猫さんと行くはずたっだ釣り


秋田県西木町。昨年亡くなった猫さんと行くはずだった川で釣りをした。




再会の森についた。 ブナやカエデが大きく育っていた。


「猫さん土筆さんのコブシ」大きく育てと手を合わせた。 東京から走ってきた我が相棒。

6月22日(金)秋田県仙北市西木町の某川の畔に車を停めた。ここは昨年亡くなった
猫ミュウさんと一緒に釣りに来るはずだった川だ。ここに来る前に小波内の「再会の森
」で猫さん土筆さんの追悼に植樹したコブシを見てきた。両手を合わせ、猫さんと土筆
さんに声をかけようとしたが、何だかモゴモゴと口ごもっただけで終わった。時間が感
情を平らにしてくれるというのは本当なのだと自分を納得させた。あの時、あの事故さ
えなかったら猫さんと一緒にこの川でヤマメやイワナを釣っていたはずだ。今日は猫さ
んのお父さんから遺品として頂戴したウエーダーを履いてこの川に入る。      

時間は2時半。この川は脱渓点が無く、川どおしに戻ることになるので、この時間では
あまり奥まで行けない。午前中まで雨が降っていたようで水位が上がっているのが分か
る。草が10センチくらいの水中で揺れているのでかなり増水してるようだ。この川で
は、こんな感じの方が魚の出がいい。ワクワクしながらテンカラ竿に仕掛けをセットす
る。毛鉤はいつものようにエルクヘアカディス。まあ、これしか無いので仕方ない。増
水した河畔に立ち、上流を眺める。時間は少ないが良い釣りが出来そうだ。     

川を遡行する。雨上がりで増水していた。 今期初ヤマメ。久しぶりの感触に心臓がドキドキ。

最初のライズは外した。長距離ドライブの後で、車を降りたばかりの足元がどうもおぼ
つかない。体のバランスが悪く、何だかフラフラしている。釣りをする体になっていな
いようだ。しばらく小さなポイントはパスして上流へと遡行する。そして投じた毛鉤に
バシャっと水しぶきが上がり、合わせた手元にガンガンと手応えが伝わってきた。そう
だ、この感触だ。急速に釣りの感覚が蘇ってくる。さほど大きくないヤマメだったが、
この1尾を釣ったことで、俄然釣りモードへ変身することができた。        

二尾目のヤマメが釣れた。 今度は岩魚が釣れた。

増水しているが遡行はたやすい。振り込みしにくいところもパスして安全に釣りをする
。左の木陰が怪しいので上流に振り込んで流す。ピックアップしたらガクンと竿が重く
なった。「おお・・きたぁ・・」あわてて竿を上げるとなかなかいいサイズの岩魚が釣
れた。狙い通りで会心の釣り。岸の草がまだ濡れていて全身が濡れてきた。雨が降った
ばかりというのがよく分かる。開けた深瀬でヤマメが出た。毛鉤を追って悠然と水面に
上がり、ためらいもなく毛鉤をくわえた。もちろん釣らせてもらった。いい感じで魚が
釣れる。短い距離だが魚が濃い。                        

この淵の流心で岩魚が出た。 元気良く毛鉤をくわえた岩魚。

日陰のトチの葉はまだ濡れていて緑が瑞々しい。ハンノキの葉が風に揺れてキラキラ輝
いている。川の上にあるクモの糸が日光を反射してキラリと光る。釣りをするには邪魔
だが、先行者がいないことを知らせてくれる目印でもある。テンカラの毛鉤がクモの糸
を何本も引き連れて宙を舞う。さすがにこんな時は休んでクモの糸を丁寧に取り除く。
瀬の落ち込みで岩魚が釣れた。前回はここでヤマメだったのだが、今回は岩魚だった。
魚の反応がいい。思い切り毛鉤に来てくれるので合わせやすい。今回はまだバラシがな
い。ハリス切れも無いので嬉しい。                       

魚は瀬からも出るようになった。 浅い瀬で釣れた岩魚。

そろそろ帰り道が心配になる時間だった。川どおしに帰らなければならないので、早め
に上がるつもりだった。ここぞという深瀬に毛鉤を振ったが反応無し。その上流の小さ
な石の影に毛鉤を流した。いきなり大きなライズ!合わせると竿がグンっとしなる。こ
れは大きそうだ。慎重に寄せようとするが魚が走る。思い切って引き抜いた。河原に上
がったのは25センチのヤマメ。会心の釣りだった。良形のヤマメを釣ったので上がる
ことにした。最後が大きい魚だと気分が良い。竿をたたみ、仕掛けを巻き取る。短い時
間だったが良い釣りが出来た。                         

良い型のヤマメが釣れた。 再会を約してリリース。元気良く流れに帰っていった。

猫さんと一緒だったらもっと上流まで行っただろう。そしてもっともっと沢山のヤマメ
や岩魚を釣っただろう。今日は一緒に釣る気持ちでやろうなどと考えていたのだが、実
際に釣り始めたら、その事は忘れてしまった。途中、鳥の声を聞いた時「ああ猫さんが
一緒だったら何の鳥だか教えてもらえるのになあ・・・」と思った。思えばあれは猫さ
んの呼びかけだったのかもしれない。猫さんのウエーダーはブカブカで右足に穴が空い
ているようだった。そういえば小菅でウエーダーを脱いだ猫さんが濡れた靴下を履き替
えていたことを思い出した。あの時のウエーダーだったんだ。猫さんと来るはずだった
川での釣りが終わった。                            

最後に川を振りかえる。 猫さんのウエーダーを履いて会心の釣りにニッコリ。



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