瀬音の森日記 297
西木村の森林学習講座で講義
2003. 6. 20
6月20日(金)西木村の森林学習講座で1時間の講義をした。これは西木村が定期的
に開催している森林学習講座で、乳頭温泉郷「鶴の湯」の佐藤社長なども講師になって
いる。おりしも台風の余波でものすごい強風と横殴りの雨の中、会場の松葉林業センタ
ーに行った。会場には悪天候にもかかわらず、すでに何人もの人が来ていて、その姿を
見て少し緊張した。講義そのものは森林インストラクター養成講座で講師をやっていた
こともあるので、それほど気にはならなかったが、知った顔が多いので困った。
与えられた演題は「瀬音の森活動を通じて」というものだった。村の人に、なぜ東京の
人間がはるばる西木村まで森林ボランティアで通うのかという事を話して欲しいという
要望を出されていた。でも、会員の総意でやっている訳ではなく、一人一人の自由意志
での参加なので、本当の参加目的は一人一人違うはずで、私が話せるのは自分自身の経
験しかなかった。そんな事から、今日は私が考えている西木村のこと、西木村の人に自
覚して欲しいこと、知って欲しいことなどを話そうと思っていた。
産業課の高橋係長の挨拶で開会し、いよいよ私の出番だ。演壇に進み、ホワイトボード
の前に立つ。前から会場を見渡すと20人くらいの人の顔が見える。ゆっくりと一人一
人を見ながら挨拶し、簡単な自己紹介をした。声もちゃんと出ているし、話す内容もま
とまっている。始まるまでの方がむしろ緊張していたようだ。講義のレジメは以下の通
りで、本題から外れて脱線することもしばしばだった。
「瀬音の森について」
・瀬音の森が出来たいきさつ
・ニフティサーブパソコン通信の渓流釣り会議室「瀬音」での会話
・全国から有志が参加して森林ボランティア団体を設立
・現在の活動
・西木村での活動「再会の森」造成、「22世紀の森」植樹、その他
・瀬音の森の活動を通して見えてきたもの・・・水と緑と土
「水と緑と土のこと」
・富山和子著「水と緑と土」:伝統を捨てた社会の行方 中公新書 ¥660
・文明の条件
・時代と共に変わる土の恩恵
・森と土と農業
・ひたすら上流を収奪する下流の力
・真の生産とは
「森林の水源涵養作用」
・水源涵養作用のメカニズム
・森林に降った雨水のゆくえ(図あり)
・水量平準化の働き(図あり)
・水質良化と水質維持(図あり)
・土壌の保全
瀬音の森が出来たいきさつから話し始め、どんな団体でどんな活動をしているのか、ど
んなメンバーがいるのかなど村の人に分かるように話した。そして、その瀬音の森の活
動を通して私自身が考えていることについて、富山和子さんの「水と緑と土」という本
の内容を引用しながら話をすすめ、最後は水がどうやって出来るのかを解説した。水源
の村に住む人々にぜひこれだけは知って欲しかったのだ。
森林土壌がどうやって綺麗な水を作るのか、その水を流し続ける事がどんなに大切なこ
とか。山の手入れに手が回らない現状だが、少しでも手入れをすれば森や山は健全にな
る。森林は土壌を作り、それが水を作る。水のちから、土のちから、農業を営む誇りと
自負・・・言いたいことは沢山あったのだが、難しい話になるので簡単に1時間で終了
した。その後の夕食を兼ねた飲み会で皆さんの反応を伺って、反省するとともに、冷や
汗をかくような気持ちだった。でも、貴重な体験だった。
講義が終わってひと安心・・・あとはまた明日から。