西別川で釣りをした


今年も北海道の西別川に行って釣りをすることが出来ました。


5月末、急遽西別川さんの呼びかけでハミさんと3人の西別川行きが実現した。6月中
に消化しないと消えるマイレージで3人分の北海道往復チケットが確保出来たのを利用
するとのこと。金曜日夕方釧路に入り、月曜日午前中に羽田というプランで、新谷さん
も現地で合流するという有りがたい申し出で、私は即座に手を上げて参加表明した。 

6月11日3時に羽田のJALカウンターで待ち合わせ、そのまま釧路へ飛ぶ。今晩は釧
路の西別川さん宅に泊めてもらう。                       

12日、2時半に起きて即出発。目指すは西別川。海から発生した霧が広く内陸に広が
り、この時期独特の霧が出ている中を、車は猛スピードでまっすぐの道をひた走る。ど
こを走っているのかまったく分からない。1時間以上走って、見覚えのある十字路を左
折した。大草原コースの交差点だった。この先の西春別コミュニティセンター(コミセ
ン)で新谷さんと待ち合わせているのだ。                    

コミセンの駐車場にはまだ新谷さんの車は無く、待っている間に釣り支度をする。真っ
暗な霧の駐車場で釣り支度をするのも悪くない。寝ぼけた頭が一気に釣りモードに変わ
っていく。そこへ新谷さんが到着。挨拶もそこそこに、すぐにどこに入るか話し合う。
昨日釣りをしていた新谷さんの情報を元に、西別川さんと私が7時間コースに入り、新
谷さんとハミさんが大草原コースに入ることになった。              

7時間コースの入渓点に車の姿が無く、ひとまずホッとする。着替えているので、すぐ
に入渓する。むっとするような草いきれの中で斜面を下り、1年ぶりの西別川に入る。
すぐに西別川さんの竿に当たりがあり、水しぶきを上げている。バシャバシャと寄って
きたのは25センチほどのアメマス。私の竿にも当たりがあり、同じようなサイズが釣
れた。今日は魚の機嫌が良さそうだ。倒木が複雑に倒れ込んでいる一級のポイントから
は魚が出なかったが、大物の気配がプンプンしている。この下にはトロフィーサイズが
ぜったいにいるに違いない。                          

ポツポツと飽きない程度に釣れ続き、下っているうちに変な光景に出くわした。川が切
れている。川の本流は右にカーブしているのに、小さい支流が左に流れ落ちており、そ
の先には本流と逆向きに流れている川があるのだ。理解するのに少々時間がかかった。
謎解きは巨大な蛇行。この川は大きな蛇行をしているので、川を渡った先に別の川があ
ることがある。巨大な蛇行が近づいて、このケースではくっついてしまったという事だ
。一見すると不思議な光景だが、西別川ならではの光景ともいえる。        

10時半になったので脱渓する。目的の場所までは到達出来なかった。西別川さんが一
緒なので脱渓の不安は無い。斜面を登ったところが採草地で、そこを突っ切って道に出
る。この道を戻って一つ左折すれば車の所に戻れる。霧の牧草地は静かな景色を見せて
いた。放牧されている牛達がまん丸な目でこちらをじっと見ている。全部の牛がじっと
見ているので、思わずからかってやりたくなるが、こちらに向かって来られたら怖いの
で止める。                                  

車に戻ると、もう一台の車が横に停まっていた。着替えていると川の方から人が登って
きて、両手に山ほどのウドを抱えていた。聞くと、これから釣りに入るらしい。6月の
西別川はコゴミ、ウド、ワラビなどの山菜天国なのだそうだ。いつも7月に来ていたの
で、山菜は頭になかったが考えてみれば当然で、そういう目で見ると豊かな自然に囲ま
れていることを実感する。着替え終わって車は中標津空港へと走る。これから空港で明
日から使うレンタカーを借りるのだ。西別川さんも新谷さんも明日は帰らなければなら
ないので、私とハミさんが明日から使う車が必要になるのでそれを取りに行くのだ。 

中標津から2台の車で戻り、いつもの「かつら」に行く。今日はエスカロップの大盛り
を注文する。新谷さんとハミさんも来ていて情報を交換する。新谷さんが大きなアメマ
スにフックを伸ばされたようだ。どうやら大物は下流にいるのだろうということになり
、せっかく揃ったのだから一緒に釣りたいという新谷さんの希望もあって、午後はムラ
サポイントに4人で入る事になった。                      

午後2時、ムラサポイントに入渓する。深い場所が続くのでハミさんは岸からの釣りが
多くなる。魚の反応は今ひとつで黙々、淡々とした釣りが続く。深く重い流れに押され
るように下っていった。西別川さんの「来た!ニジだ!」の叫び声が川面に響き、ロッ
ドが弓なりに曲がっている。バシャバシャと水音を立てて跳ねている大きな魚が見える
。「あれ、こいつ尻尾がおかしいなあ・・」という西別川さんのつぶやきが聞こえた。
写真を撮ろうと近寄ったのだが、立派なニジマスなのに、どうやら美しさの点でご不満
だったらしく、竿先を振るわせてオートリリース、ああ、せめて写真だけでも撮りたか
ったのに・・・                                

圧巻は新谷さん、大きなハンノキの根元にあるえぐれにルアーを投げた途端「チクショ
ー、やられた!」の絶叫。50センチオーバーのアメマスだったらしい。ゴン!という
当たりの後、頭をブンブンと振られ、そのまま18ポンドのPEラインをぶち切られたら
しい。新谷さんの悔しがること、悔しがること。でも、本人曰く「この川ではあれが取
れないんだよね〜」まだまだ怪物のような奴がこの川にはいる。          

とどめは西別川さん。太い流れが合流するように流れるポイントで絶叫「うわあぁ!」
巨大なニジマスに一気に走られ、ドラグを締めた瞬間、”バチン”と肉切れ。姿も見ら
れず呆然と立ちつくす有り様。あの西別川さんにして手も足も出ない大物がいる。本当
に悔しそうな顔が印象的だった。確かにこの川ではその悔しさが次回の釣りへのエネル
ギーになっているような気がする。だから来年もまた来ようと思うのだろう。    

私の竿には30センチを頭に12〜3本のアメマスと数匹のヤマメ。ついにニジには会
えず終いだった。ムラサポイントを脱渓しワラビを摘みながら車に戻る。両手いっぱい
のワラビは今日自宅に帰る西別川さんのお土産になった。             

新谷さんとハミさんと3人で弟子屈のホテルに向かう。車で40分ほど走り「ホテル摩
周」に到着。新谷さん曰く、ここは何時でも一人でも泊まれるからいいんですよ、との
こと。さっそく温泉に入り夕食を食べる。新谷さんが3本ものワインを持ち込んで飲も
うと言う。2本まで空けたところで息切れ、明日の朝も早いので寝ることにした。  

13日、3時半起床。今日はハミさんと二人で大草原コースに入る。朝靄の中、ホテル
を後にして西別川へと走る。途中でコンビニに寄って飲み物を調達。食べ物はホテルで
準備してくれたので十分にある。大草原コースのいつもの場所に車を停め、身支度をす
る。牧草地を突っ切って崖を下って河畔に立つ。音も無く流れる川面を見つけ、安堵と
ともに緊張する。入渓場所を神経質に探し、安全が確認されてから、ソロソロリと川に
入る。そしてゆっくりと中央の浅い場所に移動する。川の中央で股までの重い流れに対
抗するように踏ん張って、やっと釣りが始まる。                 

昨日よりも魚の反応がいい。ちょっと濁りが強いようなのでレモンイエローのラパラ5
センチを使う。ハミさんがアメマスを釣った。時には胸まであるような深瀬が続くので
集中するのも大変なのだが、魚は順調に釣れた。私に待望のニジが来た。型は25セン
チと小さいが紛れもない西別川のニジだった。素直に嬉しい。良い型のアメマスやヤマ
メが釣れ続き飽きることはなかった。                      

深瀬に倒木が重なって倒れている場所でのこと、初めての”完沈”を体験した。水中に
沈んだ太い倒木をまたいだところ、向こう側が無かったのだ。右足が着かず、この時点
で右肩まで半沈、あわてて左足で飛んで先に着こうとしたら着底したところに再度倒木
があり左足を引っかけた。完全にバランスを崩した体は、重い流れに押されて体勢を変
えることも出来ず、そのまま前方へドッブンとダイブし完沈。ところが下に伸ばした足
が底に着かないのだ。首まで沈んだまま流されて両手は泳ぐような格好はしていたのだ
ろうが、よく覚えていない。やっと足が着き、浅瀬に駆け上がるようにして逃げ、右手
にしっかりとロッドが握られているのを確認して安堵の溜息をついた。後方のハミさん
に高巻くようにどなったのだが、ハミさんは笑っていた。             

すぐに岸に上がり、ずぶ濡れになったベストやラフティングジャケットを脱ぎ、浸水し
た部分を、ハミさんから借りた乾いたタオルで拭く。いかにラフティングジャケットと
いえ、完沈すれば無事ではない。幸い僅かな浸水で済んだので笑い話になったが、これ
がスリムウエーダーだけだとかチェストハイだけの人だったらこんなものでは済まない
事になる。ウエーダーに水が入り動きが取れず、そのまま流されることだってある。こ
の川の怖さは充分分かっていたつもりだったが、どこかに安易な気持ちがあったのかも
知れない。完全に沈したのは初めてだ。                     

ひと休みして気を取り直し、さらに釣り下る。アメマスがコンスタントに釣れ飽きるこ
とがない。とある倒木の好ポイント、倒木の奥の狭い場所に苦労してルアーを投げ入れ
た。その瞬間大きな水しぶきが上がり、手元にガンガンという衝撃、思わず「デカイ!
」と声が出る。魚はグングンと走り回り、倒木にラインがこすれて嫌な音を立てている
。立ち位置を変え、ロッドを何とか高く保持して手前の倒木をクリアーして魚を手前の
淵に引きずり出す。なおも深く潜っていく魚を満月のようになったロッドで止める。何
度か走られたが、何とかいなし、やっとの思いでたぐり寄せた。写真を撮る手が震えて
いる。素晴らしいファイトだった。やっと静かになった魚を持ち上げてハミさんがサイ
ズを測ってくれた。「39センチ」惜しい・・40オーバーならず・・・でも、満足の
ファイトだった。                               

昼食のために「かつら」に向かう途中、「西春別温泉」という看板に引かれて立ち寄っ
たペンション「クローバーハウス」聞けば日帰り入浴もやっているとのこと。さっそく
500円払って温泉に入る。ここが源泉でもあるという温泉は赤い湯で、体がすぐにツ
ルツルになっていく。休憩室で風呂上がりの生ビールを飲み、眠り込んでしまった。2
時間ほど寝てから起きて食事を頼んだ。カツミートスパゲティを食べ、ペンションの奥
さんに色々話を聞いて、すっかり気に入ってしまった二人はその場で来月のOLMの予約
を入れてしまった。ここなら釣り場に近いし、温泉もあるし、食べ物も美味しいし、最
高の宿になるはずだ。                             

今日は釧路のホテルに泊まるので、午後はムラサポイントの短いコースに入った。昨日
新谷さんや西別川さんが大物をバラした上流になる。私は何としてもニジの30センチ
オーバーを釣りたかったのでハミさんにお願いして同行してもらったのだ。毎回来るた
びに装備を変え、道具を研究しているのは、ひたすら30センチオーバーのニジを釣る
為なのだが、なかなか願いが叶う事がない。ところが、期待に反してニジの反応は無く
アメマス数本のみで最後も終わってしまった。いつか願いが叶う事があるのだろうか。

夕方再び西春別温泉に立ち寄り、宿の人に「お帰りなさい」と言われ、温泉でいい気分
になり、頭をリフレッシュさせて釧路までのドライブに入った。          

釧路のホテル「PACO」は運河沿いに立つ立派なビジネスホテル。今夜はここでゆっく
り寝られるのだ。連日の午前2時起きは正直つらかった。チェックインを済ませ、ハミ
さんと居酒屋で飲みながら2日間の釣りを振りかえる。39センチ頭に数は出たのだが
ニジが小さかったのが心残りだ。しかし、最高の宿を見つけられたので良しとしたい。
北海道OLMの下見としては満足の結果だった。                  


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