半跏思惟像


法隆寺・中宮寺・藤ノ木古墳・葛城山へ行く。



 奈良二日目。今日は斑鳩の里に車で向かった。目的地は法隆寺。奈良市内を走るのも何
度目かになるので慣れて来たが、この町を走るのは本当に面白い。一見すると普通の地方
都市で、普通のドライブなのだが、よく考えて見ると、この道を大昔に聖徳太子や聖武天
皇が馬に乗って移動していたわけで、驚くほど濃密な歴史が景色の下に眠っているという
ことだ。徐々に斑鳩が近づき、そんな思いが地名を見ながら濃くなって行く。     

今朝もいい天気だ。ホテルの窓から見える畝傍山。 法隆寺の門前に到着した。誰もいない・・・

 法隆寺には宿から一時間弱で到着した。駐車場に車を停めて料金を払って寺に向かう。
まだ朝が早かったので人影もまばらな法隆寺。時間をかけ境内をゆっくりと散策した。 

まだ朝早いので誰もいない。それにしても寒い。 これが南大門。仁王様を見に行く。

 法隆寺は鎮魂の寺とも言われている。1400年続く木造建築の寺院は世界最古だ。南
大門から入り、土塀を鑑賞しながら中門に向かう。土塀の続く景色が素晴らしい。   

黒仁王様 口を結んだ吽形像(うんぎょうぞう)。 赤仁王様 口を開いた阿形像(あぎょうぞう)。

 西院伽藍に入り、五重塔と金堂を見ていたら係の人が話しかけて来た。ガイドではなく
警備の人だったが、金堂の成り立ちや素材の説明をしてくれた。金堂の扉がヒノキ一枚板
で出来ていて、縦格子窓が一枚板のくり抜きだと教えてもらう。なんと巨大なヒノキが材
料であることか。中門のエンタシス柱は巨大なヒノキの縦四分の1で一本の柱になってい
るとのこと。知らなかった。飛鳥時代に道具もないのに、どうやってこの巨大なヒノキを
加工したのだろうか? どうやってこの巨大な建物を組み上げたのだろうか? 係りの人
と三人で「不思議だねえ・・」と首をかしげた。                  

法隆寺のシンボル。五重の塔と金堂。 回廊も美しい。


仁王様が木彫ではなく塑像(土作り)と聞いて見直す。 塑像でこんなに素晴らしい力感が出るかと驚く。


エンタシスの柱に戻り、記念写真を撮る。 この一本が四分の一の太さ・・元がどれだけ巨大なヒノキか。


庭の紅葉がまるで盆栽のように美しい。 千四百年の歴史を歩く。回廊の美しさ。


この大きな塔が飛鳥時代に造られた。一体どうやって?? 金堂に使われたヒノキの巨大さ・・実際に見ると言葉を失う。


回廊から金堂を見上げるカミさん。 「 柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺 」の石碑。

 国宝の建物、国宝の仏像、国宝の仏具、おびただしい宝物の数々が法隆寺にある。大宝
蔵院にはそれらがずらりと並んでいる。最初に並んでいる観音像6体に目を奪われた。そ
の表情のにこやかなこと肢体のしなやかなこと。有名な夢違観音像よりも素晴らしかった
。写真に撮れないのが残念だ。                          
 百済観音を参拝中に女子高校生の一団に飲み込まれた。クラスごとに案内人が付いてい
て説明するのだが、案内人の説明がそれぞれ違うのにびっくりした。ほとんどの女生徒が
そのまま通り過ぎるのだが、何人かの女生徒が観音像に手を合わせていた。信仰心もある
のだと、なんだか少し救われた気がした。                     
 大宝蔵院の最後に百万塔が展示されていた。恵美押勝の乱の犠牲者を弔うために造られ
たもので轆轤で相輪まで精巧に造られたもの。木地師の祖先たちの技の素晴らしさを目に
焼き付けた。                                  

手水舎の小さな屋根まで桧皮(ひわだ)葺き。 いざ、夢殿へ。

 大宝蔵院から夢殿に向かう。夢殿は聖徳太子を供養するためのお堂で、中心の厨子には
太子等身の秘仏「救世観音像」が安置されている。八角形のお堂は外から覗ける範囲しか
見ることは出来ず、回廊を回って手を合わせるだけだった。             

夢殿は回廊を回って手を合わせるだけ。 夢殿前で記念写真を撮る。

 夢殿を参拝し、本日の目的地中宮寺に向かう。ここにあるのが表題の半跏思惟像。大き
な鉄筋コンクリート造りの本堂に安置されている中宮寺の御本尊だ。正式には如意輪観世
音菩薩という。半跏思惟というのは片膝を組み、考える像という意味。微笑みの美しさは
東洋のモナリザにも例えられている。人間の救いをいかにせんと思惟されている清純な気
品をたたえている。素晴らしい仏像だ。                      
 最前列に座り両手を合わせてじっと像を見つめる。幸せな時間が過ぎていく。漆黒の像
の美しさは何に例えれば良いかわからない。ただただ像を見つめていた。       

法隆寺の片隅にひっそりと佇む中宮寺。 この門を入ると半跏思惟像に会える。


池の中に建つ本堂はコンクリート造り。 庭の紅葉が最後の彩りを見せていた。


本堂に上がり、半跏思惟像に手を合わせる。 これが半跏思惟像。東洋の奇跡と呼ばれる美しい横顔。


夢殿側から見る法隆寺の門。 門から見える法隆寺。これでお別れ。

 二時近くなって遅い昼食。法隆寺参道にある平相で柿の葉すしランチを食べる。寒い日
だったので煮麺(にゅうめん)が美味しかった。                  

法隆寺門前の「平宗」で柿の葉寿司ランチを注文する。 寒かったのでカミさんは温かいにゅうめんを注文した。


これは鴨ロースの柿の葉寿司。旨かった。 コスモスの向こうにあるのが藤ノ木古墳。

 昼食後は近くの藤ノ木古墳に向かった。ところが見ようと思った斑鳩文化財センターが
休館日でがっかり。藤ノ木古墳は駐車場がないので離れた広場に車を止めて見に行く。巨
大な円墳は年に一度だけ内部の公開日があるそうだが、当然ながらこの日は扉に鍵がかか
っていて中には入れなかった。                          

コスモスが綺麗だった藤ノ木古墳。 中には入れなかったが、ここが古墳の入り口。

 時間が余ったので葛城山に向かう。役行者が生まれて育ったと言われている山を見に行
った。ロープウェイに乗って山頂に行っても市内はガスで見えないとわかったので乗らな
かった。役行者がここで修行をして成長し、その存在が修験道を産み育て、日本の山岳信
仰の底流を作った。本来の日本の自然信仰はここがスタートだったと考えると感慨深い山
だ。今は普通の山にしか見えないが、奈良時代でも同じ形であったであろう山陰を目に焼
き付けた。                                   

 寒かった法隆寺でどうやら風邪をひいてしまったようで、困ったことにくしゃみと鼻水
が止まらない。途中のドラッグストアで風邪薬を買って宿に帰って来た。さてさて、明日
はどうなることやら。                              


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