瀬音の森日記 204
初めてのタマゴタケ
2001. 9. 2
台風のその後がどうなっているか心配になって、小菅のログハウス建築現場を見てき
た。山の入り口にはヌスビトハギやイノコズチが群生していて秋の気配が濃くなって
いる。クズはやっかいものだが、この時期の落ち着いた花を見るのは、なかなか良い
ものだ。
川に作ってあった人工堰き止めプールは台風の増水による土砂ですっかり埋まってし
まった。夏休みも終わったのだ、と妙に感傷的な気分がした。川面にはアキアカネが
飛んでいる。その川の横の栗の木にかけておいたスズメバチトラップにはスズメバチ
だけでなくカナブンやハンミョウなどが沢山入っていて、ちょっと胸が痛んだ。
このことで、このトラップはかなり人間本位のものだった事に気づいた。同じトラッ
プでも、スズメバチが入っていると喜んで、カナブンが入っていると悲しむというの
は、いかに何でも身勝手だと自分でも思う。ただ、スズメバチに刺されると大変な事
になるのは分かっているので、その対策は考えなければならない。なかなか難しい。
山を登るうちに、ヒノキ林で沢山のキツネノチャブクロを見つけた。まだ若く固い個
体ばかりだったので大喜びでビニール袋に入れているうちに、目が「キノコ目」に変
わっていく。イグチの大きいものがすぐに見つかる。イグチはとにかく袋に入れる。
やけに目立つ白いキノコ、あれはドクツルタケ。時知らずのアカモミタケはないかと
目を輝かせるが、さすがにまだ出ていない。
建築現場の手前のカーブを雑木林に入って行くと、踏み後に赤いキノコが捨てられて
いる。ボロボロのキノコだったが、よく見るとタマゴタケではないか!俄然やる気に
なって奥に進む。木の葉隠れに赤いものが見えた。近寄って摘み上げると、案の定タ
マゴタケだった。周辺を探して3個のタマゴタケを見つけた。
タマゴタケを採ったのは初めてのことなので、他のキノコはどうでも良いという気分
になってしまった。まあ、それも仕方ない事だ。それだけ食べてみたいキノコだった
のだ。
ログハウス建築現場は台風にも関わらず、杭もそのままでまったく異常は無かった。
前回、気になっていたトタンの下の角材は調べた結果、腐っていて使い物にならない
ことが判明した。使い物にならないどころか、ほとんど腐って土になっていた。もし
使えたら造作が楽になるところだったので、ちょっと力が抜けてしまった。シートで
保護して置いた基礎柱の確認などをして、お昼のラーメンを作って食べた。
家に帰ってタマゴタケとキツネノチャブクロを調理する。イグチは何本か採ったのだ
が、正体不明につき、今回は破棄。タマゴタケを賞味することに専念した。人参、大
根、ネギ、油揚げと合わせて、和風に煮る。味付けはだし少々とお酒と醤油。イチョ
ウに切った薄切りの大根に味が染み込んだ頃合いを見て火を止めるときのこの良い香
りが部屋に漂よった。
で、初めて食べたタマゴタケの感想はというと・・・う、旨い、絶品でございます。
色は鮮やかな赤が消えて、すっかり煮物と化した。しかし、つるりとした舌触り、ぷ
りぷりモチモチっとした歯ごたえ、ツルンとした喉ごし、噛みしめると口中に広がる
旨みと香り、どれを取っても絶品だった。残った汁にご飯を入れて雑炊にしたものが
また旨かった。旨いものはシンプルな料理に限る。この味にはカミさんも大喜び。次
回も頼むとねだられてしまった。
タマゴタケ、私のキノコ史にくっきりとページを刻んだ一日だった。
次の小菅も楽しみになった・・・あとはまた明日から。