渇水の西木で釣り


野村さん、井戸堀さんと超渇水の西木の川で釣りをしたが・・・


 9月5日と6日、秋田県仙北市西木に行き、三人で釣りをした。          

 参加したのは野村さんと井戸堀さんの二人。前日の夜11時に野村さんが迎えに来て、
荷物を車に積み、一路東北道を走って、8時に盛岡インターに着いた。        

盛岡インター近くのコンビニで井戸堀さんと待ち合わせた。 自宅に行き、荷物を野村さんの車に積み、一台で西木を目指す。

 インター近くのコンビニで井戸掘りさんと待ち合わせ。合流して、一旦井戸掘りさんの
自宅に行き、荷物を野村さんの車に積み替えて、三人が一台で西木に向かう。     
 車内でいろいろ会話が弾む。途中の川の水量が極端に少ない。聞くと雨が全然降ってい
ないという。この時点で一抹の不安がよぎるが、とにかく行くしかない。       

 西木の小波内川も水量が三分の一くらいになっている。いつもは徒渉できないような川
だが、今日の水量なら膝下を濡らすだけで徒渉出来そうだ。             
 小波内の再会の森。猫さんと土筆さんのコブシに持参した花を供える。ちょうど今年が
七回忌に当たる。先日は伊豆の伊東で花供養をしたがここでも花を供えて手を合わせた。

 門脇鮮魚店で釣り券を買う。車はそのまま走って上桧木内まで行く。いつも川の横に車
を停め、身支度をする。井戸堀さんが仕度をするのが早くなった。聞くと、四度ほど自分
ひとりで釣りに行っていたのだそうだ。                      
 脳梗塞のリハビリで釣りをする人は珍しいと思うが、難しい事だからこそ良いリハビリ
になるのだと思う。不自由な体で川に向かう精神力がすばらしい。          

小波内の猫さんコブシに七回忌弔いの花を供える野村さんと井戸堀さん。 釣り券を買い、いつも入る沢の入り口で釣り仕度に着替える。


西木の川はどこも超渇水状態。いつもの三分の一くらいの水量だった。 それでも果敢に釣りをする井戸堀さん。アタリはあるが掛からない。

 この川も渇水していた。いつのも三分の一くらいしか水がない。ポイントも少ない。橋
の下のポイントは小ヤマメの群れるプールになっていた。当然毛鉤には掛からない。  

 井戸堀さんに先行してもらう。何度かアタックがあるが針に乗らない。たぶん、小ヤマ
メのアタックなのだろう。                            
 大きな淵のまん中に巨大な魚がいた。ヤマメだ。竿を振り上げた瞬間、さっと消えた。
水が少ないと魚も敏感だ。しかし、大きな魚がいることがわかった。         
 釣り上がるが、アタックがあっても針がかりしない。三人とも同じだったが、野村さん
がヤマメを釣った。小型だが「これでボウズをまぬがれた」と笑っている。      

 お昼になったので日陰の河原で昼食にする。野村さんが持参したトウモロコシが旨かっ
た。コンビニのおにぎりでも、こういう場所で食べるとじつに旨い。         
 食べ終わって、竿を出した瞬間、いきなりアタリがあった。元気なヤマメが釣れた。サ
イズは小型だが、きれいなヤマメで、午後の幸先の良さを感じさせるヤマメだった。  

昼になったので昼食。ここまでに釣果は野村さんの一尾のみ。 釣り再開。すぐに私の竿にヤマメが釣れた。幸先良し。


何度か掛けたが釣り上げるところまでいかない井戸堀さん。 野村さんの竿も音沙汰がない。

 上流の浅い淵で野村さんが叫ぶ「でかい!、そこ、そこ!」足元を巨大な影が走る。下
流の岩に隠れた。竿を置き両手で捕まえに走る。狙いを定めて両手を岩の下に突っ込む。
 左手が触った。しかし上流に走られた。井戸堀さんが「そこ、そこ」と竿で逃げたとこ
ろを差す。そこにバシャバシャと走り、両手を突っ込む。影が目の前を下流に走る。  
 「そっちだ、そっちだ」またも竿が示すところに手を突っ込む。淵の底が濁って見えな
くなってきた。さてさて・・・どうやら逃げられてしまったようだ。         
 野村さんが「釣り師としていかがなものか・・」と笑いながらたしなめる。大人げなか
ったと少々反省した。                              

 その後、空が急に暗くなり、雨が降り出した。山の天気が変わりやすいのは知っていた
が、これほど急に雨が降り出すとは驚いた。「さっきのヤマメの祟りだ」と野村さんが言
う。大きなサワグルミの下に避難して雨をやり過ごそうとするが、雨は止む気配がなく、
徐々に本降りとなり、果ては前が見えないようなどしゃ降りになってしまった。    

 川の水が徐々に増えてくる。濁りも入ってきたので、釣りはあきらめて脱渓することに
した。脱渓までが大変だった。道のない斜面を登り、見える電柱を頼りに藪をかき分けて
登る。全身ずぶ濡れで足元が滑る。                        
 何とか道に戻ったが、相変わらず雨脚は強いままだ。雨の中を三人で歩いている姿は、
ずいぶんと物悲しい光景だったに違いない。黙々と歩き、車を目指す。        

急に空が暗くなり、雨が降り出した。あわてて大きな木の下に避難。 雨は止む気配なく、本降りからどしゃ降りになった。結局、ここで納竿。

 車に戻ったら雨が小降りになってきた。時間はまだ二時。このまま宿に行くより、どこ
かで竿を出したいね、ということで小波内川に行くことにする。           
 車が走り出すと再び雨脚が強くなってきた。しかし、走っているうちに雨は小降りにな
り、小波内近くでは雨は降っていなかった。                    
 さあ、川に行こうと道を曲がったところで雨が降り出し、急に強くなってきた。どうや
ら雨雲を追い越してきたらしい。案の定、それから雨が本降りになってしまった。   
 もう釣りをあきらめるしかない。クリオンを目指す。               

 クリオンはまだ雨が降っていなかったが、空模様は悪くなる一方で、いつ雨が降り出し
てもおかしくない状況だった。                          
 ずぶ濡れの状態でチェックインして、部屋に行く。着替えてやっと人間に戻り、三人で
風呂に行く。風呂場から見える外の景色は本降りの雨だった。なんとも雨に祟られた一日
だった。野村さんはずっと「ヤマメの祟りだ」と言っている。            

 ひと休みして夕飯の時間。カタクリというレストランに行くと、沢山さんと高橋さんが
来てくれた。五人で乾杯して飲みながら四方山話。井戸堀さんもここは久しぶりなので、
話しに花が咲く。                                
 沢山さんの話に、玉川ダムの水位が下がりすぎ、明日、取水制限についての会議がある
とのこと。今までにないほど今年の渇水はひどいようだ。今日の雨などでは、とても解消
できるものではないようだ。                           
 飲んで食べて、次の宴会に行くという二人と別れて部屋に戻る。          
 井戸堀さんが持参した赤ワインを開けて飲む。別の宴会場から高橋さんがお酒を、沢山
さんがつまみを差し入れてくれた。ありがたい。                  
 9時でお風呂が終わるので、野村さんは風呂に行く。酔っぱらった私は井戸堀さんと歌
を歌って時間を過ごした。歌を歌うのは言語障害のリハビリにいいのかもしれない。  

 翌朝、テーブルの上にはビールの缶、お酒のビン、ワインのビン、コップ、差し入れの
鮎などが雑然と並び、何ともいえない匂いが充満してした。             
 とりあえず窓を開け、朝風呂に行く。                      
 朝6時だというのに大勢の人がお風呂にいるのでびっくりした。村の施設だから当然だ
が、朝、温泉に入ってから仕事に行くという人が多いのだろう。うらやましい環境だ。 
 チェックアウトまでまったりと過ごす。外はまた雨が降り出した。         

クリオン自炊棟の朝。飲んだお酒と食べたつまみの匂いがこもっている。 朝風呂に入り、牛乳をぐいっと飲む野村さん。私はビールでした。


今日も朝から雨。恵みの雨だが、釣りに来た身としては何だかなあで。 沢山さんの蕎麦屋に寄って、ざる蕎麦を注文する。この蕎麦が旨い。

 昨夜、鮎を差し入れてくれた沢山さんの家に向かう。沢山さんは「一助」という蕎麦屋
さんをやっていて、ここの蕎麦が絶品なのだ。                   
 挨拶をして入店し、ざる蕎麦の大盛りを注文する。蕎麦はコシが強く、濃いタレによく
からむ。香りを楽しみながらぺろりと完食。食後のそば湯がまた旨い。        
 四方山話をして時間を過ごし、記念写真を撮って帰途についた。途中の田沢湖でお土産
を買うことにして御座石神社で休憩する。田沢湖の水位が異常に低い。いつもより2メー
トル以上湖面が低い。青い色が不気味なほどの渇水した田沢湖。初めて見る景色だ。  

蕎麦を食べながら四方山話に花が咲く。そば湯も旨い。 沢山さんと奥さんにも入ってもらって集合写真を撮った。


帰り道の田沢湖。おみやげを買いに御座石神社前で休憩する。 湖面がいつもより2メートル低い。こんな渇水は見たことがない。

 盛岡の自宅に井戸掘りさんを送り、野村さんと私は長い帰路につく。佐野までずっと雨
が降っているという雨に祟られた二日間だったが、最後に圧倒的な夕焼けを見ることがで
きた。「ヤマメの祟りがやっと解けたのかもね」二人で笑い合った。         

帰りの高速。佐野まで来てやっと晴れた。夕焼けがきれいだ。 刻々と変わる夕焼けを助手席で撮り続ける。じつにすばらしい。


夕焼けショーも終わりに近づく。黄金色に空が輝く。 名残の夕焼けは後方に淡く・・ドアミラーで最後の写真。




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