西別川へ行く2
2日目午前、ムラサポイントと大草原コースに入った。
北海道二日目の朝は2時半起きだった。真っ暗な中から誰かの声がして、ゴソゴソ
とみんなの動き出す音がする。すぐに起きて着替える。まだ寒いので速乾性の肌着
を着てフリースのシャツを重ねる。下はタイツの上に速乾性の厚いズボンを履く。
さらに上からフリースのジャケットを羽織り、外に出て車に向かう。空は徐々に明
るくなってきているところで、とにかく寒い。車は暖房を全開にする。
今日もくろさん、わたるさんと3人で行動する。セブンイレブンで朝食を買い込み
、食べながら車を走らせる。ひたすら真っ直ぐな道を朝靄を切り裂くように車は走
る。大草原の十字路を左折して西別川の下流へ向かう。仲間内で通称ムラサポイン
トと呼ばれる最下流大物狙いコースだ。中西別の町に入り、左折して牧場の中の道
を走る。お墓の横に車を停め一呼吸おいて「着きました、ここです」と声に出す。
ガイドするのは初めての場所だし、最下流という事もあり緊張は隠せない。果たし
て無事に帰って来ることができるのか・・・
牧草地を突っ切って渓畔林に突入し、踏み跡を頼りに河畔に下る。入渓すると例年
に比べて水量が少ないことに気づきやや安心するが、この先に何があるか分からな
いので緊張は続いている。最下流の早朝の川に腰まで立ち込み続けるのは大変だ。
とにかく寒い。厚着はしてきたけれどかなりつらい。日が隠れて暗くなると余計に
寒さが増してくる。魚も思ったほど反応が無い。
何気なく投げたルアーに当たりがあり合わせると重い手応えが伝わってくる。水面
をバシャバシャいわせて懸命に寄せた魚は大きなアメマスで、くろさんに測っても
らったら42センチの良型だった。今回の目標だった40アップが早々に来てしま
った訳で、何だか拍子抜け。ただ、これがこの先に期待を持たせてくれた。3人は
俄然やる気になって、重い流れと寒さを振り払うように声を出してルアーを投げ出
した。
しばらくそのまま続けていたが、腹が冷えてオシッコが我慢できなくなり、僅かに
あった河原に駆け上がった。チェストハイのウエーダーの上にラフティングジャケ
ット(首と手首がゴムで締められているゴアの上着:水に入っても濡れない)を着
ているので、オシッコは大変な作業なのだ。手袋を取り、帽子を脱ぎ、メガネを置
き、肩掛けにしたお助け棒を外し、ベストを脱ぎ、ラフティングジャケットをたく
し上げ、首を抜き、腕を抜く。この辺でかなりやばい状態になってくる。ウエーダ
ーのベルトを外し、ウエーダーを腰まで引き下ろしてやっとオシッコが出来る体勢
になる。我慢できなくなって河原に上がった訳だから、時間が切迫する中でこの作
業をするのは必死だ。寒くて縮んでいるのをつまみ出す寸前までギリギリの攻防を
強いられる。無事に放出すると生き返る心地がするのは、あながち誇張でもない。
オシッコの間に先行した二人を追いながら、倒木のポイントにルアーを流し込んだ
途端にガツンという大きな手応え!「ん??・・・何だこれ!」思わず声が出るよ
うな強烈な引きが竿を伸ばす。あわてて竿を立てるが、満月のようになった竿はそ
のまま動かない。リールはまったく巻けない。「うおおお!なんだこいつ!」デカ
イ影が水中を右へ左へと走り回り、それをいなしながら付いていくのが精一杯。水
しぶきと格闘する姿を見た下流の二人が重い流れの中を戻ってくるのが見える。こ
こは絶対に上げなければならない。激しい抵抗を見せながら姿を見せたのは・・・
(以下、略)
まったく、ガイド役が先に釣ってしまったのではしょうがない。二人もポツポツ釣
れているが、なかなか思うような型が出ない。7時過ぎからは日も射して暖かくな
ってきた。25センチ弱のアメマスが中心で飽きない程度に釣れ、8時に脱渓点に
到着した。ここが脱渓点だという確信はなかったのだが、何となく見たことがある
ような景色と谷に見える場所に踏み跡のようなものが見えたので二人に声を掛けて
脱渓した。踏み跡に入って見たら、やはりここが脱渓点だったことが分かり、本当
にほっとした。踏み跡を登って牧草地が見えた時にやっと安心する事が出来た。
車に戻ってまだ8時半。もう一カ所に入ってみようという事になり、時間が読める
大草原コースに入ることにした。車を走らせ、大草原の立体交差を右折して牧場の
真ん中に車を停める。広い牧場を突っ切って渓畔林に突入し、斜面を下って入渓し
た。ここは先ほどよりもかなり上流なので水も少なく澄んでいるので歩きやすい。
入って早々にわたるさんが3連発で上げた。ここからわたるさんの絶好調釣りが始
まった。次から次にアメマスを上げ、行く先々で水しぶきを上げる。先日藪の高橋
さんグループがスカを喰らった場所なのに、嘘みたいに良く釣れた。
くろさんも釣れていたが、数・型ともわたるさんに及ばない。もちろん私も及ばな
い。どうやらシンキングタイプのルアーがここから大当たりしたようだ。私として
はくろさんに何とか型を出して欲しかったのだが、苦戦していたようだ。好調に釣
れ続け、11時を回ったので脱渓し車に戻った。毎回思うのだが、4時間も釣りを
して上がっても車が見える場所というのは実に有り難いものだ。こうして午前中の
釣りは終わった。昼に集合する「かつら」に着いたのは我々が一番早かった。
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