魂のPK戦勝利!


ACL準決勝でソンナムに勝ち、ついにアジアクラブナンバーワンに王手。


10月24日(水):サイタマスタジアム2002:ACL準決勝2nd:
城南一和天馬(ソンナムイルファチョンマ)           


運命のACL準決勝ホームソンナム戦の日だ。今日は何としても勝たなければならない。
朝霞台駅のMacで簡単に腹ごしらえをして武蔵野線改札に向かう。すれ違った赤い人が
にっこりと笑って挨拶してくれた。共に戦う同士・・・今日はそんな言葉がすんなりと
口から出る。カミさんも気合いが入っている。韓国の試合ではソンナムは強かった。普
通に上手で強い選手ばかりだった。負けるとは思わないが簡単に勝てるとも思えない。
今日は後悔しないように全力で応援しなければならない。             

浦和美園駅前は赤い人の群れで埋め尽くされていた。歩きながら旗を出し、高く掲げる
。家にある限りのフラッグを持参して、フラッグの海にして選手を応援しようという呼
びかけが出されていた。スタジアムに行く途中にはたくさんのダフ屋さんが出ていた。
そのうちの一人が私の掲げている旗を見て「すげえな・・初めて見たよ」と驚いたよう
に話しかけてきた。あまり仲良くする事も出来ないので、すぐに離れたが、ダフ屋さん
も平日の試合にこれだけの人が集まるという事が信じられないようだった。     

浦和美園駅にも共に戦おうというスローガンポスターが。 サイスタの南門には大きな看板が掛けられていた。

スタジアムの席はメインロアーの北側。ゴール裏に近いところだ。席に着くとアウェー
の一角が黄色に染まっているのが見える。噂通りソンナムの親会社でもある統一協会の
動員があったようだ。3000人くらいいるだろうか、サポーターではない信者の集団
。サイスタには一番来て欲しくない集団だ。とにかく統一協会のチームにだけは負けた
くないし、負けてはいけない。あの黄色を見ていると、気合いが入ってくる。すぐに旗
を振り始めた。今日も試合開始まで旗を振り続ける。               

ゴール裏はすでに真っ赤に染まっていた。 統一協会に動員された信者。韓国からのサポは40人くらい。

ソンナムの選手が出てきた。もの凄いブーイングが湧き上がった。選手が驚いたように
こちらを振り向くのが見えた。黄色い集団がスティックバルーンをバチバチ叩いて盛り
上がる。それに対してもブーイングを浴びせる。戦いはすでに始まっていた。カミさん
が買ってきてくれたジャンバラヤを食べる暇もなく旗を振り続ける。都築が出てきた。
今度はもの凄い歓声でスタジアムが包まれる。「都築い〜〜頼んだぞ!」大声で叫び旗
を振る。選手が出てきた。またまたすごい歓声に包まれる。本当に今日は平日なのか?
この歓声は本当に凄い。                            

選手のアップが軽快に続いている。声援がもの凄かった。 選手入場時のビジュアル演出。ゴール裏に人文字が浮かんだ。

スタメン発表があって更にボルテージが上がる。声を限りに叫び、旗を振る。周囲の人
も声を出している人が多い。今日が特別な試合だということはみんなが分かっていいる
のだ。頼もしい限りだ。こういう時のレッズサポの連帯は凄いものがある。スタメン発
表後の静寂を破る浦和レッズコール!その中を選手入場。ゴール裏が真っ赤なボードで
埋まり「WE ARE REDS」の白文字がくっきりと浮かんだ。バックスタンドも真っ赤に
染まり、メインスタンドでは赤い旗が全ての席で振られている。レッズの選手を鼓舞し
、ソンナムの選手にプレッシャーを与えて、少しでも試合の流れを自分たち有利にしよ
うというビジュアル演出だ。                          

フェイスガード姿のワシントンにスタンドからどよめき。 選手入場を精いっぱい旗を振って迎える。

絶対負けられない試合のホイッスルが鳴った。レッズはワシントンと達也のツートップ
でソンナムに挑む。韓国での試合が2対2だったので、事実上今日の結果で勝敗が決ま
る。とにかく先に点が欲しい。ソンナムはモタが出ていない代わりに、チェ・ソングク
がスタメンだ。小さいけど速くて強い嫌な選手だ。案の定、チェ・ソングクがチャンス
に絡んでくる。どちらも引かず一進一退の序盤だった。              

前半21分、平川が深く持ち込んで、ポンテにパス。ポンテがロビング風に上げたクロ
スをワシントンが絶妙のトラップから矢のようなシュートを放ち、ボールがサイドネッ
トに突き刺さった。相手キーパーが一歩も動けない素晴らしいシュート。スタンドは総
立ち、廻り中の人とハイタッチする。叫ぶ叫ぶ「やったあ!ワシントン最高!」「ワシ
〜良くやった!」最高の先制点。これで勝てると思った。そして、そのまま前半が終了
するまで「勝てる」という感じが残っていた。                  

ワシントンの先制弾が炸裂し、大喜びのスタジアム。 ハーフタイムには3色のデカ旗が出された。

ハーフタイムにゴール裏に三色デカ幕が出された。ゴール裏も今日は気合いが入ってい
る。そして後半開始のホイッスルが鳴った。後がないソンナムが徐々に圧迫を強めて来
るが最後のシュートは打たせない、という展開が続いていた。レッズのコーナーからソ
ンナムのカウンターだった。イタマルに当たったのは坪井。イタマルのトリッキーなフ
ェイントに坪井が抜かれた時「ヤバイ!!」と思った。案の定、後ろから飛び込んでき
たチェ・ソングクにはマークが着いておらず、フリーのシュートを決められてしまった
。これで1対1。スコアが並んだ上に勢いはソンナムにある。徐々に不安が頭をもたげ
てきた。数分後、その不安が現実のものとなる。                 

4分後、イタマルがフリーで放ったミドルを都築は弾くしかなかった。しかし、その弾
いたボールがソンナム選手の前に上がる。よりによって背の高いキム・ドンヒョンがそ
こにいた。闘莉王が競ったのだが勢いで負けた。キム・ドンヒョンが頭に当てたボール
はゴール左隅に転がり込んでしまった。痛恨の逆転を許してしまった。都築が自分に吠
える。ゴール裏はすぐに浦和レッズコールを最大のボリュームで送る。こんな所で意気
消沈してはいけない。まだまだ時間はある。声を枯らして叫ぶ、手を叩く。     

そんな気持ちが乗り移ったか、4分後。ポンテがフリーキック。ボールはゴール前に上
がった阿部の頭にピタリ。阿部がゴール前に落とす。そこに走り込んだのが長谷部!左
足で合わせたボールはキーパーの横を抜けてゴールネットに突き刺さった。スタジアム
は総立ち。「はせべぇ〜〜」みんなが叫んでる。両手を突き上げてる。抱き合ってる。
魂の同点ゴール。長谷部がやってくれた。最高だ。ソンナムの同点ゴールから逆転ゴー
ル、地獄に堕ちた4分後に天国への扉が開いた同点ゴール。8分間にこんなにも気持ち
を揺さぶられる試合。しかし、2対2となった以上、この先の同点は負けだ。勝たなけ
れば決勝に行けない。韓国では喜んだアウェーゴールの牙がこの先はレッズに向かって
くることになる。                               

上がることを封印して守備に専念していた闘莉王が足に異変を起こしている。阿部はす
でに何度も足を引きずっている。闘莉王がついに倒れた。両手でバツのサインを自分で
出している。肉離れか・・・ソンナムの圧迫が強い。レッズの選手は疲労からか、足が
止まってしまった。闘莉王に代わって堀之内が入る。阿倍の必死のクリアが続く。そし
て試合終了のホイッスル。ボロボロの状態で延長戦を戦う羽目になってしまった。  

延長前半、足を痛めた山田が細貝に代わった。細貝の危なっかしい守備にスタジアムの
空気が凍る場面が続く。1点取られたら終わりという展開になっている。延長の間にも
チャンスはあった。しかし、ワシントンのシュートはキーパーの正面を突き、啓太のシ
ュートは上に外れた。どちらも一進一退で延長も進み、どちらにも得点の可能性を感じ
させながら試合終了のホイッスルが鳴った。その瞬間、CSの延長を終えてPK戦で横浜
に負けた場面が脳裏にフラッシュバックした。慌てて頭を振って嫌な場面を消そうとし
たが、頭から離れない。あろうことかナビスコの決勝でFC東京に負けた場面まで思い
出しやがる。「くそお・・PK戦かよ・・」                   

ゴール裏には再度「WE ARE REDS」の人文字が出た。そしてWE ARE REDSコールが
最大音量でくり出される。選手は見るだけで、もうボロボロなのが分かる。少しでも中
に残っている力を出させるのが今の我々の努めだ。声も出なくなっているが、精いっぱ
い叫ぶ。南ゴール裏から大旗がゾロゾロと移動して来て、ゴール裏に集結した。そして
PK戦が始まった。最初はポンテ。ゆっくりとマークにボールを置く。祈るスタンド。
ポンテはきっちりと決めて右手を高々と上げる。大歓声に湧くスタジアム。     

長谷部のゴールで同点に追いついた。 平川のPKが決まり、歓喜の瞬間。

ソンナムの選手が蹴る前にはゴール裏の大旗が一斉に揺らされ、全員がブーイングしな
がらマフラーを振り回す。少しでも精神統一を邪魔しようというサポーターの応援が凄
い。しかし、決められてしまった。レッズはワシントンが二番手。微妙な空気が漂った
ような気がしたが、両手を合わせて祈る。ワシントンも鮮やかに決めた。ホッとしたの
と大歓声とが交錯する。ソンナムの二番手は得点を決めたチェ・ソングク。都築は落ち
着いていた。チェ・ソングクが蹴ったのは正面。強く速いシュートだったが、都築は先
に動かず、そのボールを弾いた。スタジアムが大歓声に包まれた。         

その後、レッズは足を引きずりながら阿部が決め、永井が決め、最後は平川が何のプレ
ッシャーも感じていないように決めて勝負がついた。平川が決めた瞬間、全員が総立ち
となり、両手を突き上げ、叫んだ。「勝ったぞ!!!」「ひらかわぁ〜〜〜!」平川に
駆け寄る選手達が拳と旗の間に見え隠れする。スタジアム全体が揺れ動いているようだ
。廻りの人とハイタッチを繰り返す。「勝った!」「よくやった!」「ソンナムに勝っ
た」・・・その後しばらく間の事がよく思い出せない。              

勝った瞬間選手が平川に駆け寄り、グランドで抱き合った。 場内一周した選手がゴール裏で挨拶し、それに応える。


メインに挨拶に来た選手を讃える。 勝利の歌を歌う。甘美な時間。

選手が場内一周をしている。ゴール裏に来て挨拶をして、こっちに向かってくる。総立
ちのサポーターから凄い歓声と拍手。選手全員が見えなくなるまでの浦和レッズコール
。そしてマフラーを掲げて勝利の歌を歌う。一つの勝利がこんなにも大変だとは、一つ
の勝利がこんなにも嬉しいとは・・・ソンナムはじつに強かった。燃え尽きた4時間。


10月24日(水) AFCチャンピオンズリーグ 決勝トーナメント準決勝       
第2戦 浦和 vs 城南一和                            
浦和 2 - 2(PK 5 - 3)城南一和 (19:30/埼玉/51,651人)         
得点者:21' ワシントン(浦和)、56' チェ・ソングッ(城南一和)、69' キム・ドンヒ
ョン(城南一和)、73' 長谷部誠(浦和)                    


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