一年ぶりの釣り


長いこと釣りに行けなかった。一年ぶりの渓流釣りになる。


秋田の仙北市で毎年開催される森林作業体験交流会の前日に釣りをするのが恒例になって
いる。せっかく秋田に行くのだから釣りをしようと始めたことだが、まさかこの一年間釣
りに行けず、一年ぶりの釣りになるとは思わなかった。「山里の記憶」の取材や作画が忙
しくて、まったく釣りに行けなくなってしまったからだ。絵を描くときの気分転換には、
もっぱら料理をすることで済ませている。釣りの優先順位が下がった訳ではなく、単に時
間がなかったから行けなかっただけだと思っている。                

そんな訳で今年も秋田で釣りをする。前回は関根さん、吉瀬さんと同行したが釣れなかっ
た。今年はどうなるか。もし釣れなくても、川に入るだけでもいいと考えれば気が楽だ。
朝4時に家を出て、一路秋田へと東北道をひた走る。天気は良さそうだ。秋田はしばらく
まとまった雨は降っていないようなので、たぶん渇水気味なのだろう。あまり多くを期待
しないようにしよう。車は順調に走り、10時に盛岡に到着した。ここから国道を走り、
田沢湖を抜けて仙北市西木町に入る。いつものお店で釣り券を買う。ハミさん一行が来て
いるはずだが、どこに入ったのだろうか。                     

猫さんのコブシで記念撮影。 ここで初めて作業したのが平成13年。あれから何年・・・

小波内の「猫さんのコブシ」を見に行く。木の前の雑草が綺麗に苅り払われていた。高橋
さんがやってくれたのだろう。ありがたいことだ。猫さんが逝ってから、もう3年になっ
てしまう。時の流れは加速している。あと何回ここに来ることが出来るのか・・・   

車を上流に走らせ、いつもの川に向かう。橋のたもとの栗の木の下に車を止めて身支度を
する。川の水は思った通り少なめだ。一年ぶりの釣りが始まった。橋の上のポイントでは
ヤマメが顔を出したが毛針を咥えるところまでいかなかった。水がすくなく天気も良いの
で警戒心が強くなっているようだ。上流へと足を運ぶ。今日の毛針はナチュラルエルクへ
アカディス。見にくいが、こういう天気の時は魚の反応がいい毛針だ。明るい平瀬の深み
で毛針にアタックしてきたヤマメが釣れた。最初の魚はどんな魚でも気持ちいい。   

待望のヤマメが釣れた。 一尾目はどんな魚でもうれしいもの。何度も写真を撮る。

気分を良くして上に進む。丁寧に探っていくとまたヤマメが出た。久しぶりの感触が釣り
の感覚を呼び覚ましてくれる。姿勢もだんだん低くなって、毛針も風に乗るようになって
きた。こうなると楽しい。沈み石の横でまたヤマメが出た。これまで出た魚は全部で五つ
、そのうち3つを釣っている。今日は何だかいけるんじゃないか。日差しは強いがカラリ
とした暑さで快適な遡行が出来て気持ちいい。河原の大きな岩に寄りかかって一休みしな
がらセルフタイマーで写真を撮る余裕が出てきた。                 

次のヤマメが釣れた。 天気が良く、明るい川の流れがきれいだ。


またヤマメが釣れた。 余裕が出来てセルフで写真。久しぶりの釣り姿。

サワグルミの大きな根が川に覆い被さっているポイントでイワナが出た。さらに上流でヤ
マメが出た。これはいい型だった。23センチくらいの体高のあるヤマメだった。両側に
木が覆い被さる川での釣りは楽しい。調子にのってつい周囲への注意が散漫になったよう
だ。次のポイントに毛針を振り込んだとたん、バキッと音がして竿先が後ろに飛んだ。何
が起こったかと竿先を見るとヒビが入っていて先3本が無い。後ろの木の枝に竿先がぶら
下がっていた。さあ、困った予備竿が無い。ベストのポケットを色々探したが補修に使え
そうなものは何も無い。あるのは4Xのティペットだけ。ままよ、とこれを竿先にグルグル
巻いてヒビをふさぐ。竿先を入れ直したら、なんとか使えそうなので釣り再開。    

サワグルミの根が川に張りだしているポイント。 明るい林の中に、透明な流れが静かに存在している。


初めてイワナが釣れた。 岩陰から飛び出して毛針をくわえた。


大きな手応えでヤマメが釣れた。 なかなかいい型のヤマメだった。

もう一度折れたら終わりだから、振り込みも会わせも慎重にならざるを得ない。それが良
かったのか、その後も順調に釣れ続いた。大きな堰堤上のポイント。何回かここで大物を
かけ損なっていたので、慎重にアプローチする。3度目にフライが流れた時、小さい動き
で消えた。ゆっくり合わせると手元に大きな手応えが伝わる。「やった!今度こそ釣った
ぞ・・・」外れるなよ、と念じながら魚を慎重に寄せる。イワナかと思ったらヤマメだっ
た。25センチ、体高のある立派なヤマメだった。今回一番の大物だった。      

イワナが釣れた。 同じようなポイントで続けてイワナが釣れた。


今度はヤマメが釣れた。 きれいなヤマメだった。


大きな木が川を覆っているポイントだった。 大きな木は桂の木だった。


この日一番のヤマメが釣れた。すごい手応えだった。 最後のヤマメが釣れた。

その後一尾を追加して、合計10尾のイワナとヤマメが釣れた。ツ抜けの釣りは久しぶり
だった。堰堤は誰かが入った後のようで足跡が散乱していたので、そこで脱渓した。よい
釣りが出来ると景色が違って見えるのが不思議だ。さあ、クリオンでみんなが待っている
から急いで帰ろう。西木の渓は素晴らしい。                    

西木の渓は素晴らしい。 東京から走ってきた愛車と満足の記念写真。



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