
のまま味わうことを贅沢なことと考える。その思想も素晴らしいし、樹木の手入れも
素晴らしい。巨木には全て腐れ防止の処置が目立たないように施してあり、落葉落枝
はきちんとそのまま残されている。ケヤキ、ミズナラ、クヌギ、オオモミジ、オオヤ
マザクラ、イヌザクラ、アカマツなどが立派な森を形成している。花崗岩砂礫質の大
地に根を張った木々は大きく育ち、はるかの高みに緑色の天蓋を形成している。かつ
て韓国全土がこのような緑で覆われていた時代があったのだろう。空港に降り立った
時に感じた乾いた国土の印象は訂正しなければならない。            

昌徳宮(チャンドックン)を出て現代(ヒュンデ)自動車ビル1階の銀行に入った。
両替をする為だったのだが、ちょうど昼時とあって大勢のサラリーマンがビル前でた
むろしていた。我々はその中にあって少々異質な集団でジロジロ見られてしまった。
この韓国を代表するエリートサラリーマン達はとにかくかっこよかった。スラリとし
た長身、趣味のいいスーツ、キリッとした顔立ち・・日本のサラリーマンと比べると
申し訳ないのだが、ちょっと勝ち目がない。兵役のせいなのだろうか、韓国の成人男
子は日本人と比べて1本の筋が通っているように思えてならない。意志の強さとか、
姿勢とか、体格とか、残念ながら1対1ではとてもかないそうもない。      

安国(アング)駅から景福宮(キョンボックン)まで歩き、さらに仁寺洞(インサド
ン)まで戻って昼食。足が・・・疲れた。                   

インサドンの街を歩く男たち。味わいのある町並みが続きます。 路上で果物を売る屋台というかリヤカーというか・・すぐ人が群がります。

仁寺洞(インサドン)の目抜き通りから細い路地に入ったところに沢山の趣あるレス
トランが軒を連ねている。その中の一軒、名前もかわいい「りんごの木」(サガァナ
ム)に入った。とにかく歩き続けだったので休めたのが嬉しかった。さっそく生ビー
ルとランチの海鮮混ぜご飯を注文する。メニューは日本語のルビがふってあったので
何の問題もなく注文できた。料理はサッパリとした味でとても美味しかった。前菜で
出たキムチも美味しかった。この周辺のお店はガイドブックでも紹介されていて日本
人観光客も多いとのこと。日本語のメニューもなるほどと頷ける。ゆっくり時間をか
かけて昼食を食べ、その後仁寺洞(インサドン)の街で自由行動となる。     

この街は一般的には書画骨董の街として紹介されるが、その他でもギャラリーとかお
茶屋さん、陶器屋さん、紙屋さんなど興味を引く店が多い。私はお茶屋さんに入り、
お土産の高麗人参茶、よもぎ茶、菊花茶、茶こし付きマグカップを買った。お店の人
は片言の日本語でていねいに商品の説明をしてくれた。そのほか何軒かの店に入った
が多くの店で日本語で話しかけられた。商売とは言え日本語を覚えるのは大変な事で
その努力に頭が下がる。お店の人、タクシーの運転手さん、レストランの人、ホテル
の人、これだけ大勢の人々が日本語を話せる国なのだ。ひるがえって日本はどうだろ
うか?そう考えると、日本よりも韓国の方がはるかに世界に向かって開かれているこ
とを実感させられる。ワールドカップ開催国ニッポンよ、お前は大丈夫なのか?  

4時、伝統茶院「ダウォン」で休憩。甘い伝統茶の一つゆず茶を飲む。壁一杯に細か
い落書きで埋め尽くされている。日本語の落書きも多い。ここもメニューは日本語だ
った。ここは有名な店らしく中庭ではテレビのインタビュー番組が収録されていた。

伝統茶院「ダウォン」の店内でメニューを見る。日本語のメニューでした。 ダウォンの入り口です。隣は美術館になっていて絵画鑑賞も出来ます。

仁寺洞(インサドン)から河南(カンナム)の狎鴎亭(アックジョンドン)へ向かう
。ちょうど金曜日の夕方とあって道路は大渋滞。運転手の呉(ウー)さんも大弱り。
日本語はほとんど話せないのだが、簡単な単語で観光案内をしながら走ってくれた。
私の片言の韓国語に大喜びで応えてくれた。ソウルタワーの夜景が素晴らしいこと、
インチョンの方まで見えるということ、東大門市場(トンデムンシジャン)の広さ、
安さ、にぎやかさの話など。また、渋滞目当ての屋台自動車の説明や漢江(ハンガン
)にかかる橋の数が28であること、ソウルの地下鉄が素晴らしいことなどを楽しく
話してくれた。おかげで渋滞も苦にならず楽しいドライブとなりました。呉(ウー)
さんに感謝。                                

タクシー運転手の呉(ウー)さん。楽しい人でした。 アックジョンドンの街です。これから解散して自由行動です。

狎鴎亭(アックジョンドン)のギャレリアデパート前で再度解散し、自由行動となっ
た。この街は東京で言えば代官山とか青山という感じの高級店が並ぶショッピングタ
ウン。歩いている人もスラリとした人が多い。ファッション関係、カフェ、雑貨など
のおしゃれな店がどこまでも続いている。私は本屋を探して歩き回ったのだが、なぜ
か一軒も見あたらず、歩き疲れてカフェで休んでいた。あとでソンミンさんに聞いた
ら本屋さんはデパートの中にしか無いとのこと。なぜそれに気が付かなかったのかと
悔やんだが遅かった。休んだカフェが素晴らしいところだった。深いソファに埋もれ
るように座り、間接照明の下でJ&Bを飲む。行動記録のメモなどを書きながら時間
を過ごしていた。                              

休憩で入ったカフェ。静かでゆったりしていて、とても素敵なカフェでした。 集合場所にはやはり男性陣が先に集まります。女性の買い物はつい時間を忘れるようです。

集合は大きなフィットネスクラブのファサード。例によって男性陣は早めに集合し所
在なさそうにしている。すぐに女性陣も集まり、タクシーに分乗して夕食のレストラ
ンに向かう。このタクシーの運転手さんは日本語が堪能で普通に会話が出来た。とこ
ろがレストランの場所が分からないらしく、ソンミンさんと運転しながら携帯電話で
怒鳴り合っている。どう聞いても怒鳴り合っているとしか聞こえないのだが、後で聞
くと普通の会話だったとのこと。いやはや何とも。               

途中で幅寄せしてきた車があって、それに幅寄せ仕返して道路脇で車を止め、お互い
の窓を開けてののしり合う光景が目の前で展開されたが、こんなことも日常の風景ら
しい。とにかく韓国のタクシーの運転は荒っぽい。夜になるに従って荒っぽさが増す
ようだ。それでも代金を払っておつりを出そうとしているところに「テッソヨ」と言
うと「カムサハムニダ!」と満面の笑みが返ってくる。まあ、これは万国共通だが。

夕食はソンミンさんが予約した焼肉レストラン「ナンポミョンオク」。ここでソンミ
ンさんの友人柳蘭伊(リュウ ナニ)さんが合流した。ナニさんも日本の芸大に留学
していた人で日本語はぺらぺらなので、スムーズに会話にとけ込んだ。料理は沢山 
のナムルとカルビの炭火焼き。お店の人がハサミで切りながら焼いてくれる肉をナム
ルと一緒にサンチュに包んで食べる。お肉がじつに柔らかくて美味しい。ビールはカ
スフレッシュ、ソジュ(焼酎)はサン。焼き肉のあとにカルビタン、水ギョウザ、タ
ン塩などを追加注文する。2時間かけてゆっくりと韓国の焼き肉を味わった。   

焼き肉屋さんです。これから出てくる料理を待っているところです。 合流したナニさんとソンミンさん。お世話になりました。

焼き肉屋さんを出たところ。日本語の横断幕がかかっています。 おしゃれなカフェ、金曜の夜は満席でした。残念ですが仕方ありません。

夕食後、お店のリムジンバスでソンミンさんおすすめのカフェに移動。ところが、金
曜日の夜とあって満員。近くのカフェバーに再移動。ここも満員だったが店員と交渉
し、立ち席ならということで何とか入ることが出来た。ほの暗い店内はにぎやかな音
楽と話し声が充満していて、若者のエネルギーを感じる。上品なお店らしく、嬌声を
上げたりという変な客はいなかった。                     

12時を回った頃、ナニさんの彼氏が合流して、場が一気にヒートアップした。彼氏
の名前は張(チャン)さん、アメリカの大学院に4年間留学していた、バリバリのエ
リート公務員である。工学博士でもあり、仕事は日本で言う特許庁に勤めている。日
本語は単語を少し話す程度だが英語がぺらぺらなので会話は成立する。酔った勢いも
あり、楽しく会話が進んだ。チャンさんは坂本龍馬のファンだという。織田信長や豊
臣秀吉の話も出てきた。その後サッカーの話題で大いに盛り上がった。さすがにカズ
、ナカタの事は知っていたので小野伸二の事を教えてやった。柳想鉄(ユサンチョル
)洪明甫(ホンミョンボ)黄善洪(ファンソンホン)高順洙(コジョンス)安貞桓(
アンジョンファン)などの名前が次々に出て、ワールドカップの話になっていった。
チャンさんは仕事で赤坂の特許庁に来る事が多いとのこと。今度は日本で大いに飲も
うという事になった。                            

ナニさんの彼氏チャン氏を囲んで。じつにすがすがしい素敵な男でした。 ホテルのロビーでぐったりしながら最後の二人を待つ様子。疲れた〜〜

時計はもう午前2時を過ぎている。店を出て通りに出てタクシーを拾おうとするが金
曜日の夜ということもあり、全然捕まらない。それはそうだ、道にはタクシーを拾う
人たちがずらりと並んでいるのだから。また、こちらのタクシーは人から逃げるよう
に走り去っていくのだから始末が悪い。チャンさんが両手を広げてタクシーの前に飛
び出して止めてくれた。そして、窓を叩きながら料金の交渉をする。何とか料金の倍
額払いで交渉が成立し、そそくさと乗り込む。道はさすがに空いていてすぐにホテル
に着いた。ホテルのロビーで後続を待ち、全員揃ったのを確認して部屋に戻った。 
いやいや、長い一日だった。