千曲川支流で


ピーカンの晴天を恨みながら1日釣り歩いた。



梅雨の晴れ間が続く6月、天気は空梅雨の様相を見せ始めている。そんな晴れ間が続く
ある日、ふと思い立って千曲川支流へ釣り出かけた。3年前に良い釣りをした記憶が蘇
ってきて、そういえば今頃だあったなあと、記録を見直しているうちに無性に釣りに行
きたくなってしまったのだ。平日だし、毛鉤もたっぷりあるし、先行者さえいなければ
面白い釣りが出来るはずだ。                          

朝5時に目覚め、すぐに身支度して車を走らせる。ガソリンが少なかったので、関越の
三芳PAで給油。ハイオク満タンで8200円!スタンドのおじさんが「すいませんね
え・・」と恐縮するが、何もおじさんが悪い訳ではない。う〜〜ん、釣りに行くのも大
変な世の中になってきたなあ、と実感する。車は順調に走り、佐久インターから千曲川
上流を目指す。途中のローソンで釣り券とお握りを買う。             

目指す川のポイントに到着。しかし、なんと群馬ナンバーの車が停まっていた。先行者
が入ると釣りにならない川なので、仕方なく諦め、別の川に向かう。10分くらい走っ
た別の川。幸い釣り人の車は停まっていない。さっそく身支度して川に入る。この川は
芦が生い茂っていて、釣りをするには川に立ち込んで釣らなければならない。底石がぬ
めぬめと滑るので歩くのが大変だ。毛鉤はナチュラルEHC。追い風に乗ってレベルライ
ンが気持ちよく伸びる。きれいに伸びるライン、毛鉤はフワリと水面に着水する。しか
し、水面は炸裂しない。                            

最初に入った川。当たりがまったくなし。 午後に入った川。ここも厳しかった。

クモの巣が張られているので、先行者はいない。しかし、クモの巣が邪魔なことととピ
ーカンの天気が災いしてか、魚の反応がまったくない。朝8時から12時までまったく
反応が無かった。これはいったいどうしたことか。パシャっとでも出てくれれば、それ
なりにやる気になるのだが、まったく反応がないので、どうしようもない。まさか、魚
がいないとか・・・疑心暗鬼が広がり、やる気もなくなって土手に上がった。何という
暑さだろうか。土手に上がると汗が噴き出してくる。この暑さでは釣りは無理かもしれ
ない・・という思いがじわじわと広がってきた。                 

やっと岩魚が釣れた。 川の水が少なかった。クモの巣だらけ。

別の川に向かう。川の近くの木の下に車を止め、窓もドアも全部あけはなってしばし休
憩。日陰は涼しいので、そのまま気分転換に仮眠する。2時間ほど仮眠した。午後2時
、まだ日射しが強い。あまり魚が釣れるような気はしないが、身支度をして川に入る。
この川も芦が茂っていて、クモの巣との戦いだった。思うように振り込めないイライラ
もつのってきた。そんな時瀬尻で飛沫が上がった。魚だ! しかし、小さく速いライズ
に合わせが遅れた。「魚はいる」これで俄然やる気になった。何度か小さいアタックが
あったが魚が乗らない。芦の間の細い流れ込みに、上手く毛鉤が入った。ゆらりと魚の
影が寄る。ゆっくりと毛鉤をくわえた。合わせると竿先にガンガンと手応えがある。や
っと釣れた。手元に寄せると18センチくらいの岩魚だった。いやあ、これでボウズを
まぬがれた。                                 

本命の川に移動。やっと日が沈む。 岩魚が釣れた。

4時まで釣ったが、釣れたのはその1尾だけ。夕方になったので本命の川に移動する。
朝止まっていた群馬ナンバーの車はすでに消えていた。山の端に太陽が隠れようという
時間になったのにまだ暑い。公会堂の下から入渓する。しばらく遡上する。何度か小さ
いアタックがあった。小ヤマメがうるさい。小さな渕尻で岩魚が出た。やっと2匹目。
良かった。その後も当たりは遠い。突然後ろから甲高い声がかかった。「釣れた??」
これには驚いた。振りかえると小さな子供が立っていた。どうやら学校帰りの小学生の
ようだ。渓流で後ろから呼びかけられると本当に驚くのだが、あわてて平静を装って、
「さっき岩魚が釣れたよ」と応えた。子供は横の家の子らしく家に飛び込んで行った。

いい型のヤマメが釣れた。うれしい。 子供が川に遊びにきた。

気を取り直して毛鉤を振る。そろそろ毛鉤に良い時間になってきた。荒い瀬尻で小さな
飛沫が上がった。瞬間、合わせると手元に大きな手応え。走った魚をいなして抜き上げ
る。20センチオーバーのヤマメが掛かった。そこにまた先ほどの小学生がやってきた
。「釣れたの?」と聞く。見ると手網を持っている。そこにヤマメを入れて「良かった
らやるよ」と言うと、満面の笑顔で「ありがとう」と応える。両手でヤマメを掴んだと
ころを写真に撮った。子供が持つと魚が大きく見える。いい時に釣れてくれたものだ。

ヤマメを上げたら満面の笑顔で「ありがとう」 最後に岩魚が釣れた。

小学生と別れて更に上流へと歩を進める。毛鉤のゴールデンタイムだ。暗くなる前にと
気持ちが焦って足元がおぼつかなくなる。何度となく上の枝に毛鉤を引っかけるように
なってしまった。そろそろ終わりにしようかと思った時だった。芦の横のなんというこ
とない流れで岩魚が釣れた。型は小さかったが、最後に出てくれたので良かった。この
岩魚を釣ったことで、今日一日が報われたような気分になった。朝から炎天下を1日釣
って4尾の釣果。まあ、この程度の腕だということだろう。薄暗くなる林道を歩きなが
ら、長かった1日を反芻していた。                       

最後のポイント。 溜息をつきながらの帰り道。



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