瀬音の森日記 163


小菅の間伐



2001. 1. 7


1月7日(土)小菅の間伐に行った。天気は下り坂で午後には雪になるという予報の中
ひときわ寒い朝だった。車に荷物を積み込んで出発するが、手袋をしないと冷たくてハ
ンドルを握れないほどだった。途中、給油と食料の買い出しで2度車外に出たが、あま
りの寒さに震え上がってしまった。                       

舩木山荘前に到着したのはJICKYさんと同時だった。焚き火をしながら暖を取っている
ところに野村さんが到着。しばらく話し込んだあと身支度して10時に山を登りはじめ
た。歩き始めは寒かったのだがすぐに体が暖まってきて、あわててフリースを脱いだ。
山歩きは寒いくらいの服装がちょうど良い、というのが良く分かった。       

山小屋に着く。野村さんとJICKYさんにペアで作業をお願いし、私はやり残してあった
土留め作りに入る。土留め作りといっても、間伐に変わりなく、切り倒したヒノキを水
平に列状固定して、その上に枝を敷き詰めるというもの。鋸を引いていると自然に汗が
にじんできて体が暖まってきて、寒さをまったく感じなくなった。         

午前中いっぱいこの作業に没頭した。ヒノキは相変わらずかかり木になるのばかりで、
体力を消耗する。こうなると、最初からかかり木になるものとして作業するしかない。
受け口は斜面に対して横に切る。追い口を切って倒すのだが、倒れない。木によっては
ツルを切っても倒れる気配すらないものもある。                 

切り口から蹴り落とすが全然倒れる気配がない。元口のところに細引きを巻き付けて横
に引っ張る。これがけっこう大変な重さで、一気に汗が吹き出してくる。元口を少しず
つずらすと、枝が絡み合ったヒノキもやっと少しずつ動き出して、ズルズルと倒れてく
れる。元口から4メートルの長さを切り落とし、残りの枝を鋸で切り落とす。    

丸太の元口に細引きを巻き付けて土留めしたい場所に移動する。斜面をズルズル引っ張
るのは大変で、倒す場所を考えておかないと後で苦労することになる。このことからも
斜面に対して横に倒すことが理想的になる。その固定した丸太の上に払い落とした枝を
伏せるように重ねる。さらに上から踏みつけて土留めになるように固めていく。   

1ヶ月前に切り落とした桧の葉がまだ瑞々しい緑色をしている。本当に腐りにくい葉だ
という事が良く分かる。だからこそきちんと処理をしておけば土留めとしても有効にな
るはずだ。何気なく枝払いをして放置するのではなく、土留めにするのだという意志を
もった処理をしたいものだ。10本倒して午前の作業が終了した。         

昼食は焚き火を囲んで食べる。じっとしていると寒さがシンシンと染み込んでくるので
、焚き火がありがたい。コッヘルに湯を沸かしラーメンを入れる。粗挽きウインナーを
ヒノキの枝に刺して焚き火で炙る。寒い日のラーメンは体を暖めてくれるので最高だ。

午後、JICKYさんがチェーンソーを使った間伐をする。静かだった山にチェーンソーの
2サイクルエンジンの音が響き渡って、急ににぎやかになる。こちらも負けずに斜面を
動き回って間伐作業に没頭する。                        

夢中になって作業していたら、枝ではねた鋸が左手の親指の先にぶつかった。革手袋を
していたのだが、手袋を取ったら血が出ていた。この時面白い発見をした。手を下に向
けているとポタポタと血が出てくるのだが、手を頭の上にかざすと血が止まるのだ。森
林インストラクター講座の「安全講習」で習った【高挙法】という血止めの方法なのだ
が、自分の身で試すことが出来た。傷にはバンドエイドを貼っておいた。      

手を切ったら傷を上に挙げよう! そうすれば血が止まる。            

午後も約10本のヒノキを倒して土留めを作った。だんだん思ったような間伐状況にな
ってきたので満足感が増してくる。考えてみると、こんなふうに木と1対1で向かい合
って、全力をかけて渡り合うことは今までには無かったことではないだろうか。どうい
う状態になっているか、どこに倒せば良いか、どう倒すのか、倒した木をどう動かすか
・・・自分の知識と技術と体力を動員して渡り合う。これがけっこう楽しい。    

チェーンソーがガソリン切れになり、静けさが戻ってきた。夕方から雪になるという予
報通りに雲が厚くなってきた。時間もちょうど3時になったので、二人に声をかけて上
がることにした。丸太に細引きをかけ、引きずって山道を下る。足は軽い。     

間伐は冬のスポーツ・・・あとはまた明日から。