瀬音の森日記 331
里美林業スクールに参加
2004. 5. 1.2.3
5月の連休に恒例となっている「里美林業スクール」に参加した。今回は20人近くの
参加者があり、新しく里川に出来た拠点の整備を中心に作業が行われた。初日は大中(
おおなか)の拠点に集合し、そこから里川の新しい拠点に移動した。里川の新しい拠点
は廃校になった小学校で、ここに、宿泊できる施設を作ろうというものだった。
まず驚いたのは、いきなりお風呂場を作ると言われたこと。水回りを素人が作るのはち
ょっと問題が多いのでは・・と反対したのだが、コンクリートミキサー車を手配してあ
り、今日中にコンクリート打ちを終わらせなければならないという事実に、否応なしに
作業が開始された。まずは床板をはがし、根太を切って床を踏み固め、コンクリートを
流し込む為の型枠を作る。鉄筋代わりに机のパイプを切って床に打ち込み、針金で固定
する。そんな作業をしながらも、まだ私は「水回りはプロにまかせた方が・・」などと
ぶつぶつ言っていた。
昼食後もその作業を続け、3時ころにやっと完成した。4時にはコンクリートミキサー
車が来た。玄関から教室までコンパネで養生したルートを一輪車4台で10往復くらい
してやっと型枠が予定の高さまでコンクリートで埋まった。ひとまずはこれで作業終了
。この後はコンクリートが固まるのを待って進めれば良い。素人だけで急ごしらえだっ
たが何とかなるものだ・・・と感心した。同時に屋根の修理や洗面所の設置などが行わ
れ、拠点として使える目処が立ってきた。
夕方になってお風呂に向かい、食事と入浴を済ませ、拠点に戻ったのは9時過ぎだった
。夜学に荷見さんの講話があり、感銘を受けた本を紹介してくれた。11時には講堂に
思い思いに敷かれた寝袋での就寝となった。頭の中は、お風呂場をどう作り上げるかで
一杯だったが、心地よい疲れとお酒の酔いであっという間に寝てしまった。
二日目の朝は7時に起きた。外では朝食当番の人が朝食の準備に忙しい様子だった。天
気が良いので外で出来上がった朝食を食べて、ひと休みしてから山仕事の支度に着替え
た。その後、数台の車に分乗し、荷見さんの山へと向かう。私は途中の水場で水を汲む
。ここの水は美味しいと評判で、遠く日立市や東京などからも水を汲みに来る人が絶え
ない水場だ。今日も先客がいて、大きなポリタンクに水を汲んでいた。
荷見さんの山に入り、先月植林した林分を見学する。巨大なスギとヒノキがまばらに立
っている広い斜面に、ビッシリとスギ・ヒノキの苗木が植えてあった。同行した塚本さ
んが忙しく斜面を飛び回り「全部、ついているよ〜!」と叫んだ。この斜面の苗木は塚
本さんや福原さんが植えたものだったのだ。全員が揃ったところで、荷見さんが植林の
解説をしてくれた。斜面での点付け(植える位置を決めて石灰を点蒔きすること)の技
術や、スギ・ヒノキを植え分ける方法などを勉強した。
作業は、この2月に枝打ちをした場所の横で、枝打ち・間伐・下刈りをすることになっ
ていた。私はラダーを使っての枝打ちをした。黙々とラダーを上り下りしながらスギの
枝を打ち、徐々に明るくなってきた杉林の中で汗を流していた。岸良さん、吉田さん、
菊池さんなどと気心知れた人達での作業は楽しいものだった。午前中の作業は11時半
に終了し、急いで道具を片づけた。今日は拠点に戻って食事を取らなければならない。
拠点に戻り、道具を片づけている間に昼食が出来上がった。讃岐うどんと地元のうどん
を食べ比べるという豪華なものだった。お腹一杯になって大満足の昼食だった。伊東さ
んから食後のスープを頂き、吉田さんから食後のコーヒーを頂き、フルコースの昼食で
、満腹になってしまった。
午後は1時から前全国森林インストラクター協会会長の堀内先生の講話があった。この
里美村を含む茨城県北部の豊かな自然についての話があり、様々な想いが脳裏を駆けめ
ぐる、とても勉強になる話だった。続いて特別講師弓野さんによる鋸目立て教室が行わ
れた。自作の道具を使って行う目立ての技は、まるで切れない鋸を触ることも憚るよう
な切れ味鋭い鋸に変えてしまった。これには参加者も眼を丸くして驚いてしまった。鋸
の材質の見分け方、目立ての方法、丸鋸の目立て方法など、実際にやって見せてくれな
がらの解説で、とても良く分かり勉強になった。山仕事の技は奥が深い。
午後4時から岡目湿原に移動して堀内先生の観察会が行われた。岡目湿原には様々な植
物が芽を出し、花を咲かせていた。私は皆さんの後をつきながら、明日の朝食用のウコ
ギ採りに夢中になっていた。観察会をしながら山菜の採集など森林インストラクターと
は思えない蛮行で、インストラクター失格の烙印を押されることは間違いないが、ウコ
ギやタラノメ、コシアブラなどを見ると眼がそこから離れなくなってしまうのだから仕
方ない。明日の朝の食事で勘弁してもらうとしよう。日が伸びたおかげで長時間の観察
が出来たのだが、夕方にはすっかり寒くなってしまった。
拠点に戻っての夕食は焼き肉だった。お酒を飲みながら談笑し、今日の作業の話などを
しているうちに塚本さんから「明日は荷見さんの結婚記念日なので、何かプレゼントし
たいのですが、何かないですか?」という話があった。みんなから、歌を歌おうとか、
感謝状をとか、ケーキを作ったらとか、様々なアイデアが出た。どれも一長一短があり
、話が煮詰まって来たので、私が「感謝状とリースだったら私が作りますよ」と言った
ら、あっという間に「それでお願いします」という事になってしまった。
翌朝は食事当番だったのでちょっと早起き。メンバーは福原さん、植田さん、岸良さん
、北村さん、大館さんの6人。手分けして20人分の朝食を作る。メニューは山菜料理
で、おみそ汁にはノカンゾウとコゴミ、チャーハンにはウド、混ぜご飯にはウコギ、タ
ラノメ、コシアブラ。作業は手分けして進められた。昨夜の焼き肉が大量に残っていた
のを刻んでチャーハン用にする。卵焼きの予定だった卵はチャーハン用になった。ウド
は葉までしっかり刻んで、これまたチャーハン用。ネギも刻んでみそ汁の浮き実に。大
きな中華鍋に卵、野菜、お肉、ご飯を入れて両手であおってチャーハンを作る。重くて
筋肉痛になりそうだ。ウコギ、タラノメ、コシアブラは油でゆっくり焦がさないように
炒め、最後に醤油を鍋淵から注ぎ、香りが立ったらそのまま炊飯ジャーの中のご飯にか
けてかき混ぜる。20人分の朝食作りは大変だったけど楽しかった。
朝食を終えてひと休みした後、参加者は霧雨が降る中を昨日と同じ山仕事に。私は吉田
さんと残り、荷見さんへの結婚記念日プレゼントを作ることになっていた。山に行く参
加者を見送った後、二人で裏の山に登り、リースに使えそうな素材を探した。マツカサ
、ヒノキの実、スギの実、カラマツの実、ヒノキの葉、アケビのツル、フジツルなどを
探して拠点に戻り、リース作りを始める。私はヒノキの板を切ってカンナで削り、感謝
状の台を作った。感謝状は北村さんにもらった画用紙を使い、みんなから借りた色々な
ペンを使って仕上げた。こう見えても一応元デザイナーなので、このくらいの作業はお
手のもの。みんなが帰ってくる10分前に感謝状とハート形のリースが完成した。時間
ギリギリだった。
全員が拠点に戻り、道具を片付けて反省会になった。一人一人今回の作業に参加しての
感想を話す。それぞれ実り多いスクールになったようだ。最後に荷見さんご夫妻に塚本
さんから「結婚記念日おめでとうございます」という言葉が、そして吉田さんから感謝
状とハート形のリースが渡された。お二人は本当にビックリした様子で、サプライズ作
戦は大成功だった。我々がお世話になっている度合いに比べたらささやかなものだが、
感謝の記念品をその場で作るというのも楽しい経験になった。
とにかく、色々な事があったけど・・・あとはまた明日から。