※※ 森林インストラクターへの道 ※※ 42
西木村での事故報告書
2002. 10. 15
10月12日(土)秋田県仙北郡西木村かたまえ山森林公園にて西木村主催の「交流間
伐会」が開催され、瀬音の森からは首都圏及び東北圏から22名が参加した。この間伐
作業中に瀬音の森会員から事故による負傷者を出してしまったことは、今後の活動を左
右する重大な事件と考えなければならない。ここに、事故の顛末と処理、その後の経過
、今後の作業に対しての反省事項を確認しておきたい。
事故の時間:午後2時ころ
事故の場所:かたまえ山森林公園内のコナラ林斜面
事故の状況:炭用のコナラを間伐し、斜面で玉切り、その材を下の林道に運ぶ作業中に
最後の丸太(コナラ1メートル径20センチ)を受け渡す際に丸太が回転
し勢いよくTさんの顔面にぶつかった。Tさんはその場に昏倒、しばらく
意識を失った。ヘルメットをかぶっていたが、丸太はヘルメットの下の額
に直接ぶつかった。
負傷の状況:顔面向かって右と中央の額が大きく腫れ上がった。薄く血がにじんでいる
ように見えたが出血はしていなかった。向かって右の鼻から細く鼻血が出
ていた。後方に昏倒し意識を失っていたが、声をかけるとすぐに回復し、
仰向け、のちに横向きに横たわってもらった。
処置の内容:大きな出血がないので、しばらくそのまま横になってもらい、話しかけな
がら意識が正常かどうか、自分で判断出来る状態かどうかを確認した。痛
い所はないか、目に異常はないか、手は動くか、息苦しくないかなど。
水筒の水でタオルを濡らし、顔の鼻血をふき取る。その後に出血がないか
どうか様子を見た。特に外傷はないので持参の救急用品は使わなかった。
湿布薬をという声もあったが、この段階で傷を隠すよりも病院に早く運ぶ
ことを優先しようと判断した。
しばらく横向きに膝枕して顔に当たる日差しを遮断し、Tさんに話しかけ
動ける事を確認し、二人で両脇を確保して斜面を慎重に下り車に運んだ。
そのまま村役場の担当者が病院に搬送した。
その後の状況:西木村には大きな病院が無いため、角館町の公立総合病院に搬送。搬送
時間約1時間。付き添いは村役場の林業係長。
病院でレントゲン、CTスキャンを撮り、骨折が無いかどうかを調べる。顔
面の腫れを引かせる点滴を受ける。この段階で付き添いの係長から連絡が
入り、大事に至らなかった事が確認でき、一同一安心する。
検査は異常なかったのだが、両手のしびれがあるのでむち打ちの恐れあり
とのことで一晩入院することになった。
翌日の状況:間伐会参加者はバスで帰路につき、数名の会員が病院でTさんと面会する。
本人は至って元気で安心する。顔面の腫れが額から目の周辺に落ちてきて、
そこに大きな湿布をしていた。先生の話では首にダメージを受けているので
出来れば安静にして2〜3日入院したらどうかとのこと。
Tさんは出来れば地元に帰って病院で治療したいと言い、先生に認めてもら
い、退院する事になった。保険証を持っていなかったので入院保証金3万円
を退院時に支払った。荷物は宅配便で送り、体に最も負担のない移動方法は
電車と判断し、身ひとつで新幹線指定席で帰宅することとした。
事故の原因:丸太の運搬方法が間違っていた。
通常1メートルに玉切りした丸太をどう運搬するかはケースにより変わるが
今回は村の人が道に投げ下ろす方法を採っていて、その方法を皆が疑問に思
わず実行したことが事故の原因となった。事故のケースではその前の丸太ま
では問題なく受け渡せたのだが、最後の1本が不測の弾みで回転してしまい
、受け渡す作業の為下にいたTさんを直撃してしまった。
今後の対策:山の作業の基本である上下作業の禁止を徹底すること。丸太は回転するもの
と考え、ロープを使って引きずる等の運搬方法を徹底すること。午後、終了
間際の作業には特に安全配慮すること。など安全の基本を徹底する。
また、今回のように様々なグループとの共同作業の場合、地元の人のやり方
をそのまま真似る事の危険性をきちんと認識し、勇気を持って修正しなけれ
ばならないと痛感した。
保険の適用:西木村で加入していたレクレーション保険および瀬音の森で加入していた森
林ボランティア保険が適用される。手続きは10月15日に終了。
以上、事故について知る限りをまとめた。この事故は私の目の前で起きた。防げたはずの
事故であり、責任を痛感している。日頃「安全」を口にしながらこのような安直な作業を
修正出来なかったこと。自分でも「ちょっと危ないんじゃないか・・」と思いながら修正
出来なかった事実。森林インストラクターとして失格の烙印を押される出来事だった。
今後このような事が続くようであれば瀬音の森の活動は休止せざるを得ない。