※※ 森林インストラクターへの道 ※※ 38


玉原高原インストラクト実習



2001. 10. 21


10月21日(日)玉原高原にてインストラクト実習を行った。参加者は22名でそ
のうち森林インストラクターが6名。大森先生、神座先生を中心にして各インストラ
クターが一般参加者を何人かずつ引率するというスタイルを取った。玉原高原はブナ
の紅葉が盛りで、カエデやコシアブラなどの紅葉・黄葉も見事なものだった。   

私は2名を引率して樹木の名前や性質などを解説していた。さっそく分からない樹木
に出合って塚本インストラクターに助けを求める。塚本さんは図鑑を5冊ほど持参し
ていて、さっそく調べてくれた。黄色い大きな葉を垂れるように付けていたその木は
ヒロハツリバナと分かりまずは一安心。                    

解説というのは難しい。その木の名前を知っているだけでは何も話が出来ない。その
木がなぜそこに生えているのか、周辺との関わりをどう作っているのか、これからど
うなるのか、など様々な事象を理解できなくては解説など出来はしない。はなはだ心
許ないインストラクターだが、ここは一つ一つが勉強だと開き直る。       

山登りの道も快適で黄葉が見事だ。コシアブラやブナ、トチノキが多い。林床にはク
ロモジの黄色が鮮やかだ。太いブナには例外なく熊の爪痕が付いている。山の入り口
には「親子熊が出ていますので注意して下さい」という立て看板が立っていたことを
思いだした。熊にとっては絶好の食事場なのだろう。でも、今年のブナは結実してい
ない。落ちているブナの実はほとんど昨年のものだと思われる。熊にとっては厳しい
秋になっているのかもしれない。                       

山からキノコ採りの人が大きな竹籠をぶら下げて降りてきた。中を見せてもらうと、
ムキタケ、ナラタケ、ナメコ、クリタケなどがどっさりと入っている。そこから俄然
キノコ目になってしまった。解説もそこそこに倒木に駆け寄り裏側を覗くような行動
が出てしまう。我ながら、こんなことでは森林インストラクターは失格だと思う。 

素晴らしいブナ林はブナが見事だったが他の植生に乏しく、ついつい倒木に目が行っ
てしまう。登山道の途中にブナの巨木やミズメの巨木、シナノキの巨木が立っていて
沼田町の巨木百選の標識が立っていた。どれも素晴らしい巨木で、抱きついて巨木の
力を分けてもらうことも忘れなかった。                    

とあるブナの立ち枯れの上部にナメコを発見!これを見逃すことが出来ず、吉田さん
と二人で必死に登って採ろうとしたのだが残念ながら届かなかった。こんな二人にあ
きれたのか、先生はどんどん先に行ってしまい取り残されてしまった。ますます森林
インストラクター失格の烙印をおされたようだ。                

頂上手前で昼食。ブナの気持ちいい林の中で腰を下ろしておにぎりを食べる。いろい
ろな話が出るのは林業教室の時と同じ。図鑑の品評会になって、どの図鑑が良いかと
いう話になる。いつもながら皆さんの勉強熱心さには頭が下がる。それにくらべてキ
ノコに目の色を変えてしまう我が身を反省した。                

ところが藪から降りてきた大森先生がそっと教えてくれた。「黒沢さん、あの藪の奥
の倒木に白いものが・・・ね」その声を聞いた途端脱兎の勢いで山を駆け上がった私
の目に入ったものは、真っ白にブナハリタケを付けた倒木だった。振り返ってみんな
に叫ぶ「ブナハリだあ〜〜〜!!」さあ、みんなもワラワラと駆け登ってくる。写真
を撮る人、そっと採って袋に入れる人、料理の解説をする人、藪の中が騒然としてい
た。ここまでにわずかのムキタケとナメコしか入っていなかった袋には真っ白いブナ
ハリタケがずっしりと加わった。さあ、今夜のおかずは確保したぞ〜〜。     

尾根を歩くようになって植生が変わり、随所に様々な樹木が顔を出すようになってき
た。ここは勉強になった。高木層はブナ、トチノキ、ウダイカンバ、ハンノキ、カエ
デ。低木層はツリバナ、カエデ、アスナロ、イヌガヤ、ミヤマシキミ、ヒメユズリハ
、イボタノキ、ツゲ・・と種類も増えてきた。そのうち湿原にさしかかるとその風景
も一変した。気持ちの良い広々とした湿原が広がり開放感でいっぱいになる。   

湿原に渡した橋の下に深い淵があった。そっとのぞき込んだらイワナが泳いでいた。
頭の大きなイワナで、餌の少ないこと、この淵でずっと生きているのだということが
分かった。湿原の木道を歩くとすぐに終点になる。ここまでじっくり植生を観察して
朝9時から3時まで歩いていたことになる。あっという間のハイキングだった。イン
ストラクト実習などと最初は力んでいたが、まだまだ力及ばず途中からすっかりハイ
キングになってしまった。反省、反省。