兄と東北釣り行脚3


最上の釣り


 西木でのイベントが終わり、再会を約束して昼で解散し、それぞれの方向に別れた。私
は兄と今夜の宿泊地である瀬見温泉を目指して車を走らせた。            
 途中、道を間違えたりしながら走り、秋田・山形の県境周辺の景色を楽しんだ。新庄に
着いたのが3時半。瀬見温泉を通り抜け、鮎梁のドライブインを見学。そして明日の釣り
舞台となる最上白川を見に行った。                        
 川の水が少なくてビックリし、明日の釣りを心配したが、橋の上から見る川には魚影が
ユラユラしている。夕方の川面にライズする魚を見て、安心して宿にチェックインした。

西木のイベントは「再会の森」の下刈りと整備だった。 宿は瀬見温泉の観松館。ウエルカムドリンクが出た。


これがなんと冷たいどぶろくのお銚子。これは旨かった。 夕飯も部屋で食べる。釣りの旅にしては豪華版。


二人でカシャカシャと写真を撮る。ビールが旨かった。 鮎の香り焼き。本場の味で旨かった。

 朝4時に目が覚め、すぐに着替えてチェックアウト。前夜のうちに精算を済ませていた
ので守衛さんもニッコリと送り出してくれた。                   
 車を走らせ、セブンイレブンで釣り券と昼飯を買う。雨が降り出した最上白川に期待を
高めながら川の奥に車を走らせる。                        
 堰堤で車を停め、兄はここで入渓。私は下流に歩いてから入渓した。杉林の中、足元か
らヤマドリの雌が走り出すのにビックリし、巣のありそうな場所を迂回して川に向かう。

 最上白川は前に来た時の半分くらいの水量で普通の川になっていた。テンカラ的にはこ
の方が釣りやすいし、シトシト雨も降っている。これはいい感じで釣りが出来そうだ、と
この時は思ったのだが、甘くなかった。                      
 魚の気配がまったくない。足元から走る魚もいないし、毛鉤への反応もまったくない。
少々焦りを感じて正面の山を見上げると、杉林の伐採現場が延々と続いている。今日は雨
だし早朝だから静かだが、晴れた日中はけたたましい音に覆われていそうな場所だった。
ユンボやハーベスターの黄色や青色が山の中にふさわしくない毒々しい色として目に飛び
込んできた。「このせいかもしれないな…」と思いながらも丁寧にポイントを攻める。し
かし、まったく反応がない。                           

やっとイワナが釣れた。しかし、反応がない。 水は少なくて遡行しやすいのだが……、魚がいない。

 兄のいる第一の堰堤が見えて来た時だった。小さな当たりを逃さずイワナを釣った。こ
れでボウズがなくなったとホッとしながら白川のイワナを眺めて写真を撮った。結局、こ
の一尾だけで兄と合流。釣果を報告すると笑いながら「俺も一匹だよ」と言う。この大堰
堤でそうなのでは先が思いやられる。                       

兄が釣っている大堰堤に到着した。 堰堤で釣っている兄。聞けば釣果はたった一匹とのこと。

 ここから先は淵を飛ばすという事で私が先行する。魚の気配がまったくない川で竿を振
りながら「次こそは、次こそは…」と思うのだが気分は盛り上がらない。雨が土砂降りに
なってきて毛鉤が見えないほどになってしまった。こうなると釣りにならない。    

雨が土砂降りになってきた。毛鉤がもう見えない。 二匹でギブアップ。雨の中であきらめの自分撮り。

 その後、たまたま気がついたら釣れていたイワナが一尾。それだけで午前中の白川が終
わった。第3の堰堤まで相当な距離を探ったが結果は出なかった。堰堤の高巻きでつまず
き、転び掛けたのをきっかけに脱渓した。こんな所で怪我をしたら大変なことになる。 
 途中で釣りをしていた兄に声をかけて脱渓を伝える。雨はますます降り続いて合羽の中
まで濡れてきた。車に戻って着替えてやっと人心地。兄も戻って来て着替える。話を聞く
と兄も同じで一尾の追加だけだったようだ。「それにしても魚の気配がなかった…」とい
う感想もまったく同じだった。他の川に回る気力も無く、そのまま帰路に着いた。   

帰り道の大木も雨の中。 開けた斜面でツルアジサイの群落を発見。


これほど見事な群落は初めて見た。すばらしい。 雨の中で車に帰ると安心する。今回はこれで終わり。

 中山平温泉、鳴子温泉を通り抜け、古川インターに着いたのが12時。東北道から北関
東道を走って秩父の兄の家に着いたのが5時半。秩父から慣れた道を走って自宅に帰った
のが7時半。全走行距離1733キロの釣り旅が終わった。             
 一度でいいからやって見たかった兄との東北釣り行脚、やっと実現した釣り旅だったが
、結果は渇水で最悪の結果に……。でも、まあ兄が喜んでくれたので良かった。当分の間
、話の種になりそうな濃い旅だった。                       



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