瀬音の森日記 138


丹沢:笹子沢ヒノキ林下刈り



2000. 7. 16


7月16日(日)朝3時半に起きた。今日は丹沢の下刈りの日だ。身支度をして、瀬音
の森ヘルメットを車に積み込み4時に家を出た。ぽつぽつと雨が落ちていて天気予報が
気になるが、予報は昼前から晴れると言っている。車は快調に走り、予定通りに待ち合
わせ場所に向かっている。                           

6時、ヴィラハイツ中川の駐車場に着いた。猫ミュウさんがいた。猫ミュウさんはバイ
クで来たようで、一見釣りの格好に見える。身支度をしながら鳥のはなしやら釣りの話
やらに花が咲く。いつものことだが地下足袋を履き、スパッツをつけると身が引き締ま
る思いがする。6時半に西さんが来た。西さんは「かげろうの会」のメンバーで前回の
植林の時も参加している人だ。しばらく愛車レンジローバーの話で盛り上がる。そうこ
うしているうちに井上さん一家がやってきた。                  

全員集合したので笹子沢の作業場所に向かう。川に沿って林道を上がり、堰堤の上に車
を止める。公社から依託されている林業会社の人が大鎌を準備して待っていた。我々4
人は瀬音の森のヘルメットをかぶり、大鎌を手に山に入って行った。井上さんの奥さん
とお子さんはここで留守番だ。暖かくなれば水遊びが出来るだろう。        

沢沿いの道を歩いて作業場所に向かう。途中で林業会社の作業員2人を追い抜く。脚立
の前の広場で一休み。この脚立の向こう側が造林地なのだ。造林地は鹿から守るために
防護柵で囲われている。その柵を脚立で乗り越えるのだ。荷物の中からビールを出して
目の前の川の流れに浸ける。作業が終わった後のささやかな自分たちへのご褒美。  

脚立を超えて造林地に向かう。すでに汗が額から流れ落ちる。昨夜来の雨と露に草木が
濡れているので、シャツとズボンはびしょ濡れ状態になる。湿気が多くて蒸し暑い。二
つ目の脚立を超えたところが我々の作業場所。一息入れて、作業の説明をする。上下作
業をしないこと。斜面の右から左に横に向かって作業すること。隣り通しが近づかない
こと。鎌を杖代わりにしないこと。造林したヒノキを切らないよう注意すること。疲れ
たら必ず休むことなどを伝えた。麦茶2リットルのペットボトルと救急薬品は私のリュ
ックに入っているので、その場所にデポした。                  

下の防護柵に沿って作業開始。鎌で刈る草はそれほど多くないが、濡れている草木の中
で動き回るのでびしょぬれになる。井上さんも始めての作業とは思えないほど奮闘して
いる。西さん、猫ミュウさんもそれぞれに鎌を振っている。汗が体中から噴き出してく
る。メガネに汗が飛び、視界が曇る。首に巻いたタオルはすぐに絞れるくらいになって
しまった。全身から汗が流れているのが分かるが、もう全身びしょ濡れなのだから恐い
ものはない。斜面を登り、下り、目に付く草をバッサバッサと刈り倒す。      

尾根部分には鹿の足跡がたくさんあって、鹿道が出来ている。やはり鹿が入っているよ
うだ。斜面がきついが地下足袋のお陰で作業は苦にならない。こういった斜面での作業
には剣付き地下足袋が最強だと実感する。空が明るくなって青空が顔を見せ始めた。

9時半大休止。西さんの声が聞こえず心配するが、西さんは頂上部分にいて、我々の声
が届かなかったようだ。その後しばらく作業を続け、10時になったところで作業を終
了した。集中力が鈍ってきている事が分かり、こういう場所での作業は3時間が限界だ
と感じた。無理して怪我をしたのでは本末転倒になる。晴れて暑くなってきたのも終了
の合図になったのかもしれない。全体の3割から4割くらいは終わっただろうか。次回
に10人が参加出来れば1時間ちょっとで終わる面積だと思う。          

その時、別の作業班が登ってきた。その数30人くらい。この暑さの中で水筒も持たず
ずいぶんと軽装の人ばかりなので心配したが、先頭の人がポツリと「この暑さだと30
分が限界かな・・」とつぶやいていたので安心した。30分でもこの人数ならかなりの
面積が下刈り出来るだろう。最後尾に公社職員がいたので鹿がいたことを伝えて我々4
人は下山した。                                

下で草刈り機を使って下刈りしていた林業会社の人達にも挨拶をした。仕事で下刈りを
するのも大変なことだ。特に笹の多い部分を担当しているようで、大変さに頭が下がる
。河原に下りて一休み。顔と手を洗い、タオルを洗ってやっと一息ついた。川の流れに
浸けておいた缶ビールを引っぱり出して、4人で乾杯。この一本がじつにウマイ。汗が
流れる事がじつに気持ちいいものだと実感する。井上さんと「これ続けたら痩せるね」
と笑い合う。                                 

ビールを飲んで気分を良くして河原の道を下る。ビールの酔いが心地よいリズムで体に
回ってくる。淵ではヤマメが泳いでいる。「あれなら釣れるね。」と猫ミュウさんが言
う。小さいけれど良い川だ。植林したヒノキが育って、この川に良い水を提供出来るに
は50年くらいかかるだろう。我々の作業も少しだけれどこの川の為になっている。 

気持ちの良い汗を流して・・・あとはまた明日から。