久しぶりの釣り


那須の大川で記録更新の大山女魚に出会えた。



久しぶりに那須の大川へ釣りに行った。先週末妙高の山菜勉強会の往復で、加藤さんと
釣りの話をしているうちに「そういえば、しばらく釣りに行っていないなあ・・」と気
がついた。この日は取材の予定だったのだが、キャンセルになったのでポッカリ空いて
いた。「よし、久しぶりに1日釣りをしてみよう」と準備をしたのだが、久しぶりなの
で、何が足りないのかもよく分からない。とりあえず朝5時に起きたので那須へと向か
って車を走らせた。天気は快晴、風強し。ドライブには最高だが、釣りには最悪。  

西那須野塩原インターで降り、一路川を目指す。途中のコンビニで釣り券とおにぎりを
買う。何度も通った川だからこういう手順も懐かしい。しかし、風が強い。テンカラで
は釣りにならないかも知れない。不安は川の入り口でピークになる。深山湖は湖面に大
きな白波が立ち、まるで海のような有り様。おまけに林道終点には5台の車が停まって
いた。先行者5人以上・・・平日だというのに・・・この時間だから山菜採りではない
だろうし・・・。あ〜あ、という気分だったが、今日はここで釣りをしたかったので車
を隅に停め身支度を始めた。                          

大川の入り口から見える川面。 遮断機の降りている橋から川に入る。

スカリに弁当と缶ビール、釣り道具を詰め込んで腰には竹籠を付けて歩き出す。足元以
外はどう見ても山菜採りだ。先週、妙高で食べたシオデの味が忘れられなくて、あわよ
くばシオデに巡り会えないものかと林道の両側を凝視しながら上流へと歩く。およそ1
時間の歩きなのだが、ついにシオデは見つけられなかった。そのかわりタケノコが沢山
出ていたので、竹藪にもぐり込んで腰カゴ一杯に採りまくった。先行者がいるのだから
釣りを急いでも仕方ない。                           

入渓点に到着し、河原で足ごしらえをして、缶ビールを飲む。久しぶりに大川に再会出
来たことを祝って、乾杯! 大汗をかいた後のビールはじつに旨い。        

1時間歩いて入渓点に到着。河原で記念のビールを飲む。 ここに来るまでに採っていたタケノコ。

午前8時、いよいよ3年ぶりの大川での釣りが始まった。河原を歩くのも久しぶりなの
でフラフラして足元がおぼつかない。風が強いのでラインを振り込んでも戻ってきてし
まうような有り様。風が止むまで待って振り込むという、我慢の釣りになった。いつも
釣れる場所でも魚の反応はなかった。これだけ木の枝が揺れていると魚も隠れてしまっ
ているのだろう。今日は釣れないかも知れないなあ・・と思っていたら、思わぬ所で岩
魚が出た。細いスジのような流れの落ち際でピックアップ寸前にガツンと来たのを合わ
せて待望の初岩魚。20センチの綺麗な岩魚だった。これでボウズはまぬがれた。  

緑が輝くような美しさ。でもこんな日は釣れない。 いきなり釣れた岩魚。いやあ、久しぶりの感触。

両岸には笹藪が続き、その根元にはタケノコが沢山出ている。釣りそっちのけでタケノ
コを採る。しかし、タケノコが採られた跡が歴然としていて、ここでも先行者がいるの
かと暗澹たる気分になる。しばらく上流に進むと、その先行者に追いついた。10頭く
らいの猿の群だった。どうやら笹藪のタケノコを食べながら上流へと進んでいるようだ
った。刺激しないように林道に上がり、高巻きをする。猿も遠くからじっとこちらを見
ている。「邪魔はしないよ」と小さく声をかけ、上流へと歩を進める。       

タケノコ採りの先行者はサルだった。 10頭くらいの群れが河原を歩いていた。

橋を二つやり過ごしてから再入渓。河原で重くなったカゴからタケノコを出して皮をむ
く。本当は家に帰ってからむいた方がいいのだが、嵩張って重いので、休憩がてら皮を
むいて小さくする。20センチのタケノコでも食べられる部分は5センチくらいだった
りするので、皮を取り除くと「何だこんなものか」というくらい小さくなる。ちょうど
昼どきだったので、皮をむきながらおにぎりを食べる。河原で過ごす時間がじつに懐か
しい。青空に白い雲が流れ、目の前の青い淵には白泡がゆったりと流れ、緑の木漏れ日
がキラキラと水面に反射する。久しぶりの充実感に顔がゆるむ。          

タケノコの皮もむき終わり、小さくなったタケノコをスカリに背負い、いよいよ午後の
釣りの始まり。相変わらず風が強い。淵の上流に細い流れがあった。何気なくそこに毛
鉤を振り込んだ。何も起こらずピックアップしようとした時だった。ガツンという手応
えに思わず合わせるとデカイ魚が付いていて、暴れている。「これはデカイ!」返しの
ない鉤を使っているので、右手を必死になって上げる。「外れるな!」祈るような気持
ちで大物を抜き上げた。大きな山女魚だった。心臓がドキドキしている。カメラで撮影
するのも焦って手間取る。久しぶりの大物、ポケットからメジャーを出して当てると、
何と27センチ!。今までの最高が26センチだから記録更新ということになる。  

デカイ山女魚が釣れた。 どうです、この太さ。

素晴らしい山女魚だ。胴は掴みきれないくらい太い。精悍な顔。輝くような、傷一つな
い完璧なボディ。こんな日に、こんな場所で釣れるなんて・・・分からないものだ。 

今度は岩魚が釣れた。 綺麗な岩魚20センチ。このままリリース。

気分はもう最高。その後も風に悩まされながらもルンルンで竿を振る。もう、釣れても
釣れなくても、釣りをしているだけでいい。上流へ上流へと釣り上がる。そして、林道
下で流れが桂の根を洗う場所で3尾目の魚が出た。20センチくらいの綺麗な岩魚だっ
た。これは渕尻できれいに出てくれた。今日は茶色の虫が飛んでいるのでブラウンカデ
ィスを使っていたのが良かったのかもしれない。ここまで、出た魚はみな取れている。
その更に上流の開けた流れでまたも岩魚が出た。こちらも綺麗な18センチ。久しぶり
の釣りなのに、何だか良く釣れる。                       

こんな場所で釣れました。 開けた場所でも岩魚が釣れた。


これも綺麗な岩魚、18センチ。 大きな淵の横でひと休み。

その後、当たりはパタリと止まった。風が強くなったこともあり、振り込みに慎重さが
なくなったせいかもしれない。左の膝が痛くなり、歩行に神経を使うようになったせい
かもしれない。大きな淵で定位してる山女魚がいたが、低い姿勢で近づいたにもかかわ
らず気づかれて逃げられた。そこから上流では核心部にもかかわらず魚の反応が無かっ
た。気がつけばもう3時。最上流のポイントまで林道を歩くことにする。      

スカリを下ろして休憩中。 釣れなくなったので林道を歩いて上流へ。


堰堤付近の川を上からのぞき込む。 大岩を割って成長している大イタヤカエデの雄姿。

30分ほど歩いて目指すポイントに到着してみたら、何と流出した土砂でそのポイント
は見るかげなく消え失せていた。林道修復のための工事でもあったのか、川が平らにな
っていた。これはどうしようもない。ここで今日の釣りは終わり。斜面に生えていたヤ
ブレガサとミズを腰カゴに収穫し、釣り道具をスカリに収納して脱渓した。途中で竿を
出したい場所もあったのだが、2時間以上歩かなければならないので断念。林道の両側
でシオデがないか凝視しながら下っていった。                  

帰り道、秩父ほどではないが大きなシオジの純林に目を奪われた。


入り口の橋の上から夕方の川面を見る。 欄干で記念写真。お疲れさま。

久しぶりに10時間以上歩いて、膝が痛くなってきた。左足が何かにけつまづく事が多
い。2時間歩いてやっと入り口に到着。橋の上で記念の写真を撮る。いやはや充実した
1日だった。車に戻ると、さすがに他の車は無くなっていた。心地よい疲労感の中で足
ごしらえを解く。濡れた靴を脱ぎ、乾いた靴下を履くと人心地が帰ってきた。さあ、温
泉で暖たまって帰ろう。タケノコ、山菜をお土産に大川を後にする。結局、シオデは見
つからなかった。                               


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