瀬音の森日記 120


バイオマスは林業を救うか?



2000. 4. 6


4月6日(木)渋谷の勤労福祉会館で「それゆけバイオマスエネルギー:森の国スウェ
ーデンからの最新レポート」という講演会が、【脱原発政策実現ネットワーク・関東】
の主催で開催された。バイオマスエネルギーの本場スウェーデンから専門家を招いて日
本では導入の遅れているバイオマスエネルギーの可能性についての講演を聞いた。  

まずは日本の研究者として、島根大学の小池先生の「バイオマスエネルギーの可能性」
という話があった。ヨーロッパでこれだけ認知され、研究されているバイオマスエネル
ギーがなぜ日本で利用されないのか不思議でならない、という話が印象的だった。  

次にスウェーデンのベクショー大学バイオエネルギー工学部教授、ビョルン・セットリ
ーウス博士の講演が始まった。講演は                      
 (1)バイオ燃料とは何か?バイオエネルギーとは何か?            
 (2)スウェーデンのバイオエネルギー、現在と未来。             
 (3)EUのエネルギー戦略と未来。                      
という内容で行われた。通訳付きでOHPを使った説明を交えながらの興味深い内容の講
演だった。ここでその全容を書くことは出来ないので、ご容赦下さい。       

バイオエネルギーについては、今まで発電という最終形で語られる事が多かったが、ス
ウェーデンの場合、発電よりも熱供給が主でむしろ発電は二次的なものにすぎないとい
う。講演後の質疑応答に今日の講演と日本の現状が見え隠れするので、講演部分は省略
して、以下質疑応答の内容を書いてみたい。                   

Q:スウェーデンでは電力会社は国営なのか?(さっそく電力会社の質問が出た・・)
A:各地域に電力会社があり、民間会社と地域会社とがある。           

Q:それは経済的に成り立っているのか?                    
A:経済的には、5メガワット以下の規模の会社には政府の援助があるが、5メガワッ
  ト以上の規模では圧倒的にバイオエネルギー使用の会社が強い。個人の場合はペレ
  ット(木質固形燃料)になるが、灯油の2分の1か3分の1の値段で買える。  

Q:なぜ日本ではバイオ発電が普及しないのか?                 
A:バイオイコール発電という発想はやめて欲しい。熱利用が主で発電は従である。現
  状、熱供給が6割・電気が4割だ。日本のエネルギー需要の増加分はほとんどが暖
  房と給湯になっており、この部分の熱利用を化石燃料からバイオ燃料に切り替える
  事ができるかどうかだ。                          

Q:ペレットを作るシステムやペレットを使うストーブの開発は難しくないのか?  
A:とても簡単。おが屑を700気圧で圧縮するだけだ。また、バーナーは灯油バーナ
  ーの7〜8割の値段で出来る。家庭用では3種類のバーナーがあり、日本にもそれ
  を作っている会社がある。                         

Q:ペレットの材料は何がいいのか?生ゴミでも良いのか?            
A:木の種類は何でもよい。セルロースとリグニンが燃焼材料なので、それの含まれて
  いない生ゴミは燃料にならない。                      

Q:ダイオキシン発生を防げるのか?                      
A:ダイオキシン発生を防ぐのは別の問題だ。防ぐには塩素と炭化水素を出さないよう
  にすれば良い。その発生源になるようなものが混ざらないように分類することだ。

Q:住宅廃材などは原料になるのか?                      
A:住宅廃材には部分的に多くの防腐剤などが含まれている(砒素・クロム・銅など)
  ため、このような材料を分離する事が必要。塗料やシロアリ防除剤なども同じ。 

Q:今のゴミ焼却場を転用することは出来ないのか?               
A:基本的な構造が違うので難しい。                      

以上のような熱気のこもった質疑応答が交わされた。私を含めた大勢の人の関心は、バ
イオマスエネルギーは山村や林業に希望の光を当てるものなのか、という事だった。講
演が終わって、いろいろ考えてみた。確かに将来は国策でエネルギー供給の大きな要素
になるであろう事は予想出来る。ただ、今現在日本の山村で恒常的に熱エネルギーを生
産し、各戸に配給するシステムとインフラが可能だろうか。発電だけを考えるよりもは
るかに大がかりな設備投資が必要になるのではないか。              

山に捨てられている間伐材の使い道としては素晴らしいものだが、始動するまでには大
きな壁が立ちはだかっているような気がする。どこかで実験し、成功例を作ってくれれ
ば一気に推進力が働くような気もするのだが・・・それよりも、EU連合から圧力をかけ
てもらうとか、石油輸入中断とかの圧力が働く方が簡単に進むかもしれない・・・・・
このごろちょっと疲れているのか、考えが短絡的だ。反省、反省。         

エネルギー政策の明日を見すえて・・・あとはまた明日から。