瀬音の森日記 462
小菅の森、巨樹鑑賞会
2008. 5. 24.25
通い慣れた小菅の山に、こんな巨樹の森があろうとは思わなかった。
5月31日(土)吉瀬さんの呼びかけで実現した、小菅の森・巨樹鑑賞会に行って来た。
天気予報は雨だったのだが、雨の中の散歩もよかろうと、予定通りの開催となった。参加
者は呼びかけ人の吉瀬さんと関根さんとkurooの3人だった。小菅の湯駐車場に車を止め
て身支度し、松姫峠までバス(380円)で行き、そこから歩いて下るコースだった。小
菅の湯に着いた時から雨が降っていたが、小雨だったのでどうしようかと思案するような
事は無くすぐに身支度した。合羽よりも傘の方がいいというアドバイスだった。
バスは予定通りやってきた。季節運行の1日一便のバスは、今日が最終日だった。バスに
は5人の先客がいて、我々だけでないことに少し安堵した。小菅の湯から松姫峠までのつ
づら折りは大きなバスには荷が重そうだったが、運転手さんはさすがに慣れたもので、大
きな車体を苦もなく松姫峠まで運んでくれた。終点の松姫峠は雲の中のようで、霧に包ま
れていた。雨は小雨なので傘をさして歩き始めた。すぐ森の道になるが、道幅が広いので
傘をさして歩くのが苦にならない。花の写真を撮っていると、5人のハイカーが我々を追
い抜いていった。
そして道は大木が林立するエリアへと入って行く。山の神を超えて、しばらく歩くとハリ
ギリの大木が立っていた。スラリと真っ直ぐに伸びたハリギリ。100年生くらいだろう
か、真っ直ぐなのであと百年もすれば良い材(セン)になりそうだ。道の上に巨大な木の
陰が見えた。登って行くと大きなミズナラだった。胸高直径1メートル以上ある大木だ。
上の枝は雲に隠れていて見えない。夢中で写真を撮る。その更に上にはブナの巨木と、モ
ミの大木が並んでいた。ブナとモミも直径1メートル以上ある巨木だった。
道に戻って歩き出す。ここからは所々に大木が立っていて、目を楽しませてくれた。真っ
直ぐに立ったホウノキがあった。見慣れない木肌の大木があったので双眼鏡で葉を確認す
る。テツカエデの大木だった。テツカエデがこんな大木になる木だったとは知らなかった
。高さ15メートル以上はありそうだ。胸高直径50センチ以上、何年くらい生きた木な
んだろうか。道から斜めに立っているのは何だろうかと思案していたら、関根さんがミズ
メだという。オノオレカンバかと思ったのだが、木肌を少し削ったらミズメと解った。葉
の形だけでは解らない木が多い。
小雨の山道を歩いていると、道下に大きなブナが現れた。大きな木でありながら樹勢が素
晴らしいブナだった。見上げると四方に伸びた枝が上空を覆い、まるで緑の傘をさしてい
るようだ。写真に撮るのも遠近感を感じさせるのが難しい。全体が映らないから木の大き
さが分からないのだ。やはり、現場で見てもらわないとこの感動は味わえない。しばらく
歩くとまた大きなブナが現れた。枝がタコの足のように広がった、これまた元気いっぱい
のブナだ。さらに巨木の森が続く。両側に点在している巨木は栗の木だ。上空の葉を双眼
鏡で見て栗だと分かった。樹皮だけ見るとミズナラのようにも見える。巨大な栗が次々に
現れる。何と、栗の巨木林に入り込んだのだ。大昔からあったであろう栗の木。この栗の
木に縄文人も熊もサルもリスも大いに助けられたに違いない。素晴らしい景観。
大きなウロのブナで記念写真を撮る。スッポリと体が入ってしまう。中から外を見ている
と何だか縄文人になってような気分になる。目の前には霧にけむる栗の巨木林が広がって
、何とも言えない幻想的な風景。尾根は栗の巨木が連なる素晴らしい道だった。しばらく
歩くと分岐点の標識が現れた。ここにはミズナラの巨木が目印のように立っていた。写真
を撮って休憩。ここで昼食にする。雨は上がったが林内雨がパラパラと落ちているので、
上空が開けた場所に座ってコンビニのお握りを食べる。
休憩後、分かれ道を下る。上に行くとぐるっと回ってモロクボ平から小菅の山小屋へ行け
る道だが、今回は下の道へ向かう。今回の目的地である、栃の巨木が下にあるからだ。そ
の後の道も楽しかった。キハダの大きな木が立っていたり、シオジの巨木が出てきたりと
目を楽しませてくれた。そして、やや急な下りになった時、沢の向こう側にその栃の巨木
が現れた。何と言ったらいいか、言葉を失った。とにかく、桁違いに大きい。太さだけで
なく、上にも大きい。こんな栃の木は初めて見た。3人が言葉を無くして見上げている。
気が付いたように歩き出し、近寄って見た。何という太さ。胸高直径は2メートル以上あ
る。ゴツゴツとした樹皮。見上げると首が痛くなる高さ。いや、素晴らしい。
代わる代わる横に立って写真を撮る。人間がなんと小さく見えることか。何度も何度も通
った小菅の山に、こんな巨木があろうとは・・・知らなかった。筋肉のように隆々と盛り
上がった逞しい幹、空を覆う高い高い天蓋のような枝葉。この栃の木を見るだけで、ここ
に来る価値がある。近くにはもう一本太い栃の木があるが、残念ながら主幹が折れてしま
っている。雷にでもやられたんだろうか。去りがたい場所だったが、帰りの予定もあるの
で後ろ髪を引かれながら巨樹を後にする。秋にもう一度見に来ることを誓った。
道は下りの傾斜を急にしていった。道脇に見かけない樹皮の大木を発見。双眼鏡で見てみ
ると葉には短枝が付いている。バラ科の木だ。アズキナシかウラジロノキの大木だ。何と
素晴らしい。最後を飾るに相応しい大木だった。道はさらに逆落としのように急になり、
山沢川へと下って行った。道横のワサビ田が大雨の影響で荒れている。昨年9月の大雨は
小菅に大きな爪痕を残した。ここもその例外ではなかった。果たしてこのワサビ田が復旧
することはあるのだろうか。自然の猛威に人の力はあまりにも小さい。
山沢川を下ると、いつも小菅の山小屋へ登る道に出る。二人は山小屋に行ったことがない
ので、この際だからと、ここから山登り。山小屋に登って、小屋の中でコーヒーを入れて
飲んだ。吉瀬さん、関根さん、小菅の山小屋へようこそ。小屋の中でしばらく休憩してか
ら小菅の湯に向かった。