瀬音の森日記 442
猫さん・土筆さんの追悼集会
2007. 9. 8
9月8日(土)昨年海難事故で亡くなった猫さんと土筆さんを偲ぶ集いが伊東の川奈で
行われた。参加者はハミングウェイさん、野村さん、加藤さん、イナさん、琥珀さん、
岡田さん、佐藤さん、こねこさん、kurooの9人だった。
伊東の道の駅で落ち合い、川奈岬に向かったのは予定の一時間後だった。昨年同様に台
風で通行止めの道が多数あり、渋滞も重なって集合が一時間遅れてしまったからだった
。台風直撃が2日前というのも昨年を思い出させる状況であり、暑い日射しと真っ青な
海も昨年と同じだった。集合場所の道の駅には参加者が全員揃い、3台の車で川奈岬へ
と向かった。川奈岬は10分くらいの場所にある。国道から細い道に入り、車1台がや
っと通れる細い道を走る。小さな港が見えてきた。サーファーや海水浴客がたむろして
いる港が川奈港だ。細い道を走り抜け、岬の先端へと車を進める。
川奈岬の先端に車を停めて、外に出るとムッという暑さが体を包む。ここから山登りと
なり、崖を下る場所もあるのできちんと身支度をする。長靴、手袋、虫除け、タオルな
ど準備万端で全員が山登りに出発する。山道を登りきるとそこはゴルフ場だった。緑が
鮮やかな川奈ゴルフ場の縁を歩き、真っ白い灯台が青空に向かって立つ横を通り、磯へ
の崖道を下る。急斜面にはトラロープが数本かけられているが、女性にはちょっと厳し
い下り道だった。それでも何とか全員無事に磯に降り立つことが出来て良かった。
白い波が砕ける岩場に立つと、もう一年たってしまったのか・・という思いが浮かんで
くる。足元の岩場の不安定さが妙に実感を持って事故を思い出させる。参加者それぞれ
の思いが岩場から青い海に向かって放射されていく。ひとしきり海と波を眺めた後、持
参した生花を全員で青い海に投げ、芋焼酎を波に注ぎ、両手を合わせた。お線香の煙が
風に流れる中、岩場のゴツゴツした場所に腰を下ろし、ザラザラした岩を手で触ってい
たら、ふと土筆さんの額についていた小さい傷の事を思い出した。「ここだったんだな
あ・・・」この場所から一瞬で、何も考える時間もなく高波にさらわれた二人。線香の
煙が出ている間、みんな黙って青い海と白い波を見つめていた。
気のせいではなく、徐々に波が高くなってきた。足元まで白い波が押し寄せるようにな
ってきたので磯を後にすることにした。全員が後ろを振り返りながら崖下に集まり、ロ
ープを掴んで急斜面を登り始めた。何かを振り切るように勢いよく登っていった。一気
に上まで登り、額の汗をタオルでぬぐう。藪からゴルフ場の芝生の上に出ると、歩きや
すくなった変わりに一気に暑くなった。ゴルフ場の端から先ほどまで佇んでいた岩場が
見下ろせた。猫さんと土筆さんに最後の別れを告げて、また藪の中に入って行った。
車に戻り、汗をぬぐい、伊東の港へと向かう。昨年利用した「開福丸」で昼食を食べよ
うということになっていた。ハミングウェイさんが車を岩にこすり、左前方のバンパー
がちょっと歪んだ。まあ、走るには問題ないのでそのまま伊東に向かった。「開福丸」
では、昨年と同じ二階に通され、彩り鮮やかでたっぷりした刺身やアジの叩きを定食で
頂いた。美味しかった。
それにしても考えるのは、もう一年もたってしまった、ということだ。あっという間の
一年だった。猫さんや土筆さんの面影が薄らいだと言うことは無いし、今日だって横に
いてもおかしくない感じがした。それでも時間はどんどん過ぎていく。我々に残された
時間も、あとどのくらいあるのだろうか。猫さんや土筆さんの側に行く日もそう遠くな
いのかもしれない。我々の気持ちとはうらはらに窓の向こうの砂浜ではビキニのお姉さ
ん達が歓声を上げて波と戯れていた。