瀬音の森日記 153
東大演習林勉強会
2000. 10. 28
10月28日(土)朝6時起床。前日に上京して、我が家に宿泊してもらった式部さん
と濱島さんを乗せて秩父に向かう。まだ集合時間には余裕があるので、荒川水系渓流保
存会の養魚池を見学する。養魚池は横瀬の生川(うぶかわ)上流、武甲山の麓にある。
お世話になっている守屋さんが刈り取った秋蕎麦を干していた。「まったく家の前に干
したって猿に喰われちまう。」とぼやいていた。養魚池と採卵したヤマメの卵が入った
水槽を見学する。池の秩父イワナは来月の採卵を待っているところだ。
9時、演習林学生宿舎前の駐車場に集合。身支度をする人、荷物を運ぶ人、挨拶を交わ
す人とあわただしい。途中の道路が混んでいて遅れている人も多い。携帯に連絡が入る
ので、それぞれ指示を出して、先に行くことを告げる。会場は国道を登ってトンネルを
越えたところにある。
9時半、出発前の挨拶。初めての参加者を紹介する。今日の勉強会の意味と目的、どん
な事を勉強して欲しいかを話す。参加者には名札と「勉強会の手引き」を一冊づつ渡す
。これは下見の情報を元に樹木について解説した小冊子で、持ち帰ってもらい、今日の
勉強を再確認してもらう為のもの。樹木の解説を聞きながら、確認する事もできるよう
にした。kazuyaさんからも注意事項を話してもらい、全員車に分乗して出発点のナメ
沢登山口に向かう。
10時、ナメ沢登山口より登山開始。この林道はしばらくの間、コンクリート張りの立
派な道になっていて、周囲の広葉樹の巨木を観察できる。kazuyaさんの解説に全員が聞
き入る。ケヤキ、ブナ、イヌブナ、モミ、カツラ、クマシデなどが対象となる。ブナの
実やイヌブナ、ミズナラの実などがたくさん落ちている。子供たちはブナの実を食べた
りして大喜び。クサギの赤いガクと紫色の実のコントラストがきれいだ。
林道の終点近くから登山道に入る。ここからは細い道になるので縦長の一列になり解説
が大変になる。しばらくイヌブナ・スズタケ群落が続き、メグスリノキやハクウンボク
が中層に出てくる。林間にブルーシートが張ってあるのは、種を採取する為のもの。子
供たちも元気に斜面の細い道を登って行く。そしてモミの実験林、尾根樹相の観察林へ
と入る。ここではオノオレカンバ、ミズメ、アセビ、ウリカエデなどが観察出来る。ヤ
シャブシの巨木には感動した。
ストローブマツ、シラベの実験林、カラマツの間伐林と続き、休憩地点の造林小屋に到
着した。思い思いに休憩して汗を拭く。子供たちはまだまだ元気だ。残念なことに、こ
こまでキノコは一つも見つからない。これは期待を裏切る結果で、今夜のキノコ汁に支
障が出そうだ。JICKYさんと顔を見合わせて首をひねってしまった。
休憩後、尾根の雁道場(がんどうば)を目指して急斜面を登る。周囲はスギ林、カラマ
ツ林と単調な見通しの悪い林が続く。子供達に声を励まして登る、ガンバレ、ガンバレ
。この登りのカラマツ林でやっとハナイグチを発見。ホテイシメジもあったが、これは
無視。大汗をかいて尾根の雁道場(がんどうば)にやっとの思いで到着して全員大休止
。視界が開けて矢竹沢の向こう側の山が見える。ちょっと早めだが、紅葉がきれいだ。
ひたいの汗を拭い、涼しい風に体を休める。
ここからは尾根の見通しの悪い道をひたすら登る。カラマツ林なのだがスズタケが密生
していて背が高い事もあって、見通しが利かない。キノコもまったく見かけなかったが
JICKYさんがスッポンタケを見つけたので、写真に撮った。ウリカエデの赤、ハウチワ
カエデのオレンジ、コシアブラの白・・・様々な紅葉が目を楽しませてくれる。
大きなブナの木がある雷大神(かみなりだいじん)に到着。ここで昼食のはずだったの
だが、RYONさん、加藤さん、稲垣さんなどが先行してしまったので、そのまま上のミ
ズナラ巨木林まで行くことになった。尾根道を更に登る。この辺は、ツル性植物が多く
見られる場所で、イワガラミ、ツルアジサイ、ミヤママタタビなどを観察できた。ここ
で遅れていた中川さん一行が到着し参加者が全員揃った。息を切らして登ってきた3人
としんがりの安谷さんが楽しそうに話している姿が印象的だった。3人とも元気だ。
ミズナラの巨木の下で昼食。ここまで来れば突出峠(つんだしとうげ)は近い。思い思
いの場所でミズナラの巨木を見上げながらお弁当を広げる。私は登山道の下に回って仮
設トイレを設置する。お昼はラーメン。コッヘルとガスを取り出し、いつものようにラ
ーメンを作る。今日は餅も入れ、先ほど取ってきたハナイグチも入れてキノコラーメン
の餅入りを作る。フウフウ言いながらラーメンを食べて、やっと体が温まってきた。
(続く)