紀伊半島一周・いざ高野山へ


海に別れを告げ、みなべ町から龍神温泉を経て高野山へと走った。



 紀州南部ロイヤルホテルの朝風呂は快適だった。朝食は明るい部屋でバイキング方式。
料理も多彩で席の通路もゆったりしている快適な空間だった。ゆっくりと食事をしてコー
ヒーを飲みゆっくりとチェックアウトした。高野山への道の情報を聞くが詳しい事はわか
らなかった。                                  

ホテルの部屋から眺める海。海の風景はこれで見納め。 ホテルの裏側は巨大な駐車場が広がっていた。

 ホテルを出てみなべ町SSでガソリンを入れる。スタンドのお兄さんに高野山への道の状
況を聞くが、詳しい事はわからないが大丈夫だろうととのこと。東京から来たというとビ
ックリしていた。「気を付けて行って下さい」と嬉しい言葉をかけてもらった。    
 みなべ町は梅の里で有名。いたるところに梅林がある。驚いた事には険しい山の頂上付
近まで開墾して梅の木が植えてあること。秩父で至るところに杉林があるのに似ている。
なぜそんな所にまで梅の木を植えるのか、ちょっと驚く景色だった。梅林の多い山道をぐ
んぐんと北上する。                               

道ばたのお地蔵さん。 山の上まで耕され、梅林になっている。これがずっと続いた。


龍神温泉を目指して山道をドライブ。 龍神ドライブインでトイレ休憩。酒を買う。

 龍神温泉まで約50キロ。川沿いの単調な道を淡々と走る。川は鮎が釣れるらしく、あち
こちにおとり鮎の看板が出ている。走りながらチラチラと見える川は、釣趣を誘うきれい
な川だった。カーブが多いのでツルツルタイヤを気遣ってスピードを落とす。途中の龍神
ドライブインでトイレ休憩。お酒のセットをお土産に買う。             
 龍神温泉の元湯に到着。龍神温泉は日本三大美人の湯と言われている温泉で、今回の旅
で何とか入りたかった温泉だ。公衆浴場は700円で日本三大美肌の湯を楽しむことができ
る。弱アルカリのツルツルした泉質で、肌がきれいになるのもわかる気がした。    
 今回初めて知ったこと。日本三大美人の湯は龍神温泉と島根の湯の川温泉と群馬の川中
温泉だという事。知らなかった……                        
 風呂の中で知り合った和歌山の人が楽しかった。湯の峰温泉の湯が最高で、その湯を加
えてご飯を炊くとおしいご飯になるのだと言っていた。おととい湯の峰温泉に泊まったと
いうと喜んで話が盛り上がった。龍神温泉は秋の紅葉が一番だと言っていた。この人が龍
神スカイラインはチェーン規制しているよと心配してくれたのだが「一応スタッドレスだ
し、ここから戻るわけにもしかないし…」と出発した。その人も笑って「気を付けて」と
送ってくれた。                                 

龍神温泉の立ち寄り湯に到着した。 美人の湯らしい看板が壁に付いていた。


温泉から見下ろした川の景色。 脱衣所は大きく明るい。


のれんのかかった入り口。 風呂場から見た川の景色。


待合の休憩室。 風呂から出たカミさん。美人の湯の効果はいかに?


龍神温泉の町並み。 川沿いにこんな形で展開する温泉街だった。


龍神温泉道の駅でスカイラインの情報を聞くがわからなかった。 さあ、レガシィ、正念場だぞ。

 龍神温泉から高野・龍神スカイラインに入る。高野山まで50キロのスカイラインだ。入
り口にチェーン規制の看板が出ていたので少しためらったが「まあツルツルだけどスタッ
ドレスだし…」自分に言い訳をして突入する。                   
 しかし、この先がすごかった。高度を増すにしたがって道路脇の雪が増え、そのうち路
面まで真っ白な銀世界になってしまった。ツルツルのタイヤで走るのは危険この上ない事
だが、戻る事も出来ないのでそのまま慎重に走る。レガシィもよく走ってくれた。こんな
タイヤで雪道を走ることになるなんて考えてもいなかった。怖かった……。雪景色の中に
ごまさんスカイタワーという道の駅が現れたのだが、あまりに寒々しい景色に停まること
すらためらわれた。下ったり登ったりをくり返し、雪道にも慣れてきた。道は徐々に高度
を下げ、雪の量が減ってきて、最後は消えた。                   

高度を上げるに従って雪が増え、最後は雪世界になってしまった。 タイヤはツルツル、慎重に雪道を走る。がんばレガシィ!


スカイラインの案内看板。回りは真っ白な雪景色だけ。 道路がこんな状態。とにかく慎重に走った。

 何とか雪道をやり過ごし、山を下ったところにいきなり高野町が現れた。お堂や伽藍・
宿坊が軒を連ねる町だ。金剛峯寺の前の駐車場に車を止めてひと息つく。外は雪が舞って
いて、車載の温度計は1度を差している。風もあって雪が横なぐりに降っている。   
 あこがれの高野山。目の前に金剛峯寺が建っている。ひと休みして厚着をしてから参拝
に向かう。お寺さんの参拝はとにかく寒い。雪が降る日などはもう目も当てられない。暖
かい部屋でお茶のサービスを頂いた時は生き返る心地がした。            
 金剛峯寺で驚いたのは一度に2000人もの食事を作るという台所を見た時だった。その
設備の大きさや広さなど、実際に見なければわからない台所だった。あの巨大な寺院の中
で巨大な窯でご飯を2000人分炊きあげる光景を想像するとじつに興味深い。     

金剛峯寺の門前駐車場に車を停めた。 金剛峯寺への入り口。


カミさんも記念写真。 本堂に入る。


途中にあったお堂も巨大だった。 本堂の中に展示してあった杉の巨木。2メートル以上ある。


お寺の参拝はとにかく寒い。雪の日は尚更だ。 石庭が美しい。


広間で頂いた温かいお茶がおいしかった。 たくさんの襖絵は撮影禁止。仕方なく庭の写真を撮る。


廊下はとにかく寒い。 ここは天皇が休憩する間だとのこと。一段高い。


建物の屋根は全部檜皮葺。すばらしい。 一番興味を引かれたのはお勝手。


お寺の中に炊事場があるという事に驚いた。 一回で二千人分のご飯を炊いたという。


どれだけの人が関わっていたのかと考える。 食器棚も巨大だった。


天井は煙抜きが空いていた。すごい。 この窯で二千人のご飯を炊いた。


ご朱印をいただくカミさん。 金剛峯寺から外へ出る。

 金剛峯寺から壇上伽藍へと向かう。根本大塔の本尊・大日如来像の前に立つ。金色に輝
く大日如来のお顔が柔和に見下ろしている。ここで言葉を失う。正座したまま動けない。
障子の外から差す光の強弱で大日如来の表情が変わる。1200年前にこの像を造る技術と
情熱の根本は何なのか……密教という信仰の力をまざまざと見せつけられた。巨大なお堂
と巨大な仏像と極楽浄土を再現したという堂内。なんという力か、なんという安心感か。
 壇上伽藍には様々なお堂が併設されていて見て回るのが楽しかった。特に御影堂(みえ
どう)はその清楚な佇まいが美しく京都のお寺さんのようで印象的だった。中門を再建し
た時に伐り倒した杉の切り株を見る。寺領範囲内にこれだけの巨木があればそれを使うこ
ともあるのだろうが、境内の杉を切りたおしたことに驚かされた。ゆっくりと回って見た
かったが雪が降る中ではそうもいかず、受付でご朱印を頂いて車に戻った。      

車で壇上伽藍へと移動する。 中門が鮮やかだ。


中門の外側、右の仁王様。 左の仁王様。


正面に金堂が建っている。 根本大塔は朱色が鮮やか。人の大きさで大塔がいかに大きいかわかる。


とにかく巨大だ。内部は天上界を実在化させた曼荼羅となっている。 壇上伽藍の御影堂(みえどう)は瀟洒で美しい。


金堂の参拝は時間がなかったのでパス。 壇上伽藍の准眠堂。


壇上伽藍の孔雀堂。 壇上伽藍の西塔。


中門を再建した時に伐ったという杉の切り株。 境内に杉の巨木がズラリ。


巨大な杉の写真。 遠くに根本大塔が美しい。


壇上伽藍の山王院。 巨大な杉の前で記念写真。


壇上伽藍の荒川経蔵。 静かな境内を歩く。


中門内側、右の仁王様。 左の仁王様。

 車で大門を見てその大きさに驚き、女人堂へ回る。女人堂は女人禁制の高野山の結界に
あるお堂で、女性の参拝者は中に入らずここで祈りを捧げたという場所だ。今では考えら
れない女人禁制の場所を感じ、町そのものが聖地なのだと知る。           
 女人禁制だった場所のその中に今は郵便局があり、幼稚園があり、喫茶店があり、スナ
ックがある。いつからかお大師様の考えも変わったようで、懐の深い宗教なのだと実感し
た。                                      

高野山の結界。昔はここから女人禁制だった。 結界の外に建つ女人堂。女性はここで祈った。


女人堂の内部。女人禁制時代の様々な話が残されている。 高野山入り口の石碑。


細かい雪が横なぐりに降っている。とにかく寒い。 ご朱印をいただいて女人堂を出るカミさん。

 今日は宿坊に泊まる、それも天然温泉付きの宿坊福智院だ。迎えてくれたお坊さんの話
も楽しく、これから予定を聞く。温泉、夕食、写経、就寝、朝6時からのの勤行、朝食、チ
ェックアウトは9時とのこと。宿坊に泊まるのは初めてなので楽しみだ。本日の利用者のう
ち三分の二が外国の方だとのこと。高野山は世界中から人が集まる場所のようだ。   
 少し寒い宿坊内で写真を撮り温泉に向かう。温泉は少し狭かったがゆっくり暖まった。
外国人が多く、タオルで前を隠すしぐさもそれぞれで興味深かった。         
 夕食は部屋食で精進料理が出された。途中でご住職の法話があり、勧められて明日の勤
行で焚く護摩とお札を購入する。金1万円也で心願成就・家内安全の祈願をお願いする。
 夕食時にお酒も大丈夫ということで日本酒を頂く。酒を飲むと写経は出来ないとのこと
で、写経は断念する。まあ、私の震える手では写経は無理なので良かったかもしれない。

今日泊まる宿坊「福智院」。唯一天然温泉がある宿坊。 宿坊の泊まる部屋。鯉の掛け軸、禅の教えだそうな。


障子を開けたら裏庭がこうなっていた。 宿泊棟の廊下。静かに歩くよう指導される。


ロビーは宿坊の中心場所。 庭が美しい。


こちらは別の庭。ツツジで構成されている。 温泉の看板。男風呂は二階にある。


温泉の入り口。 南無大師遍昭金剛の額。


廊下を歩くとギシギシと鳴る。これも宿坊ならでは。 大広間は団体客用。風神雷神が見守る。


夕食は部屋で精進料理をいただく。 これは湯豆腐。


お麩と豆腐の料理。 ダメな男は写経よりも風呂上がりのビールを選ぶ。


炊き合わせ。温かい料理が嬉しい。 天ぷらもおいしかった。


酒まで飲んでしまう。 せっかく宿坊に泊まっているのに、だめ男ぶりを発揮して苦笑い。

 外国人が多いという宿で、Wihiも完備。インターネットで吉野の宿の予約をする。吉野
は温泉が少なく、宿の手配に苦労した。旅をしながら次の宿を手配するのに、インターネ
ットは不可欠で、パソコンを持参したが、スマホならもっと楽だったように思う。こんな
旅が出来るのもインターネットのお陰だ。ありがたい事だと思う。          
 明日の朝は6時から勤行。とにかく寒いから注意してくださいとご住職に言われた。宿
坊に泊まることがこれほど快適だとは思わなかった。まあ、明日の朝次第という事になる
のだろうが…。                                 


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