面影画
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9月17日の面影画は横澤美名さん
描いた人 佐藤浩子さん 姉 享年二十一歳
浩子さんは美名さんの五つ違いの姉だった。小さい頃から明るく、みんなに可愛がられた。
お祭りのように人が集まるのが大好きで、大きくなってお祭りにはまり、あちこちに写真を撮
りにいくほどだった。
近所からも注目されていて「浩子ちゃんはいいもんね」などと、お嫁さん候補に挙がることも
多かった。
高校時代からボランティア活動に熱心で、福祉関係の職場に勤める事を考えていた。介護の専
門学校に進み、卒業後は大船渡の施設で介護福祉士として働いた。
本当に自分が好きな道に進み、夢を叶えた人だった。
美名さんは、そんな姉を「もの好きな人だなあ・・」と冷めた目で見ていたという。そんな美
名さんが今は介護福祉士になっているのだから面白い。自然に姉の影響を受けていたのかもしれ
ない。
順調に進んでいた人生が一転したのは二十一歳の時だった。施設の夜勤明けで、クリスマスカ
ードを作るために寝ないで作業して、翌朝車で出勤した浩子さん。
家のみんなが、いつもしないのに、この日に限って見送って「バイバイ・・」なんてやった。
その通勤の途上で、交通事故で二十一歳の命を落としてしまった浩子さん。
仕事熱心で、寝ないで作業して、その結果の事故だった。
今回の津波で美名さんは両親を亡くした。家が流されてしまい、姉の写真も位牌も流されてし
まった。近所の人が偶然集められた写真の中から泥にまみれた一枚の写真を探し出してくれた。
浩子さんの成人式の記念写真だった。
美名さんは着物姿の姉の写真から、介護福祉士として働いている姉を描いて欲しいという。
「この写真しかないんです・・」「働いている姿が一番姉らしいと思うので・・」
十八年前の姉の姿を再現する。結い上げた紙をショートボブにして、着物姿を介護士のエプロ
ン姿に替えて、浩子さんの笑顔を描く。
二十一年間という短い人生を凝縮したような絵を描こうと思った。
この絵がお姉さんを思い出すきっかけになってくれれば嬉しい。
9月17日の面影画は横澤美名さん。
二十一歳の時に事故で亡くなったお姉さんを描かせていただいた。
美名さんは今回の津波でご両親を亡くした。以前、この面影画で描かせていただいた。
家が流されてお姉さんの写真や位牌もすべて流されてしまった。知り合いの人が探してくれた
成人式の記念写真だけが手元にある。その写真を元に面影画を描かせていただいた。
絵のリクエストは結い上げた髪をショートボブに、着物を福祉介護士の服装にして、というも
の。「働いている姿が一番お姉ちゃんらしいので・・」と美名さん。
この絵で、お姉さんを近くに感じてもらえば嬉しい。
若くして他界したお姉さんの面影画を依頼してくれた美名さん。
今日は一日曇り空。田んぼの稲穂が少しずつ膨らんできた。