新緑の軽井沢湯川
芽吹きも瑞々しい湯川で今年の初ヤマメを手にした。
軽井沢の温泉宿に泊まり、チェックアウトまでの2時間を近くの湯川で楽しんだ。
まだまだ春も浅く、木々の芽吹きが始まったばかりの軽井沢だが、渓流はすっかり
元気を取り戻している。昨夜来の小雨は上がったが体感気温は何度くらいだろうか
・・ひどく寒く感じる。朝食を済ませて車に乗り、林道を奥に走る。この辺は大き
なハルニレの木があって気持ちよいところだ。
宿の人の話では釣りをしている人など見たこと無いというくらいだから、魚も少な
いのだろう。もしかしたら温泉で水質が悪く、魚がいないのかもしれない。少し不
安な気持ちで着替えて沢に降りる。今日はテンカラでの簡単な釣りにした。先日ひ
さしぶりに巻いた手製の毛針エルクヘアモドキをトヨフロンハードに結んだ。竿を
やっと振れるくらいの広さの河原が快適だ。何度か後ろの枝にハリを絡ませながら
徐々に振り込みを思い出してきた。
振り込みが様になってきて釣りの感覚を思い出してきた。こうなると俄然魚を釣り
たくなる。しかし、依然として魚の影がない。とある広く浅い淵にきた。不用意に
足を踏み出したら黒い影がサッと渕頭に走った。
「おっ!いるじゃないか・・よおし」
俄然その気になってきた。チェックアウトまでの2時間と時間が短いので少々焦り
気味になっている。
川の中央に大きな岩があり、そこに流れがぶつかって淵になっている。岩の裏側は
見えないが、深いようだ。毛針を振る。流れに沈ませて誘う・・キラリと何かが光
ったが当たりは無い。もう一度同じ所に沈ませて流す。岩の影に毛針が入った瞬間
合わせると、竿先にガツン!という手応え。ぐいぐいと流れに引くのを抜き上げる
と元気なヒレピンのヤマメだった。手で触らないようにタモに納め、流れにつけて
じっくりと眺める。口元が自然にゆるんでくる。
久しぶりの渓流で、久しぶりのヤマメに会えて・・・何というか、釣りというもの
を実感させてもらって嬉しかった。このごろは山仕事ばかりで、釣りをしていなか
ったし、釣りに行こうと思う事も少なかった。今回も正直なところ、釣りの準備を
しながら何となく面倒くささを感じているような有り様だったのだ。でも、こうし
てヤマメを釣ってみると、素直に嬉しく、自分が釣り好きなんだと実感させられた
気がした。18センチのヤマメ1尾でこれほど幸せになれることを久しく忘れてい
たようだ。
ハルニレの巨木が両側に立っている。ミズキの芽もまだ動き出したばかりだ。シダ
の葉がくるりと伸び出してあちこちから手を上げている。春の渓流のたたずまいを
久しく見に来ていなかったようだ。忘れていた時間を取り戻すことも必要だ。今年
はあちこちに釣りに行こう。渓流釣りが自分の原点だったことを思い出すために。
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