瀬音の森日記 371


日光戦場ヶ原の自然勉強会



2005. 6. 4/5


6月4日(土)5日(日)の二日間、日光の自然観察と鹿の食害の様子を観察に行って
きた。二日目には中央水産研究所の「魚と森の観察園」を見学した。参加者は渡部さん
、kazuyaさん、奥貫さん、こねこさん、加藤さん、琥珀さん、kurooの7人だった。
当日は雨予報だったのだが、幸い大した雨に降られず、充実した時間を過ごすことが出
来た。今回見た日光の鹿の食害は見た目以上に深刻だと思う。平方キロ22頭の鹿はど
う考えても多すぎるが、これといった対策はないとのこと。日光の現状が明日の丹沢や
秩父の姿だとすれば、今何か手を講じないと手遅れになりそうだ。         

集合場所の赤沼茶屋から千手が浜まで戦場ヶ原自然研究路「日光てくてく歩道」を歩き
ながら自然観察を行った。途中、ズミの林や湯川を通り抜け、周辺の樹木、花、鳥を見
ながらゆっくりと散策した。湯川はフライフィッシング発祥の地という事で興味津々だ
ったのだが、濁った水色であまり快適な釣り環境とは思えなかった。それでも雑誌から
抜け出したかのような完璧なスタイルのフライフィッシャーマンが何人も並んでいたの
でさすがに有名河川だなあと感心した。湯川で泳いでいたマガモが奇麗だった。   

小田代ヶ原は全体を鹿除けフェンスに守られている。鋼鉄製のフェンスには回転ドアが
取り付けられており、鹿が内部に入れないようになっている。ここまで徹底しないと鹿
の食害で貴重な自然があっという間に破壊されてしまうので、やむを得ない処置なのだ
と思う。事実、この周辺の植生はフェンスの内側と外側では天地の違いを見せていた。

フェンスの内側では豊かな草木が繁茂し、鬱蒼とした森林を形成している。フェンスの
外側は鹿除けネットに覆われた太い樹木だけが残って、他には何も無い。わずかに鹿が
食べない植物だけが残っているという、とてつもなく異常な世界が広がっている。一見
すると伸びやかで見通しが良く、奇麗な環境にも見えるのだが、その意味するところは
本来の自然とはかけ離れた姿なのだ。                      

例えば、この状況が丹沢や秩父でも起こりうるとしたら、日光の荒廃を人ごととは思え
ない。鹿が増えすぎる事が回復不可能な生態系の破壊をもたらすことに気が付かなけれ
ばならない。今回のツアーで最も強烈に感じたことが鹿食害の現状だった。多くの人に
この現実を見てもらい、森林の将来を考えて欲しいと感じた。           

小田代ヶ原から峠を越えて千手が浜に向かう途中、豊富な湧き水が川となり流れて行く
場所がある。この川は永年禁漁で、天然の岩魚が沢山泳いでいる。流れのいたる所で大
きな岩魚をウオッチングする事が出来た。岩魚を禁漁にする事がどれだけ豊かな川を作
るのか、釣り人のいない原始の川はどれだけの岩魚を育む事ができるのか・・・釣り人
の一人として考えさせられる事の多い川だった。それにしても30センチオーバーの岩
魚が一斉に走る姿は興奮ものだった。                      

西の湖に向かう道すがら、荒廃した原っぱと鹿除けフェンスに守られた豊かな森林を観
察し生態系のバランスが崩れた自然を復活させる難しさを実感した。巨大なミズナラも
ハルニレも鹿除けフェンスに守られている。このフェンスが無ければ樹皮をはがされて
数百年生きてきた大木も枯れてしまうのだ。素晴らしい景色の西の湖で集合写真を撮り
帰路についた。途中で偶然鹿を見ることが出来たのだが、痩せ細った鹿の姿は餌の少な
さを思わせ、どちらにとっても不幸な現実となっていることを感じた。       

宿泊は中禅寺湖半の菖蒲が浜のキャンプ場のバンガローだった。渡部さんがご飯を炊い
て、みんなでカレーを作り、楽しいキャンプ場の夜だった。翌日はキャンプ場となりの
中央水産研究所の「魚と森の観察園」を見学した。ここは鱒養殖発祥の地ということも
あり様々なサケ科魚類を養殖しており、アクリル水槽や養殖池で観察することが出来た
。ペレットを投げると先を争って殺到する巨大魚に圧倒された。50センチオーバーの
ニジマスが飛び上がるようにペレットを食べる様は迫力があってじつに楽しかった。 

北海道のイメージトレーニングが出来た・・・あとはまた明日から。