瀬音の森日記 394
小菅・ヤマザクラの根切り
2006. 3. 18
3月18日(土)小菅の舩木山荘前に9時に到着。まだ誰も来ていないのでシャベルを
持って畑に向かう。畑は枯れた雑草で覆われていたが、バリバリと踏みつけながら端の
ヤマザクラに向かった。このヤマザクラは秩父から実生のものを運んで植えたもので、
畑で3年育ったことになる。大きいものは3メートルにもなっていて、そろそろ畑には
置いておけなくなっていた。今回、根切りをして、何とか秋か来春には山小屋周辺に移
植しようと思っていた。
シャベルを土に差すと、幸いなことに凍っていなかった。これなら順調に作業は出来る
と喜びながら作業に入った。根切りとは幹から直径30センチくらいの円状に根を切り
離す作業だ。太い根を切り、細かい根を増やすのが目的で、掘り上げることが目的では
ない。シャベルの先で太い根を捜し、切り離す。近くに植えてあって、重なっている部
分が多く、体力を使う作業になった。何本か根切りが終わって休んでいたら、加藤さん
が到着した。さっそく要領を伝えて、私は畑の片付けに入った。
畑には大量の枯れ草があって、これを春の畑仕事の前に燃やしておきたかったのだ。こ
の時私は大きな間違いを犯した。枯れた草がどんなに燃えやすいかを忘れていたのだ。
土が湿っていたので、草も湿っているだろうと思ったのが大間違いだった。火を付けた
瞬間、枯れ草があっという間に燃え上がり、一瞬にして周りに広がったのだ。運悪くそ
の瞬間に風が強くなった。火は畑を越えて柵を越えそうになった。あわてて柵を跳び越
えて足で踏み消し、加藤さんに声をかけ、シャベルで叩き、土をかけ・・・一瞬の出来
事に体が反応し、自分の体ではないような動きをしたのだが、それでも火の広がりに追
いつかない。炎を浴び、煙を吸いながら必死で土をかけたのだが間に合わない。
もうダメか、と思った瞬間、風向きが変わった。炎の向きが変わった。助かった。すぐ
にシャベルで土をかけて大きな炎を消し、足で踏み消しながらやっとの思いで火を沈静
化させた。風向きが変わらなかったら大きな山火事になっていたかもしれない。本当に
きわどい瞬間だった。火が消えたことを確認し、それでも残る焼けた匂いに頭がクラク
ラになりそうだった。ゼイゼイ、ハアハアしながら水を汲んできて畑に撒く。もう声も
出ない。足はブルブルガクガクしているし、とてもじゃないが作業を続ける気分になれ
ない。また、そんな力も出ない。加藤さんと話すことも出来ないくらい激しい消耗だっ
た。とにかく、火が消えてくれて良かった。神様に助けられた。
その後、猫ミュウさんが来てくれて根切りを手伝ってくれた。私は何もする気力が起き
ずその場で呆然としていた。作業が終わり、近くの原っぱで山菜を採ったりした。この
後、どうしようかと話したのだが、私はとにかく休みたかったので帰ることにした。
加藤さんと猫ミュウさんは釣りをしてから、山小屋で泊まるということだったので、く
れぐれも火の始末に気を付けてくれとお願いして別れた。とにかく休みたかった。
自分のした事の重大さに怯えるとともに、助けてくれた神様に感謝した1日だった。