瀬音の森日記 293
秩父でケヤキの臼作りをした
2003. 5. 18
5月18日(日)正丸オートキャンプ場に杉田さんを訪ねた。杉田さんは保存会の会員
でもあるので、久しぶりに山の池に行ってみようという事になり、私の車で生川(うぶ
かわ)上流の池に行った。昨日、保存会会員のJICKYさんとkazuyaさんが入川上流で
捕獲したチチブイワナを池に入れてあり、それにタグを付ける作業があるはずだった。
しかし、途中で保存会会員の車とすれ違い、池のすぐ下の道で会長の車と出会い、会長
から作業が終わった事を伝えられた。
キャンプ場に戻り、昼食を食べて今日の作業に入った。今日はケヤキの丸太から臼を作
る。樹齢100年以上ある生のケヤキ丸太(重い!)に臼の穴をくりぬく作業だ。玉切
りしたケヤキを立て、中心点から簡易コンパスで円を書く。この円は心材の赤い部分に
納まってなければいけない。辺材(しらた)にかかると、そこが割れてしまうとのこと
。穴はドリルで空ける。大きな電気ドリルで描いた円の内側に連続させて穴を空ける。
生のケヤキを使うのは、乾いてしまうとこの作業が非常に大変になる為だそうだ。穴を
空けて臼の内側をくりぬいてから乾燥させた方が長持ちするらしい。乾いているケヤキ
ではドリルで穴を空ける作業も大変になるらしい。柔らかいうちに加工するというのは
道理にかなっている。ちなみに材料のケヤキが1万円、製品になると10万円くらいに
なるらしい。ただ、今回のケヤキは芯に腐れが入っていたので、それほど高くは売れな
いとのこと。材料次第で値段が変わる。しかし、実際に切ってみなければ分からない。
街路樹や農家の庭先にあるような枝を切ったケヤキは必ずといっていいくらい芯腐れに
なっているそうだ。針葉樹と違い、広葉樹は全ての枝が芯と繋がっていて、枝が枯れる
て腐ると、その腐れがそのまま芯に伝わってしまうもののようだ。良材を仕立てている
つもりで枝を切りながら、じつは芯腐れの材を一生懸命作っているのである。広葉樹の
良材作りは手をかけないのが一番なのだ。木の手入れの中でも勘違いしている人が多い
事柄だと思う。それにしても、材料入手がことのほか難しくなってきているようだ。
今日は穴を掘っただけで終わってしまったが、これからチェーンソーで丸くくりぬく作
業、ベルトサンダーで綺麗に仕上げる作業、磨き作業などがあるとのこと。全行程を体
験してみたいものだ。そうそう、杵(きね)も作らなければならない。杵に使うのはリ
ョウブ、ミネバリ、ヤシャブシなどの堅く粘りのある材がいいらしい。ケヤキの太い枝
も使えるのだが、臼の縁を叩いた時などにケヤキは欠けるので嫌われるのだそうだ。リ
ョウブ、ミネバリ、ヤシャブシなどの太い木はそうそうあるものではなく、材料探しが
大変とのこと。ちなみに、作った臼や杵は正月前に全部売れてしまうそうだ。
こうした生活用具作りも昔から農家の副業だったのだ。その材料選びの知識、加工の技
術、手順、など親から子へと伝えられたものだったろう。しかし、何でも買える時代が
こうした伝統を消してしまった。臼も杵もホームセンターで買うものになり、臼や杵を
作る人、竹で籠を編む人、トチノキのコネバチを作る人、曲げワッパを作る人がいなく
なってしまった。冬の間の農家の副業は量産される商品になってしまったのだ。当然の
事ながら、その手作業の技術、ノウハウも消えて無くなってしまった。もう一度この手
にその技術を取り戻すことは可能なのか・・・安易な道の行く末はどんな未来に繋がる
のか。
ログハウス対岸の竹林から手頃なタケノコを4本掘ってお土産用にした。これを薄味で
焚いてタケノコご飯にし、山菜と炊き合わせておかずにし、絹皮を細く刻んでみそ汁に
するのだ。今週限りの山の幸に舌鼓を打つとしよう。
タケノコ採ったら急いで帰るべし・・・あとはまた明日から。