伊豆半島一周


さよならレガシィ第一弾。伊豆半島一周の旅



 1月13日(金)14日(土)の2日間、伊豆半島を一周の旅をしてきた。2002年
から乗っている愛車レガシィが23万キロ走行を過ぎ、そろそろ電気系統を中心に機能し
なくなる箇所が増えて来た。そろそろ買い換えかと考えたら急に愛おしくなってしまい、
惜別のドライブ旅をしようとカミさんに話した。                  
 15年間乗ってきた車だから特別の思い入れがある。ただ単に新しい車に乗り換えるの
では申し訳なくて、お別れドライブをしようという思いつきだった。場所は一泊で伊豆半
島を一周しようというもの。惜別ドライブの第一弾ということになる。        

 朝8時に家を出て、関越道に乗る。鶴ヶ島で圏央道に乗り換え東名高速へと走る。海老
名ジャンクションから小田原厚木道路に入る。この道路では通るたびに楽しみにしている
事がある。趣味が悪いのだが、この有料道路は異常に覆面パトカーが多いのだ。だから毎
回80キロ以上は絶対に出さない。そして、必ず覆面に捕まっている車がある。今回も猛
スピードで追い越していったワゴン車が捕まった。                 
 これを見るのが楽しい。何故かというと、自分も捕まったからだ。90キロで道路に入
った直後に捕まった。こんな理不尽な事はないと怒ったのだが後の祭り。かなり高額な罰
金を払う羽目になった。以来、ここでは絶対に80キロ以上出さない。そして捕まってい
る車には「わが同士よ!」と声をかけてあい哀れむ。                

猫さんを偲んで川奈にやってきた。 あの時もこの松の木があった。呆然と海を眺めていた。

 真鶴ブルーラインから熱海ビーチラインと走り、第一の目的地川奈漁港に到着した。こ
こは友人夫妻が不慮の事故で亡くなった追悼の場所。岬突端に走り、車から降りて黙祷す
る。ジャンパーを来ているが強風で体があおられる。晴れていて透き通った海がきれいだ
った。あれは2006年の9月の事だった。もう10年も前の事になる。今でもあの時の
事を思い出すと胸が痛む。この場所に来て遺品を預かり帰ろうとしたのだが、車がパンク
したり、道路が通行止めになったり、猫さんが引き留めているとしか思えなかった。そん
な記憶が鮮やかによみがえる。10年経っても何も変わらない。           

この岬の向こう側で悲劇が起きた。 あの日以来、ここに来るとつらい思い出がよみがえる。

 ちょうど昼時だったので川奈の岬を見渡せる店に入って昼食にした。海女小屋与望亭と
いう店だったのだが、店内がおそろしく寒かった。一押しの刺身定食と海鮮丼を頼んだの
だが、どうも店選びに失敗したようだった。刺身の味がよくない。ぱさつくし冷たすぎて
味がわからない。カミさんと顔を見合わせて「まあ、観光客向けの店だから…」と言い訳
する。自分達も観光客なので仕方ないのだが、こういう店も多いのだろうと思う。見てく
れは良いのだが、味の方が少し問題だった。反省。                 

海女小屋与望亭という岬が見える店で昼食にする。 見栄えの良い海鮮丼に期待が膨らんだが……。


刺身定食も新鮮そうに見えたのだが……。 岬を見ながらの昼食は少し残念な味だった。

 車は東海岸沿いを南下する。海上の伊豆大島が大きく見える。海の色が紺碧で美しい。
旅の駅ぐらんぱるぽーとでひと休み。風が強く寒いので外を歩くことも出来ない。早々に
車に戻り、ドライブを続ける。                          
 熱川、片瀬、稲取と温泉街を通過する。伊豆の温泉街は海を借景にして旅情を醸し出す
のがいい。風が強いのに海には白波が立っていない。不思議に思ったのだが、考えてみれ
ば当然で、強いのは西風。東海岸はちょうど風裏になるので波は穏やかだ。釣り船がゆっ
たりと停泊しているのを見てもそれがよくわかる。                 

 河津周辺にはピンクの河津桜が咲いていた。もうそんな季節なんだと伊豆の温かさを実
感するのだが、今日は寒い。日が傾き、海の色が濃くなる時間に下田に着いた。道の駅下
田みなとでひと休み。下田バーガーの店でコーヒーを飲んで休む。それにしても風が強く
て寒いので歩き回ることが出来ない。                       

下田バーガーショップで休憩中。バーガーが旨そうだった。 黒船ホテルは下田港が目の前に見えるホテルだった。

 今日は下田に宿を取っている。町に近い黒船ホテルだ。道の駅すぐ近くだったのですぐ
到着してチェックインした。古いホテルだが、ロビーは華やかで下田港を間近に見えるの
が良かった。観光船と海上保安庁の巡視船が並んで停泊している。椰子の街路樹が風で大
きく揺れている。                                

ロビーでくつろくカミさん。 黒船ホテルのロビーは本当に豪華だった。


部屋から見える景色。すばらしいオーシャンビューだった。 海上保安庁の巡視船が停泊している。船は夜通し灯りが点いていた。

 部屋は9階のオーシャンビュー。眼下に下田港が見える絶景だ。夕陽がまぶしくて景色
を見ていられない。部屋で大相撲を見ながらひと休みする。             
 夕食は市内の割烹「いず松陰」を予約していた。5時半に宿を出て市内へと歩く。真っ
暗な道は向かい風の強風で寒くて大変だった。夜景を眺める余裕もなく、やっとの思いで
いず松陰に到着。店内の暖かさがひときわ嬉しかった。この店を選んだのはキンメの煮付
けを食べたかったから。昔、下田で「どんぐり」という店で食べたキンメの煮付けが忘れ
られず、今回も探したのだが店がみつからなかった。ネットで調べて、この店が最もキン
メを食べるのにふさわしいと決めて予約した次第。                 
 店主にどんぐりの事を聞いたら、代替わりして今は焼き鳥屋さんになっているとのこと
だった。消息がわかっただけでも良かった。                    

ホテルからいず松陰への道。風が強くて寒かった。 下田の町を橋の上から眺める。なかなかの風景だが寒かった。

 夕飯は特大のキンメ煮付け定食刺身付き、あらかぶ(カサゴ)の刺身、ハマグリの酒蒸
し、ホタテ貝の茶碗蒸し、ワタリガニの味噌汁などを堪能した。客が少なく、頼んだ料理
がすぐに出てきて、刺身が旨い。ハマグリの酒蒸しも最高。キンメの煮付けは骨一本一本
までしっかりとしゃぶり尽くして完食。まさに大満足の夕食だった。         
 最近こういうパターンが多い。夕食を宿で食べずに外で食べるようになった。宿の夕食
は食べきれなくなってきたのと、食べたくないものも多くなってきたからだ。好きなもの
を頼んで食べる方がお互いの為にいいと気付いた。宿代も安くなる。         
 夕食後に寒風の中を歩くのはいやだったので、タクシーを呼んでもらってホテルに帰っ
た。運転手さんに「今日は十六夜で月がきれいですよ」と教えてもらった。      

あらかぶ(カサゴ)の刺身。新鮮な刺身は本当に旨い。 キンメの煮付け定食は豪華な刺身付きだった。


カミさんも大満足だった。 味噌汁はワタリガニ入りをお店がサービスしてくれた。


食べ応え満点の特大キンメ。骨までしゃぶって完食した。 こうして旨い料理と旨い酒を堪能するのが旅の醍醐味。

 宿に帰り、温泉に向かう。時間がずれたせいか広い温泉を貸し切り状態。思わず歌が出
てしまい4曲ほど歌う。誰もいないからできる事で楽しかった。風呂上がりは無料のマッ
サージ機で腰と背中をもみほぐす。                        
 部屋に帰ったらテレビで「風の谷のナウシカ」をやっていた。ビールを飲みながら見入
ってしまった。何度見てもいいものはいい。カミさんは先に寝てしまった。      

 14日、朝風呂はまたしても貸し切り状態。朝日が差し込んでまぶしい。ゆっくり浸か
って上がり、朝食の部屋に向かう。この小部屋が寒かった。料理の関係で暖房を控えてい
るのだろうが、冬の朝にこの寒さでは料理もすぐに冷めてしまい旨くない。      
 案の定、ご飯がすぐ冷たくなるし、焼きたての干物もすぐに冷たくなってしまった。こ
の料理と味をみて「やっぱり夕飯を宿で食べなくて正解だったかも…」などとカミさんと
うなずき合う。食べ終わって体が冷える朝食ではよくない。             

部屋から見た朝日。カーテンを開けたらいきなり飛び込んできた。 西伊豆の海。海岸は強風に荒れていた。

 十時までゆっくりやすんでチェックアウト。車は西伊豆に向かって走り出す。石廊崎に
向かって走る道すがら、見える海が昨日とまったく違っていた。西風が強くなり、沖には
無数の白波が立っている。岩壁に打ち寄せる白波が怖いくらいに激しい。きれいな浜辺が
あったので立ち寄ったのだが、一歩車の外に出た瞬間体が持って行かれそうになった。数
枚の写真を撮る時間だけで体が冷え切った。とにかく寒い。             
 海沿いの道を松崎に向かって走る。断崖絶壁のドライブインはさすがに閉まっていた。
この駐車場から見下ろす海がすさまじく奇麗だった。強風と白波、紺碧の海に無数の白波
、白と青のコントラストが凄かった。ここでも体が飛ばされそうになった。      

天気はいいのだが、とにかく風が強かった。 そろそろお別れになるレガシィ。頑張ってくれている。

 松崎までは一度来た事があったが、そこまでの道は未知だった。こんな絶景があったと
は知らなかった。車もほとんど走っておらず、ゆっくりと走りながら海の景色を楽しむこ
とが出来た。松崎の手前、岬の突端で遠く海上の富士山が見えた。頂上は雲に隠れていた
が、長い裾野を優雅に広げた姿が見えた時は「おお、富士山だ!」と叫んでいた。富士山
はいい。                                    

西伊豆の海は青く白波がよく似合う。強風は体を飛ばしそうだった。 遠く、海上の富士山が見えた。上の雲さえなければ完璧だった。

 松崎からは勝手知ったる道で、次の休憩地の土肥温泉を目指し海沿いの道を走る。途中
の海が素晴らしい。車の中は暖かで、外の風はわからない。見るだけなら荒れた白波の海
はきれいだ。西伊豆の海岸沿いを富士山見ながらドライブ。見え隠れする富士山に一喜一
憂しながらうねうねとした道を走る。道すがら白い彫刻がたくさん見えて、興味深かった
がじっくり見られなかったので、どんな彫刻だったかわからない。ドライバーの気を運転
からそらすだけのような気もするし、少し意味不明の白い彫刻群だった。       

土肥温泉の中程にある土肥金山跡地テーマパーク。 ここが坑道入り口。興味津々で入って行った。

 土肥温泉に到着。町の中央に土肥金山の大テーマパークがある。さっそく入園券を購入
する。砂金掘りも興味あったのでそれも購入。いよいよ金山の中に入る。秩父鉱山でいろ
いろ昔の鉱山の勉強をしたので中に入るのが本当に楽しみだった。          
 中は人が立って歩けるように作ってある。実際はたぬき掘りというもっと狭い坑道だっ
たはずだが、さすがにそれでは観光にならない。岩盤が露出していて、ある地点から急に
暖かくなり、湿気を感じるようになった。坑内から温泉が湧いているようだ。     
 最初に坑内の池が現れた。地下の水を汲み上げる実演マネキンが設置されている。竹の
棒を使っているが現実的ではない。狭い場所だからロープを使う方法が本当だろう。  
 ライトが当たっている岩盤に金の鉱脈があるとのこと。じっくり見たら鉱脈に沿って緑
のコケが生えている。これが「岩間千本苔」か…と山中豊彦さんの話を思い出す。   

金山の神様が祀られている。 坑内に溜まった水を汲み上げるマネキン。


銭神様は温泉水だった。水に触ると温かい。 鉱脈に生えた岩間千本苔と思われる緑色の物体。

 その後は坑道の作り方、送風の仕方、お風呂の施設、坑道内運搬の方法などなど、様々
なシーンをマネキンが演じていて、昔の鉱山作業の様子がよくわかった。リアルではある
が、想像力をかき立てる要素がなく、実感の湧くものではなかった。マネキンより絵の方
が伝えられることは多い。わかりやすいようでいてリアルさのないマネキンは弊害の方が
多いのかもしれない。                              

坑道に柱を組み、天井を作る坑夫。 金鉱石を掘り、集める坑夫。女の人も働いていた。


唐箕を使って坑内に送風し、空気を新鮮に保つ。 狭い坑道は当時の雰囲気を伝える。


坑内で掘る坑夫。 観光用の道だが昔の岩盤がそのまま残っていて雰囲気を味わえる。


掘った鉱石を運ぶ坑夫。手に持っているのは油の灯り。 鉱石を掘る坑夫。


鉱石を掘る坑夫。右に鉱脈があり、緑色の苔が生えている。 外にもマネキン。坑道の木を切って運んでいる。

 寒い坑道を出て資料館に入る。暖かい館内に入ってやっと人心地ついた。外は本当に寒
かった。資料館で目に付いたのが人形模型で作られた金の精製工程。これは本当に興味深
かった。最初から最後までじっくり見た。人形の表情や服装、動作、道具の形にいたるま
でじつにリアルに再現されていて、これは本当に貴重な資料だと思った。ここまで再現し
てあれば資料価値も一級品だ。臼の使い方、灰吹き法など文字でしか知らなかった世界が
目の前に展開されていて、見ていて時間を忘れた。                 

鉱石を臼で細かく粉砕しているところ。 ねこながしの風景。


鉛を混ぜて金を取り出す場面。 灰吹き法で金を製錬している。

 昔の道具も面白かったし、坑夫取立免状の本物などの展示も面白かった。純金の金塊が
二つ展示してあって触れる。一億五千万のものと十七億のものがあったのだが、小さい金
塊の重さにびっくりした。千両箱の重さにもびっくり、これは担いで走るなんて絶対に出
来ない重さだ。時代劇の嘘がこんなところで見つかった。金は想像以上に重い。    

鉱石を砕く石臼。 坑夫取立免状。友子に加盟しないと鉱石掘りは出来なかった。

 いよいよ砂金採りのコーナーへ行く。温水のプールに砂が敷き詰められ、そこで皿を使
って砂金を探す。係のおねえさんにやり方を教わって30分間のトライアル。腕まくりし
て必死に砂金を探す。見つかると素直にうれしくて夢中になった。結局12個の砂金を見
つけたのだが、受付で見ると多い人は30とか50とか見つけているようで驚いた。  
 カミさんは「3個しか見つからなかった…」とぼやいている。まあしかし、夢中になっ
たし、楽しかった。砂金は実物ではなくて小さい金箔状のもの。一定量を均等に撒いてい
るものらしい。それでも砂の中に輝く金を見つけると嬉しい。金に魅了される人々の気持
ちが少しわかったような気がした。                        

砂金採りができる温水プール。砂が敷き詰められている。 盆を使って砂金を探す。たくさんの人が楽しんでいる。


昔の高山の様子が写真で展示されていた。 珍しい写真がたくさん展示されていた。

 土肥温泉から内陸に入り、修善寺道路、伊豆中央道へと走る。そのまま新東名へと抜け
帰路に着く。途中、富士山がきれいに見える場所が何カ所かあった。富士山が見えると気
分がいいし疲れもとれる。新東名は走りやすく楽な道だった。スピードを出さずにゆっく
り走り、海老名から圏央道に入る。鶴ヶ島までいつもの道。鶴ヶ島から関越で所沢へ。 
 家に帰ったのは7時半だった。疲れたけど面白い旅だった。レガシィは元気に最後まで
走ってくれた。まだまだ普通に走れる車だ。ありがたいことだ。           


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