瀬音の森日記 182
渓畔林植樹イベント2日目
2001. 4. 15
朝6時に目が覚めた。昨夜降った雨はどうやら上がっているようだ。朝日が射してい
る。それにしても、植樹した夜に雨が降り、朝には晴れているなんて神様もにくい心
配りをしてくれるものだ。じつに願ったり叶ったりの天気ではないか。
顔を洗って1階の食堂に行くと、もう渡部さんとテールウオークさんは作業を終えて
くつろいでいた。予定よりもずいぶんと早い。そのうちに2階でも起きた人が布団を
たたみ始めた。大勢でやるから作業も早い。全員が揃ったところで朝食。豚汁にうど
ん付きである。食べたい人はカレーライスもある。3杯もお代わりして満腹になって
しまった。
朝食後は大掃除。この宿舎は演習林の学生用の宿舎であり、あくまで我々は例外的な
処置で借りている。来たときより綺麗にするのは当然なのだ。ゴミや空き缶、空き瓶
も全部持ち帰る。早めに朝食を終えたので掃除はゆっくりとできた。終わった人は外
で春の空気をぞんぶんに楽しんでいた。気持ちのいい朝だった。
二日目の作業は測定。全員で集合しkazuyaさんの説明を聞いてから出会いの丘に移動
する。出会いの丘では坂本さんが待っていた。今日は空荷で斜面を下る。途中でいろ
いろな樹木をkazuyaさんが解説してくれる。ウダイカンバ、ハンノキ、ミズキ、フサ
ザクラ、サルナシ、ハシリドコロ、タラノキ、ヤシャブシ、オオバアサガラなどなど。
昨日植えたシオジやケヤキは一晩の雨ですっかり落ち着いているように見えた。本当
に昨夜の雨は天の恵みだったと思う。各班ごとに測定作業に入る。図面に沿って1本
1本の長さを測定して記録する。今後5年後10年後にどれだけ成長するか、この研
究の核心部分になる数字の基だ。測定とは別に、今日から参加の前川さん、坂本さん
、横澤さん、深町さんの4人にはシオジとケヤキの植え残った分を植樹してもらう。
ちょっと大変な所だったが4人でやれば簡単だろう。
測定と同時に水生昆虫の調査も行った。4カ所のコドラート(水の中の50センチ四
方)を設定して、その中の水生昆虫の種類と数を同定するというもの。これも今後渓
畔林の成長とともに重要な調査対象となるものだ。釣り師が多い瀬音の森会員なので
、まったく抵抗無く調査をしている。楽しんでいるようにも見えるが本人たちは至っ
て真剣なのだ。
測定作業、水生昆虫同定作業が終わり、残ったケヤキの苗木を山の斜面際に植樹して
すべての作業が終わった。まぶしく、熱いほどの日射しの中でしばらく休憩する。私
は双眼鏡で周囲の木々を観察していた。フサザクラやダンコウバイの花が咲き、水辺
のカエデは赤い幼枝を輝かせている。遠く白く見えるのは柳の雄花。カワガラスが流
れの上空を飛び、ミソサザイが甲高いさえずりを聞かせている。芽吹きの春だ。
このシオジやケヤキが20年後にどこまで大きくなっているだろうか。シオジもケヤ
キも300年から400年の寿命を持つ。この中で300年生き残るシオジやケヤキ
があるかもしれない。そう考えると何だか胸の中にこみ上げてくるものがある。
「渓畔林植樹の手引き」の中に”渓畔林再生の意味”という小文を綴った。その中に
も書いたのだが瀬音の響く場所に森を作ることが夢だった。こうして小さいながらも
その夢を実現することが出来たのだ。これを第一歩にして次なる瀬音の森を目指した
いものだと思う。やれば出来ることは実証できたのだから。
12時、現地でのすべての作業終了。全員が一列になってワサビ沢の急斜面を登る。
この坂を上るのは何度目になるだろうか・・これからも何回も登ることになるのだろ
うなあ、などと考えながら一歩一歩足を運んだ。
出会いの丘で最後の集合写真を撮り、全ての日程が終わった。予定通りに無事終わっ
たことを参加者全員に感謝したい。また、準備作業や申請作業、現地の指導、さらに
は解説までやっていただいたkazuyaさんに感謝したい。そして大変な量の食事を担当
してくれた渡部さんとテールウオークさんに感謝したい。さらに毎回夜学を担当して
くれる安谷さんにも感謝したい。ありがとうございました。
夢の実現は次への第一歩に・・・あとはまた明日から。