宮崎に行く


猫さんと土筆さんのお墓参りに、宮崎へ行った。



11月初め、調べる事があって、瀬音の森会員名簿をパラパラと見ていたらふと目に止
まったページがあった。「会員番号68番:高橋一政」猫さんのページだった。その誕
生日の日付に目が吸い寄せられた。11月15日・・・              
猫さんと土筆さんが事故で亡くなってから、もう2年と2ヶ月が経ってしまった。8月
末に3回忌が行われたはずだが、いろいろな用事が重なって行くことが出来なかった。
宮崎に立派なお墓が出来た事は知っていたので、墓参りに行かなければと、カミさんと
話していた。そんな事が頭に残っていたのだろう。11月15日は土曜日だし、猫さん
に呼ばれたのかも知れないし、これは行くしかない。その手でそのままANAを検索し、
飛行機の搭乗券を手配してしまった。                      

11月15日宮崎空港に降り立つ。暑い。11月というのに半袖が欲しくなるような暑
さだ。空港から宮崎駅行きのバスに乗り、市内へと向かう。パーム椰子の並木が続き、
南国宮崎を印象づけてくれる。バスの車内には冷房がかけられ、暑さを和らげてくれて
いた。カミさんと顔を見合わせて、暑い暑いと言い合う。厚手の上着は完全に無用の長
物となっていた。ホテルは宮崎観光ホテルを予約してあるので、「たまゆらの湯」とい
うバス停で降りて歩く。午前中だったのでチェックインは出来ず、荷物だけ預かっても
らう。市内まで行くのが面倒くさかったので、ホテル2階の「みやちく」で宮崎牛ラン
チを食べる。鉄板焼のランチはとても美味しかった。               

宮崎観光ホテル二階の「みやちく」は宮崎牛専門店。 柔らかいだけでなく肉の味がしっかりしている。


コースの最後に出たパンのデザート。美味しかった。 大淀川河畔に建つ、宮崎観光ホテル。

休憩がてらのんびりと大淀川の河畔を歩く。様々な花が咲いていてじつに綺麗だった。
ハイビスカス、ブーゲンビリア、真っ赤な合歓の花、名も知らない花がいっぱい。天気
が良いので作業している人も暑そうだった。大通りに出たので、中心街に向かって歩く
。ここではフェニックスの手入れとライトアップの作業が行われていた。巨大なフェニ
ックスは高所作業車に乗って作業する。切り落とされた葉を持ってみたら、じつに重い
ものだった。こんな枯れ枝が落ちてきたら大ケガをするところだ。だからこそ定期的に
点検しなければならないのだろう。右手に大きなクスノキが並木になっている道がある
。この先が宮崎県庁。東国原知事人気で観光バスが列を作っているが、そちらには行か
ず、繁華街へと向かう。                            

ブーゲンビリアの花。南国なんだなあと実感する。 初めて見た、真っ赤な合歓(ネム)の花。


ハイビスカスの花も珍しい色だった。 フェニックスの手入れをしている。

一番街の喫茶店で休憩。落ち着いた喫茶店で、コーヒーが美味しかった。あちこちブラ
ブラして疲れたので、近くのカラオケで休憩がてら久しぶりのストレス発散をする。つ
き合ってくれたカミさんに感謝。                        
ホテルでは食事を頼んでいないので、夕飯の美味しそうな店を探して、街を散策する。
地頭鶏(じとっこ)の美味しそうな写真と黒板の文字に引かれて「じゅうじゅ」という
居酒屋に入る。突き出しも地鶏、頼んだのは地頭鶏の炭火焼き、宮崎牛テールシチュー
、大根と水菜のサラダ、キムチチャーハン。みんな美味しかった。大満足の夕食だった
。ここで高橋さん(猫さんのお父さん)から電話が入った。高橋さんは今日東京から戻
ってきたところで、明日のお墓参りの打ち合わせをした。             

地頭鶏(じとっこ)の炭火焼き。ジューシー。 8時間煮込んだ宮崎牛のテールシチュー。絶品。

降り出した雨の中をタクシーに乗ってホテルに帰ったのは9時ころだった。ちょうどテ
レビでサッカー天皇杯の結果を流していた。浦和レッズは四国丸亀で横浜マリノスと戦
っていた。結果は6−5のPK負け・・・あ〜〜あ そのまま不貞寝。啓太のバカヤロ

朝、日豊本線の電車が鉄橋を渡る音で目覚めた。 朝の大淀川ではボラか何かが跳ねていた。釣り人がいる。

16日朝9時、ホテルまで高橋さんが迎えに来てくれた。3人で高橋さんの自宅に向か
う。自宅はシーガイアに近い市内の閑静な住宅街にあった。自宅に到着すると奥さんが
出迎えてくれた。上がらせて頂き、まず仏壇にお線香を上げる。両手を合わせて、猫さ
んと土筆さんに来るのが遅れたことを詫びる。仏壇に添えられた二人の写真を見ていた
ら、涙が出てきた。カミさんと並んで、しばらく仏壇の前に座っていた。      

猫さんが1歳半で釣り竿を両手で持って釣りをしている。 ちゃんと自分の足で歩いて釣りをしている。驚いた。

居間に移り、お茶を頂きながらいろいろな話をした。子供時代の猫さんの写真を見せて
もらった。驚いたことに猫さんは1歳半で釣り竿を手に、釣りをしていた。お父さんは
「皆さんに、この写真だけは見せておきたかったんですよ・・・」と笑っていた。  
猫さんが作った船の模型。猫さんが作ったブロンズの塑像。猫さんが発掘した弥生時代
の土器。この土器は凄かった。専門家の鑑定で、本来なら博物館に展示されるべき土器
だという。これを中学生の猫さんが発掘したのだ。「家には家宝がある」というのが土
器について猫さんが言う時の口癖だったそうだ。今まで知らなかった猫さんがいっぱい
そこにいた。                                 

猫さんが作った船の模型。精巧なものだ。 猫さんが中学時代に作ったブロンズの塑像。


猫さんが発掘した弥生式土器。素晴らしい土器だ。 玄関の版画は、まるで猫さんを描いたかのよう。

高橋さんの教え子で有名な画家の絵があちこちに掛けられ、さながら画廊喫茶にでも居
るような気分になる、素晴らしい空間だった。いつまでも話していたかったが、今日の
目的はお墓参りなので、みんなで話を切り上げた。                

高橋さんの運転でお墓のある国富町を目指す。途中でお墓に供える生花を買う。高橋さ
んは国富町の出身で、本家のお墓がそこにあり、その一角に猫さん・土筆さんのお墓が
建てられた。宮崎市内から30分くらい西に走り、郊外の田園風景が落ち着いたたたず
まいを見せる国富町に到着。本家のお兄さんに挨拶し、すぐにお墓に向かう。    
西向きの高台にお墓があった。写真で見たとおり「還」という文字を掘った洋風の墓石
がそこにあった。ちょうどお墓に着いて「猫さん、来たよ・・」と、帽子を取ろうとし
たときに、帽子に上のセンダンの木から葉柄が落ちてきてコツンと当たった。シャイな
猫さんらしい、粋な挨拶。                           

猫さんと土筆さんのお墓。やっと来ることができた。 お墓の前に広がる景色。明るい南九州の風景。


お墓に花を供え、お線香をあげる。 傍らの墓碑には二人の名前が彫られている。


お墓に手を合わせるご両親。 お墓の前で二人で写真を撮ってもらった。

持参したお花を供え、お線香を上げる。両手を合わせ、ここでも二人に遅くなった事を
詫びた。今まで、みんなで飲んで話すと猫さんの話になり、小菅の山小屋でも猫さんが
いそうな気がしたし、伊藤の海には今でも猫さんがいるような気がしていた。しかし、
この場所に来て、初めて「ああ、猫さんと土筆さんはここにいるんだ・・・」と実感す
ることが出来た。やはり、来て良かった。                    
土筆さんのご両親がここを訪れた時、この見晴らしの良さと静かな佇まいに納得された
という話を伺った。いつも一緒だった二人の名前が墓碑に並んで刻まれている。宮崎の
明るい日射しに、真新しい墓石がキラキラと輝いていた。             

お墓の前で4人並んで。 おじさんの犬。名前は「イチロー」。

その後、高橋さんのご厚意であちこち連れて行ってもらった。照葉樹林を保護し、世界
自然遺産登録を目指す綾町の「照葉大吊橋」。高さ142メートル、長さ250メート
ルという怖い吊り橋を歩いて渡る。この高さで揺れる吊り橋はスリル満点だった。高所
恐怖症の人は途中で動けなくなってしまうらしい。目の前に広がる照葉樹林が素晴らし
かった。                                   

歩く吊り橋では世界一高いと言われている。 高いところが平気な二人。お父さんは入り口で待機。


空から見下ろす照葉樹林。さすがにずっと見ていると怖い。 足元が透けている場所があり、ちょっと(だいぶ)怖い。

次に向かったのが「酒泉の杜」。ここは雲海酒造が作ったテーマパーク。様々な酒の試
飲と購買が出来る。また、高価なガラス工芸品の工房や陶器の工房がある。奥には「綾
温泉・照葉の湯」がある。お酒好きにはたまらない場所。私も焼酎5本ワイン1本を買
って、発送してもらった。                           

酒泉の杜で珍しい焼酎を買う。 有名な鰻料理店「入船」。休み時間ぎりぎりだった。

車は綾町から西都原(さいとばる)に向かって山の中の道を走る。西都原の町はずれに
鰻料理で有名な「入船」で昼食。店内にある有名人の色紙の多さに驚かされた。「こん
な田舎に、これだけの人が来るのが分からないんですよ。他にも鰻の美味しいお店はあ
るんですけどねえ・・・」と高橋さんも不思議がる。鰻はしっかりした味で、本当に美
味しかった。ご汁が添えられていたのが嬉しかった。               

鰻はしっかりした味で美味しかった。ご汁も嬉しかった。 ずっと運転して頂き、ありがとうございました。

食事のあと、いよいよ西都原に入る。ここは無数の古墳がそこかしこに残された考古学
上、希有の場所だ。古墳博物館は大理石の立派なもので、展示は映像を駆使した最新式
のものだった。個人的には考古学を映像展示するのは嫌いなので、高橋さんとも、そん
な事を話しながら見て回った。たった一つの矢じりや土器からどれだけ想像力を膨らま
せられるかが楽しみなのだが、ここではそれを望めない。             
外に出ると古墳の丘に日が沈むところだった。印象的な夕日に照らされて、鬼の窟(い
わや)の中を見学する。ここは素晴らしかった。実物の迫力、圧倒される岩の大きさ。
古代人が苦闘した跡がありありと見える岩屋。どんな人が葬られ、どんな人が葬ったの
か・・・。そして、この塚を作った大勢の古代人達。夕日に染まる古墳を見ていると、
イメージがどんどん膨らんでいく。念願の西都原を見ることが出来た。       

博物館の展望台で並んでパチリ。 古墳の丘に沈む夕日。古代人が出てきそうな瞬間。


鬼の窟(いわや)と呼ばれる最大規模の横穴式墳墓に入る。 いったいどんな人物が埋葬されていたのだろうか・・・?

宮崎市に帰る道すがら、お二人の漫才のような会話で楽しませてもらった。どこにでも
二人で出かけるという、旅行の楽しい珍道中ぶりには大笑いしてしまった。一端自宅に
戻り、車を替えて今度は奥さんの運転で市内を目指す。中央通りの「善助」という店で
夕食となった。魚料理が美味しいと評判の店だそうで、お刺身も、アラ煮も、サイコロ
ステーキも美味しかった。焼酎を飲みながらいろいろな話で盛り上がった。本当に楽し
い時間を過ごさせて頂いた。食事を終え、ホテルまで送ってもらい、部屋に戻ったのは
11時を回っていた。この日もそのままグッスリ。                

種類も鮮度も抜群のお刺身。醤油はちょっと甘い専用のもの。 サイコロステーキは揚げニンニクがたっぷりかかって。


アラ煮はしっかりした味付け。 絵の話、釣りの話、旅の話、いつまでも尽きなかった。

17日朝、たまゆらの湯で夕べの酒を洗い流し、ホテルのパン屋で買ったパンと牛乳で
朝食。9時にチェックアウトし、ラウンジで紅茶を飲んでいた。今日も高橋さんの案内
で宮崎の観光地を回ることになっている。今日は昨日と逆に海に行くことになっていた
。約束の9時半に高橋さん到着。挨拶して車に乗り込む。車は観光バスが連なる宮崎県
庁を横目に見て、一路青島を目指す。ワシントンパーム椰子の列が延々と郊外に向かっ
て伸びる。暑い日射しの下、そんな道を走っていると、本当に南国なんだなあ・・・と
実感する。車の中ではプロ野球キャンプの話題が多い。宮崎には多くのプロ球団がキャ
ンプにやってくる。これが宮崎の人の楽しみでもあり、観光の目玉にもなっている。そ
れだけの施設が宮崎にはあるということなのだから、それも素晴らしいことだ。   

青島周辺の砂浜がどんどん減っている。 通称「鬼の洗濯板」は満潮で少ししか見えなかった。

宮崎→青島→日南というのは昔の新婚旅行のメッカだったが、今は昔の面影はない。青
島は古い観光地というよりもさびれていく観光地の典型的な例のよう。打開策はないよ
うだ。個人的には青島の自然林や亜熱帯植物園は楽しかった。ビロウジュ、アコウ、シ
マナンヨウスギ、トックリワタノキ、ユスノキなど東京では見られない木が沢山あって
興味深かった。                                

狛犬は何だかシーサー風。勇ましいけど愛嬌がある。 神木になっていたアコウの木。


島の中心部はビロウジュの原生林になっている。 これもご神木「ユスノキ」。珍しい木だ。


ブーゲンビリアの花が見事だった。 杉と言うよりモミのような「シマナンヨウスギ」。

車は更に南の鵜戸(うと)神宮を目指して海岸線を走る。途中の岩礁地帯は二人の釣り
場だそうで、あちこちに車を停めては、波の状況と釣り人の様子を観察した。奥さんの
方が釣りに夢中だそうで、その会話も専門的なので驚いた。今は湾内でアオリイカ、ア
ジ、メジナ。岩礁帯でチヌ、メジナ、時にはイシダイが出るそうだ。コッパグロと呼ば
れるメジナの稚魚はいっぱい釣れすぎて困るようだという。釣った魚は全部料理して食
べたり、近所に配ったりする。自分の職業を「漁業です」と言ったりする。     

道の駅「フェニックス」目の前に広がる海の絶景。 3人並んでパチリ。この後、磯釣りの実況中継。

道の駅「フェニックス」でひと休み。景勝地なので写真を撮る人が多い中、我々は双眼
鏡で岩場の釣り人をウオッチング。ちょうどチヌが釣れたのを実況中継しながら大騒ぎ
していた。イルカがよく見えるというイルカ岬でも、釣り人ウオッチング。漁港の横を
走るときは奥さんが「あそこは外側がいいのよね〜」などと解説。すっかり釣りガイド
ドライブになっていた。あまりに濃い話題に釣りがしたくなって困った。次回は是非、
釣り竿持参で来たいものだ。目的地の鵜戸(うと)神宮に着いても、目の前の岩場を眺
めながら「あそこは良いんだよね」「そうよね〜でも、今日は荒れてるわね・・」など
という会話が続いていた。                           

神武天皇の父君を祀ってある鵜戸神宮。入り口の大鳥居。 岩にうち寄せる波の音が響いてくる。この辺は釣り禁止。


巫女さんの緋色袴がまぶしい。 まるで岸壁に貼り付いているような社殿に驚く。

鵜戸神宮は神武天皇の父君を祀ってある神社で、皇族の参拝も多い、由緒ある神宮だ。
本殿が岸壁の岩窟内に建てられており、安産や育児、縁結びに霊験あらたかだという。
中でも「運玉」という百円で5個買える素焼きの玉を目の前の岩の穴に投げ入れられる
と願いがかなうという遊びが人気だ。買って、やってみたが、左手で投げるため、5個
とも外した。う〜〜ん、願いは叶わないのか・・。カミさんもダメだった。ダメ夫婦。
ここでは献木が興味深かった。シャリンバイ、ガジュマル、アコウ、ハマヒサカキ、ト
ベラ、モクタチバナ、ゾウノキ・・・聞いたこともない木の名前ばかりだ。さすが日南
、亜熱帯の国だ。                               

本殿は岩窟の中に建てられている。 運玉で運試し。中央の岩の窪地に入れば願いが叶う。

参拝を終え、車は青島に戻って「ひで丸」という漁師料理の店で昼食。お刺身やアラ煮
の定食が美味しかった。そして、車は宮崎空港へと向かう。二日間、車で観光案内をし
て頂いてしまい、恐縮するばかりだ。空港で何度も別れを惜しむ。本当に、本当にあり
がとうございました。充実した三日間の宮崎行きは、4時20分の飛行機で終わった。

青島の漁師料理「ひで丸」で昼食。 美味しかったひで丸定食。ご飯をおかわりしてしまった。


宮崎空港で別れを惜しむ。 この車で二日間、お世話になりました。



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