瀬音の森日記 168


雪の平林寺で鳥見をする



2001. 1. 28


1月28日(日)前日の記録的な大雪も上がり一面の雪野原が広がっていた。秩父で
は52センチの積雪があったとテレビのニュースで言っている。家の前の雪かきも終
わり、暖かい日差しの中を平林寺に行った。カミさんと二人で初めての鳥見をしよう
というのだ。きっかけは、朝、裏の畑にいたアカモズを双眼鏡で見たことだった。 

雪の野菜畑に立っている杭の上に止まったアカモズを見つけた。すぐにカミさんを呼
んで双眼鏡を渡す。カミさんはアカモズが飛び立つまで身じろぎもせずに見入ってい
た。図鑑には夏鳥とあるが、目の前にいるのは間違いなくアカモズだった。見終わっ
たカミさんが興奮している。それはそうだ、私もアカモズを見たのは初めてだったの
だから。朝食を食べながら平林寺に行こうか、と誘うと一も二もなく乗ってきた。 

平林寺は禅宗のお寺で、新座市役所のすぐ横にある。我が家から車で10分程で行け
る場所にあり、広大な寺領が多くの野生動物を守っている。午後1時に入園する。閉
園は4時、正味3時間の鳥見である。果たしてどんな野鳥に会えるだろうかとワクワ
クしながら門をくぐる。                           

門に入ってすぐにシジュウカラが出迎えてくれた。雪が残る道を山の方に歩いていく
が鳥の鳴き声はカラスの声だけしか聞こえない。雪景色を撮影するのだろうか、望遠
レンズを付けたカメラを担いだ人と何度かすれ違う。クヌギ林の縁にシジュウカラが
いた。じっとしていると次から次に現れてくる。ひょいと上を見たらコゲラがいた。

クヌギ林の中を歩く。雪を踏む音が響いて野鳥観察には障害になるかと思ったが、見
る段になると雪の上が見やすい。下が雪なので鳥がいるのがすぐ分かる。遠くの枝に
ツグミが止まっている。後ろ姿をじっくり観察したが正面から見ることは出来なかっ
た。飛び交う鳥の姿もなく静かな林だった。時折大きな影が動くのは全部ハシブトガ
ラスだった。                                

クヌギ林が終わるころ、飛んできた鳥が上の枝にとまった。           
「あれは、何?」                              
と聞かれて、飛び方からするとヒヨドリかな、と答えた。すると、カミさんが不思議
そうに「ヒヨドリって、あんなに赤かった??」と言うではないか。すぐに双眼鏡を
目に当てると、なんとツグミが至近距離の枝に止まっているではないか。それからは
ツグミの独演会だった。枝から地面に下りたツグミ君は落ち葉をくわえて右に左に飛
ばしまくる。落ち葉の下の虫でも探しているのだろうか。雪の上を行ったり来たりし
て走り回る。見え隠れするその姿に二人で大喜びしていた。           

シジュウカラに似た鳴き声が聞こえた。チィチピィ、チィチピィ、チィチピィ、・・
だんだん鳴き声が大きくなって、胸の赤いヤマガラが見えた。シジュウカラとヤマガ
ラの合唱だ。ヤマガラが木の実を割る音がドラミングのように聞こえる。双眼鏡の中
には割った木の実を美味しそうに食べるヤマガラがいる。            

突然「キョロロロロ・・!」という甲高い鳴き声が響き渡った。姿は見えない。何の
鳴き声だろうか。アカショウビンが居るわけ無いし・・・アカハラか、オオアカハラ
か??想像するのも楽しいものだが、いつか姿を見てみたい。          

正門の前まで戻ったら、いきなり鳥が飛んできた。地面に降り立ち、目の前を行った
り来たりしている。図鑑を出して姿を確認すると、どう見てもタヒバリだ。こんなと
ころで会えるなんて思っていなかったのでビックリした。同じ場所でキセキレイが長
い尾を上下にさせながら歩き回っていた。後ろの生け垣の周辺をウロウロしているの
はシロハラだ。                               

そのうちに綺麗な鳥が舞い降りた。なんと、ルリビタキではないか!鮮やかなブルー
とオレンジのコントラストが素晴らしい。まるで野鳥ショーを見ているようで時間が
経つのも忘れてしまった。ここではキジバトも見た。名前の分からない鳥もいた。遠
くで門番の人が木戸を閉めるのが見えた。うっかりして閉館時間を過ぎてしまったの
だ。                                    

おそらくあの場所は、誰かがいつも餌を捲いてでもいるのだろう。それで警戒心なく
野鳥が集まってくるのに違いない。そうでなければ、よっぽど運の良い鳥見が出来た
ことになる。門番さんにお詫びしながら外に出てからも興奮が納まらなかった。いや
あ、初めての鳥見でこんなに見られると思っていなかった。           

近くのうどん屋さんで暖かいうどんを食べながら、今日見た野鳥の話に夢中になる。
図鑑を見ながら、鳴き声の話や色の話が尽きない。二人とも、鳥見にハマってしまう
かもしれない。生きている野鳥の綺麗なこと。今までこんな綺麗なものだとは思って
もいなかった。素晴らしい世界が扉を開けたようだ。              

ああ、まだ見ぬ野鳥の多いこと・・・あとはまた明日から。