紀伊半島一周・海と芦雪を見る


那智勝浦から海沿いの道を走り、串本・田辺・みなべ町まで走った。



 かつうら御苑の朝風呂は最高だった。天気が良く、まぶしい光の下で露天風呂を楽しむ
ことが出来た。朝食はバイキング方式。多勢の団体客と一緒だったが、さほど気にならず
好みの食事を楽しむ事が出来た。夕飯を食べていないので適度にお腹が空いていて食事も
おいしかった。                                 

滝見の湯で朝風呂。快適な朝だった。 つい調子に乗って自分の足をパチリ。


きれいな朝の海。快晴の朝は気持ちいい。 快適な部屋だった。

 今日は那智勝浦から海沿いの道をひたすら走る。太地(たいじ)町のくじらモニュメン
トの前で記念写真を撮る。海沿いのレガシィも撮る。本当によく走ってくれている。くじ
ら博物館の前には巨大な捕鯨船が展示されており、その巨大さに驚かされた。     
 クジラ博物館にはちょうど近所の保育園の園児が先生に引率されて入るところだった。
入館料の1300円に驚いて、時間もなかったので入館を止めた。今日は無量寺で時間を使
いたかったので、ここはパス。灯台の元まで走って道に迷い、そのまま戻り、海沿いの道
を南下する。                                  

クジラのモニュメントは太地町の入り口。 海とレガシィ。


南紀の海は美しい。 レガシィもここまで来るとは思ってなかっただろう。


捕鯨船が陸に上がっている。その巨大さにビックリ。 南紀の道でレガシィ。


クジラ博物館を見たが入らなかった。 橋杭岩の奇岩。なぜかあまり心を惹かれない。

 串本橋杭岩道の駅でトイレ休憩。岩が橋の杭のように立ち並んでいる景勝地だが、見て
も特に感じるものはなかった。道の駅でも特にこれといったものはなかった。     
 串本に着き、ループ橋を通って大島に渡る。大島で見たかったものはトルコ軍艦遭難慰
霊碑だった。以前に、房総の御宿でメキシコ船遭難慰霊碑を見た時に、ここ大島に同じも
のがあると知った。明治23年トルコ皇帝の特使を乗せた軍艦エルトゥールル号が横浜から
の帰国途中遭難。乗組員587人の将兵が犠牲になった。慰霊碑は海を背に屹立する塔で、
厳粛な雰囲気で立っている。丁寧に参拝し、記念の写真を撮る。トルコが親日国家なのは
この事故に対応した日本人の心に対してのものに他ならない。            

串本から大島に渡るループ橋。 トルコ軍艦遭難慰霊塔。厳粛な気持ちで参拝する。


大島で海が見えたのはここだけだった。 風が気持ち良かった。

 車は潮岬を目指す。潮岬灯台の手前に広い芝生の広場があり、大きな観光タワーが建っ
ていた。潮岬灯台は駐車場代が500円と高く、灯台まで遠く歩かなければならないので行
くのを止めた。まあ、特に見たい場所でもない。                  

潮岬の広い芝生。気持ちいいが風が強くて寒かった。 三階建ての観光タワー。入場せず。

 潮岬周回道路から少し中に入る。秋山さんが紹介してくれた「紅葉屋本舗」を探すため
だ。ナビが消えているので勘で走る。「この辺だろうか…」と細いカーブを曲がったとこ
ろに小さな看板があった。「まさか? ここ?…」と車を降りるが普通の民家が建ってい
るだけ。恐る恐る門の表札を見ると「羊羹をご希望の方はインターホンを押して下さい」
と書いてある。本当にここでいいんだろうか…とインターホンを鳴らす。中からエプロン
姿の女性が現れ、にっこり笑って「羊羹ですか?」と聞くので無言でうなずくと中に招き
入れてくれた。                                 
 部屋に案内されてまたびっくり。洋室の部屋は豪華な調度だが、店ではない。普通の家
の応接間だった。「今サンプルをお出ししますので少々お待ち下さい」とのこと。カミさ
んと顔を見合わせて神妙に待つ。「お待たせしました」と言いながらお茶と一緒に出され
たのは色とりどり五種類の羊羹を薄く切ったもの。黄色は柚子、ピンク色は桜、抹茶、塩
、小豆の五種類。きれいな羊羹にびっくりし、食べてそのおいしさにビックリした。  
 出て来たご主人が製法を教えてくれた。本当に手間がかかる作り方をしている羊羹だっ
た。迷わず五種類の注文をした。ご主人の話ではナビを使うとまずここにはたどり着けな
いとのこと。そのくらいわかりにくい場所だった。運良くたどり着き一個400円の割引き
をしてもらった。                                

本当にここでいいのか? と思うが看板がある。 部屋に迎え入れられたが、普通の家の居間だった。


部屋のしつらえや調度品に持主の品格が表れている。 出された五種類の羊羹。どれも絶品だった。


そのおいしさにカミさんも大満足。 商品の説明をしてくれたご主人と写真を撮る。

 潮岬周回道路から串本市内に戻り、今日の目的地「無量寺」へ向かう。しかし、ここも
道がわからなかった。昔ながらの港町で、道路は車一台走るのがやっという細さ。車とす
れ違うのもやっとという道ばかり。おまけに案内表示がなにもない。ついに行き止まりの
道になってしまい、車を降りて歩いていた人に聞く。そのお母さんは笑いながら「ここは
いつも無量寺に行く車が迷うところなんですよ」とのこと。やはりナビではたどり着けな
い場所のようだ。                                
 聞いた通りに走り、運良く対向車もなく無量寺につくことが出来た。1300円を払って応
挙芦雪館に入る。案内VTRを見て、収蔵してある作品を見る。円山応挙、長沢芦雪、伊藤
若冲など名だたる絵師の直筆画が展示されている。じっくり見て感動した。しかし、ここ
で見たいのはただひとつ、長沢芦雪の虎図だった。                 

無量寺のレプリカ虎図。本物は収蔵庫の中に。 無量寺のパンフレットの虎図。これを見に来た。

 無量寺の本堂を係の人が案内してくれた。この本堂にある作品はレプリカで、どのよう
に虎図が配置されていたかを知るために見させてくれたもの。本物は本堂横の収蔵庫に安
置されている。ついにその本物を見る。厚い収蔵庫のドアを開けると静かな空気が流れて
くる。本物はこうして温度や湿度や光から守っている。薄暗い内部に目が慣れて、見渡す
と広い庫内にたくさんの絵が展示されている。長沢芦雪の虎図はその中のひとつだった。
巨大な絵の前に立つと時間が止まった。筆の勢い、墨の濃淡、刷毛の使い方……もう目が
点になってしまった。本物の迫力と大きさに圧倒されてしまって声も出ない。     
 原画でなければわからない素晴らしさを堪能した。芦雪の虎図を観るのは今回の目的の
一つだった。じっくりと見ることが出来て本当に来て良かった。長沢芦雪、京都から16日
かけて来て、4ヶ月滞在中に膨大な数の襖絵を残した応挙の一番弟子。45歳という若さで
世を去った天才絵師。その技をこの目に焼き付けることできた濃密な時間だった。やはり
絵は本物を見なければわからない。                        

無量寺の本堂。ここでは部屋に虎図が展示されていた。 本物はこの中。厳重に保管されている。もちろん撮影禁止。


寒い収蔵庫から出て日射しに暖まる。 すばらしい絵を見て最高に満たされた時間だった。

 無量寺で時間を使ってしまったので遅くなってしまった。白浜に取る予定だった宿が満
室だったり定休日だったりした為、みなべ町まで走らなければならなくなったので急ぐ。
 途中の道の駅すさみでトイレ休憩。地元名物の「いももち」300円を買う。柔らかくて
おいしいいももちだった。これも紀州ならではの食べ物だろう。           

南紀名物と書いてあった「いももち」を買う。 柔らかく甘すぎず、とてもおいしかった。

 今日の宿も夕食はなしで予約したので、途中の田辺で食事をすることにした。駅前の宝
来寿司がガイドに案内されていたのでそこを目指す。何度か迷いながらやっと見つけて店
に入って地元ならではの料理を聞くと「ひとはめ寿司」と「あがら丼」という答え。ひと
はめとは、ひろめという海藻のこと。ワカメより幅広で柔らかい海藻で作る巻き寿司との
こと。あがらとは私達という意味で、店の自慢丼とのこと。本日はふっくら太刀魚丼との
ことで、その二つを注文する。                          
 ひとはめ寿司は芯に〆鯖が入っていて、柔らかくかみ切れた。噛んでいるうちに海藻と
ご飯と鯖が一体になる巻き寿司だった。太刀魚はふっくらと柔らかくアナゴ丼のような味
だった。                                    
 こうしてその場所ならではの料理を食べるのが旅の醍醐味で、旅館の夕飯がいくら豪華
でも代えがたい。                                

これが「ひとはめ」。 ひとはめ寿司定食。ワカメより噛み応えがあり旨かった。


ふっくら太刀魚丼。アナゴ丼のような感じだった。 柔らかさにカミさんも大満足。


店の外観。ひとはめ寿司の看板が大きい。 見知らぬ町は、駐車場まで歩くのも楽しい。

 田辺から約一時間。みなべ町はずれの海沿いに建つ大きなホテル、紀州南部ロイヤルホ
テルが今日の宿だ。大きなホテルで大きな駐車場には大きな観光バスがたくさん停まって
いる。ロビーに入ると飛び交う中国語。そう、このホテルは中国人団体客が多く使うホテ
ルだった。                                   

巨大なホテルだった。観光バスが一杯だった。 中国語が飛び交うロビー。


部屋から見る海。 部屋は明るく清潔だった。気持ちいい部屋だった。

 団体客の多い宿を使うコツは団体客の動きをつかんでぶつからないようにすること。温
泉も夕食時に入ればガラガラで快適だった。広い温泉を独占する贅沢さ。じっくりと一日
の疲れを取る。部屋はオーシャンビューの和室。海の景色も今日で見納め。明日はいよい
よ高野山を目指す。                               


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