瀬音の森日記 282
シオジ苗・ケヤキ苗の移植
2003. 3. 15
3月15(土)秩父市内の東大演習林影森苗畑にて、シオジ・ケヤキ苗の移植をした。
参加者はkazuyaさん、JICKYさん、ユーリさん、澤田さん、安谷 修さん、長南さん、
kurooの7人だった。演習林技官の澤田さんにも手伝って頂いた。予報では曇りだった
のだが、作業開始直前に小雨が降りだし、そのまま小雨の中での作業となってしまった
。苗の植え替え作業だから湿り気のある、このような天候は望むところで、参加者は全
員合羽を着てスコップを手にシオジの苗を掘り出しに向かった。
まず、シオジが植えてある畑からシオジをスコップで掘り出す。シオジは大きいものは
170センチくらいに育っており、幹も太いのは4センチくらいのものがある。3年で
ここまで大きくなるのだから日光を浴びるということが樹木にとってどれほど重要な事
なのかがよく分かる。掘り出したシオジ苗をリヤカーに積み、隣の畑に運ぶ。そこには
90センチ幅の畝が切ってあって、30センチ間隔で3列に植えるよう指示される。
あまり間隔を空けると枝が横に張りだしてしまうので、上に伸ばすためにも密植するの
だという。杉やヒノキを真っ直ぐに生長させるのと同じ手法だ。良い苗を作ることがい
かに大切か、豆焼沢での鹿の食害を見ているとよく分かる。今は畑で背が高く、幹が太
い苗に育てることが大事なのだ。スコップで穴を掘り、苗を入れ土をかぶせて足で苗の
回りを踏み固める。この作業を延々と繰り返す。
作業中近くの木で尾がオレンジ色の鳥がしきりにさえずっていた。2メートルくらいに
近寄っても逃げない。ジョウビタキの雌だ。どうやら耕耘した地面から出てくる虫を探
しているようだ。ハクセキレイもしきりに尾を振りながら畑の上を歩いている。ここは
静かなせいか野鳥が多い。遠くの杉にはオナガがたくさん止まっていて、ギャーギャー
と鳴いている。
昼近くなったので作業を終了し、横のカンバ実験林で秩父に生息するカンバの仲間の解
説をしてもらった。チチブミネバリとヤエガワカンバは絶滅危惧種だ。他にも、ミズメ
、ウダイカンバ、シラカンバ、オノオレカンバ、ダケカンバなどが植えられており、元
気に育っている。内側に巻き込むように伸びるヤエガワカンバの枝。低地で元気のない
ダケカンバ。チチブミネバリは山では絶対に育たないくらい大きく育っているそうで、
澤田技官の話ではこれが日本一大きい個体かも知れないという。ということは、これが
世界一大きなチチブミネバリだということになる。
昼は事務所で食べた。事務所には薪ストーブがあって火が入っているので熱いようだ。
合羽を乾かして湧いている湯をカップラーメンに注ぎ、おにぎりを食べながら、みんな
で色々な話しをした。毎度ながら、この時間が楽しい。安谷さんが酒作りの話しや野菜
作りの話しをするとみんなの眼が輝く。小菅の山小屋でどぶろく作りをやろうか、とい
う声も上がるくらいに盛り上がった。
午後もシオジの掘り出しと植え替えをした。そしてケヤキの掘り出しと植え替え。ケヤ
キはシオジよりも根が強く、横に張っているので掘り出すのが大変だった。力一杯スコ
ップを踏み込んでも根が切れず、剪定ばさみで根を切りながら掘り出す有り様だった。
ケヤキも30センチ間隔で密植する。3メートルもある苗を植え替えながら安谷さんと
「これを担いで沢登りをするのは難しいなあ・・」などと話していた。
この苗達はいつ、何処に植えられるのだろうか。そこを終の棲家とし、300年、40
0年という長い時間を生きてもらわなければならない。そう考えると、木を植えること
は夢を植えることなんだという事に気づく。いつしか雨も上がり、雪の武甲山が雲から
その姿を現した。
夢を育ててまだ3年・・・あとはまた明日から。