瀬音の森日記 105
秩父岩魚の保護に向けて
2000. 1. 30
1月30日(日)秩父の婦人福祉会館で荒川水系渓流保存会の総会が行われた。参加者
が10人と少々物足りない数ではあったが、内容はとても濃いものだった。ここで詳細
に書くことは出来ないのだが、今後保存会は秩父岩魚の飼育・研究に全力をあげて取り
組むことになった。
今までの実績でもあった秩父ヤマメの飼育・研究は漁協が本格的に取り組み始めたので
、小規模で続ける事に意味が無くなってきた。さらに、飼育池の規模を考えるとヤマメ
と岩魚を同時に飼育するのは困難で、どとらかを選ばざるを得なかったという事情もあ
った。2年ほど前からこの事は議論されていたので、会員にも異論はない。
その席上、会員の大村さんから在来の秩父岩魚の保護についての提案がなされた。大村
さんの提案は以下の通りだ。 以下転載
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秩父在来イワナの保護に向けて
2000年1月30日(大村)
1、目的
秩父在来イワナを保護することを目的に関連の調査を行い、関連組織に保護対策案を
提案する。
2、在来イワナとは
・地域の貴重な個体群→→在来種イワナは我が国においてはアメマス(エゾイワナ)
、ニッコウイワナ、ヤマトイワナ、キリクチ、ゴギの系統があり、秩父地方に生息
するニッコウ系イワナにおいても着色斑点の相違など、その地方特有の姿をしてい
る。
・山村文化→→古くから山奥に暮らす人間とも深く関わりがあり、山村文化を示す一
つの存在でもある。先人の放流による生息場所の拡大(生業等)。
3、なぜ、個体数が減少しているのか
・生息場所の特性と悪化、減少→→生息場所は山岳渓流という限られた地域である。
森林の伐採、水資源の開発、道路の整備など。
・捕獲→→捕獲圧等。
4、どうすれば減少を止められるか
・生息環境の再生と保護(河川をはじめ渓畔林、周辺森林)→→森林等所有者の理解
・捕獲に関する規制→→捕獲の権利(漁業権)は漁業共同組合にある。
5、関連組織への働きかけ
・科学的見地から国有林、県、漁協等に提案→→データが必要(東大秩父演習林のバ
ックアップ)
6、調査事項(案)
・秩父在来イワナの歴史および写真撮影等による容姿特徴の調査
・DNA分析→→県水産試験場熊谷支場との連携(現在、打診中)
・真の沢における現存量と入漁者数・捕獲量の調査
・渓畔林の再生に関する研究→→秩父演習林、瀬音の森
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この提案を受けて、会員の中から様々な声が上がった。真の沢の現存量を調べるといっ
てもその方法はどうするのか。在来イワナと放流イワナの明確な区分けは出来るのか。
在来イワナといっても過去のどの時点まで遡って特定するのか、まだは出来るのか。等
の当然と言えば当然の声だ。
これに対しては今後一つずつハッキリさせていくとしか答えようがない。ただ、保存会
としてこのまま指をくわえて現状を見ていても何も解決しないのは明らかだ。保存会が
秩父岩魚について最も詳しい団体になればいい事で、保護を訴えるのはしごく当然の事
だという結論になった。昨今のイワナの減少傾向を見ていると在来イワナの保護は急を
要する問題だ。保存会は大村さんの案を会としてバックアップしていく事で一決した。
そして、6番目の項目にある「渓畔林の再生に関する研究」だ。これこそ、瀬音の森が
中心となって取り組むべき課題であり、我々の力の発揮どころでもある。何と言っても
瀬音の森と東大演習林の共同研究なのだ。やる気がむくむく湧いてくる。
秩父岩魚の調査、渓畔林の再生研究・・・いよいよ「瀬音の森・秩父」の取り組むべき
方向性が見えてきたようだ。
秩父岩魚を守ろう・・・・あとはまた明日から。