ワールドカップアジア最終予選
いよいよスタートしたドイツへの道。
2月9日、サイスタで最終予選の初戦、北朝鮮戦を観戦した。
209ワールドカップアジア最終予選:北朝鮮戦:サイスタ
友人が行けなくなったという事で、急遽サイスタの北朝鮮戦に行けることになった。ワ
ールドカップの最終予選の第1戦である。ドイツワールドカップへの道はここからスタ
ートするという大事な一戦だ。北朝鮮戦ということで、サッカー以外の所でマスコミが
連日かまびすしい報道を繰り返していたので、何かしら普段と違う観戦になるのではな
いかという期待にわくわくしていた。東川口駅にも警察官の姿が見えたので、期待通り
普段とは違う観戦になりそうだった。
浦和美園駅はサポーターでごった返していた。いつもやっているSR屋台村は今日は無
いということで、駅のコンコースに様々な食べ物屋台が出来ていて、買い物をするサポ
ーターが右往左往していた。私は地元浦和のトンカツ弁当を買った。駅からスタジアム
までの道は北朝鮮サポーター(いるのか?)と日本サポーターは別々の道を歩くように
なっていた。が、片方の道は誰も歩いていなかった。そりゃそうだ。ほとんどがバスで
来るという事だし、個人で歩く人がわざわざ別の道を歩くなんて事はないだろう。北朝
鮮サポ用に確保した道で屋台を出しているテキ屋さんが暇を持て余していた。
上空には報道のヘリコプターが5機も旋回していた。ヘリコプター同士が近づきすぎて
ぶつかるのではないかと思ってハラハラしながら見ていた。歩いている間の暇つぶしに
ちょうど良かった。スタジアムに入って来られなかった友人用にプログラムを買った。
立派なプログラムだった。席はメインアッパーの記者席のすぐ上だった。ほぼセンター
ライン上で、試合を見るには最高の席だった。いつもの席より遠くて、ピッチ全体がよ
く見える。アウェーの北朝鮮応援席を見ると、そこだけ赤くなっている。
普段のレッズの試合は全体が真っ赤で、アウェーが違う色になるのだが、今日は全体が
日本の青で、北朝鮮が赤いという逆転現象になっている。でも、そんな事を考えるのは
レッズサポーターだけだろうね。北朝鮮の応援はドラや太鼓が叩かれて賑やかだ。朝鮮
高級学校の生徒が中心になって、農楽のリズムに合わせた応援を練習していた。在日朝
鮮人の人々にとっては自らのアイデンティティをかけた応援になるのだろう。試合開始
まで時間があるので、買ってきたトンカツ弁当を食べた。冷たくて不味かった。キャベ
ツが堅くてソースも少なく、ご飯も不味いし・・・ああ〜変なもの買っちゃった。
北朝鮮の応援席からっどっと歓声が沸いた。双眼鏡で見るとアン・ヨンハとイ・ハンジ
ェのJリーガー二人が応援席に挨拶に出てきたのだ。在日の星と呼ばれている二人の選
手はまさに今日の試合の象徴だ。今までも二人は両チームの間に立って、様々なメッセ
ンジャー役を果たしてきた。特にアン・ヨンハはその真っ直ぐな性格と真摯な態度が北
朝鮮チームに対する見方を変えてくれた。私も小さく拍手をしておいた。
代表チームの選手がアップに出てきた。応援席が一気にヒートアップする。初めて見る
北朝鮮チームの選手に目がいく。背は高くないが、肩幅の広いがっしりした体つき、見
るからに頑丈そうで、フィジカルには要注意だ。ウオーミングアップもボールをあまり
使わずにランニングとストレッチが中心だった。まだその実力ははベールに包まれたま
まだ。日本は中村と高原がサブ組でアップしているので、事前に報道されていたように
海外組なしでスタートするらしい。いくら前の試合結果が良かったからといって、あく
まで親善試合なのだから参考にはならないと思うのだが・・・ちょっと心配。
ジン、ジンジン、ジンギスカ〜〜ンという何だか分からない歌が歌われている。まあ代
表の応援だから何も分からないのだが、真剣勝負を前に歌う歌ではないような・・・・
国歌斉唱。北朝鮮国家は独唱なしで演奏のみ。でも、選手と応援団は声を張り上げて歌
っていた。日本の国家独唱は石川さゆりだった。途中やや不安定な部分もあったが、無
事に歌い上げた。スタジアム全体で歌う君が代はいつもの光景だが、北朝鮮選手や在日
朝鮮人の人々の耳にはどう聞こえているのだろうか。いつもは考えもしないことが頭に
浮かぶのは、やはり北朝鮮が相手という特別な感情が入っているからなのだろう。
大歓声の中でキックオフ。日本は比較的楽にパスを回す。ボール支配率は圧倒的に日本
が多い。しかし、ボール奪取に向かう速さから北朝鮮が時折見せる鋭いカウンターは要
注意だという事が分かる。試合が始まってすぐ、サントスが相手ペナルティエリア近く
で倒さされて得たフリーキック。蹴るのは小笠原。するどいシュートが相手の壁を越え
た。んっ??キーパーはどこだ?? と一瞬何が起きたか分からなかった。とたんに大
歓声。入ったのか??入ったんだ〜!! 素晴らしいフリーキックだった。リプレイで
再度大歓声が上がる。でも、リプレイで見る限り、あれは相手キーパーのポジションミ
スだ。小笠原のキックは素晴らしかったが、ラッキーな先取点だった。
その後の流れはあまり良くなかった。あまりに早い先取点に、サポーターも選手も勘違
いしてしまったのかも知れなかった。パスは足元に安全なものばかりで、誰もリスクチ
ャレンジしなくなっていた。たぶん、このままいけばもう2〜3点は取れるんじゃない
か・・・と言うような空気があった事も事実だ。最初は守備に混乱を見せていた北朝鮮
チームも安定してきて、徐々に自分のペースをつかんできた。ルーズボールに対する出
足が日本の選手より1歩速い。このままではまずいことになりそうだ。イヤな予感が頭
に浮かぶが前半はそのまま終わった。
ハーフタイムにジーコはどんな指示を出すのだろうか。何か流れを変えていかないと、
このままではマズい事になりそうだ。とても勝っているような気分では無くなっていた
。応援も何だかヌルヌルで、北朝鮮の迫力ある声に圧倒されている。ジンギスカ〜〜ン
なんて歌っている場合じゃないだろうが、まったく。真剣さが足りないよ。選手もサポ
ーターも監督も。
後半開始早々から心配していた事が現実となる。明らかにギアチェンジをした北朝鮮の
チェックに日本の選手が慌てている様が上から手に取るように分かる。「慌てるな!」
思わず声が出る。相手がそう来る事は分かっていただろうに、何を慌てているんだ。見
ているとイライラする。案の定DFが混乱している間に決定的なシュートを喰らう。川
口が神懸かりの反応でボールを弾いたが、明らかに日本は動揺していた。ボールへの寄
せが前半よりも5メートル以上高い位置で行われる。セカンドボールはことごとく北朝
鮮の選手が取るようになった。これはヤバイ!・・・ボランチのチェックが甘くなり、
北朝鮮選手が一気に前に走る。左に空いている選手が3人いる。流れるようなダイレク
トパスが最後の選手に渡った時は日本のDFは誰もいなかった。
鮮やかなシュートが川口の手をすり抜けた。同点だ・・・・頭をかかえた。ピッチでは
北朝鮮の選手が折り重なるように喜びを表している。何てこった。こんな事になっちま
うなんて・・・スタジアム全体が脱力したような状態になった。誰もが予想していなか
った試合展開になってしまった。こうなると日本は弱い。北朝鮮選手はこの1点がまる
で足かせを取ったかのように前に来る圧力が強くなった。日本は後手後手に回っている
。小笠原も消える時間が多くなった。サントスも守備に回るともろい。
ジーコはここで、高原と中村を送り込んだ。果たして二人は機能するのか?この二人で
どう局面を打開しようというのか・・。しかし、中村の投入は間違いなく試合の流れを
変えた。中村の圧倒的なボール保持技術で日本の選手に余裕が生まれた。そのパスは確
実にボールを相手ゴールに近づけ、危険な匂いを発してきた。今までにない得点の予感
という奴だ。北朝鮮選手も敏感にそれを感じ取ったようで、あれだけ前に出ていた足が
止まってしまった。日本はここから怒濤の攻めに入った。攻めるサントスは強い。何度
も危険なアーリークロスが敵ゴール前に迫る。高原にピンポイントで会わせたクロスは
最高だった。あとは決めるだけだった。
しかし、残り時間が少なくなってきた。ジーコはここで大黒を投入する。大黒にとって
代表初出場が後のない最終予選本番になった。とにかく、どんな形でもいいから点を取
って欲しい。がんばれ大黒! ピッチでは相変わらず中村中心にボールが動く。小笠原
も鋭い動きが復活してきた。それでもゴールをこじ開けるには至らない。ジリジリと時
間が過ぎていく。45分を過ぎ、ロスタイムに入った。ロスタイムは3分・・・ああ、
もうこれは同点だな、と覚悟をした。簡単には勝てないもんだな、などと自分への反省
も含めて諦めた時だった。
小笠原のクロスをキーパーが何を間違えたか目の前にパンチングミス。そこにいたのは
福西。福西はシュートともパスともつかない中途半端なキックをしたが、そこに居たの
が大黒だった。センターからのボールを逆のゴールに反転しながらシュート!ボールは
キーパーの腕の下をすり抜けてゴールに転がり込んだ。勝ち越しだぁ〜〜〜〜!!
大黒おおおおおお!!良くやった!!スタジアム総立ち。両腕を上空に突き上げ、歓喜
の狂騒状態だ。何て事だ、ロスタイムに、勝ち越しだ。すぐにレフリーの手が上がり、
試合終了のホイッスルが鳴った。勝った・・・本当に勝った。劇的なロスタイム弾に全
員が弾けている。
素晴らしい勝利。ジーコは何て運が強いんだ。このまま運だけでもいいからドイツに連
れて行ってくれ。
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