那須から山形へ


一泊二日、雨を避けて釣り歩く。


 7月30日と31日の二日間、那須と山形で釣りをした。天気予報を睨みながら雨の降
らない場所を選んでの釣りだった。                        
 30日は起きたら雨が降っていた。予報では那須は降らないことになっているので、構
わずに出発する。佐野までは雨だったが、その先は雨が降っていなかった。「ヨシヨシ」
と思いながら黒磯板室インターを降りたら小雨が降っていてがっかり。コンビニで釣り券
と行動食を買い、山に向かう。霧で道が見えないくらいでゆっくり走る。駐車場には車が
一台。川も増水しているし、さすがに釣り人も少ない。               

 カッパを着て林道を歩く。木から落ちる大きな水滴でカッパが濡れる。途中の堰堤で大
瀑布を見て増水している事を確認。果たして釣りになるかどうか・・・        
 第一の橋から入渓する。普段は河原になってる場所が深い流れになっている。思った以
上に増水している。流れがボウズでポイントが少ない。毛針は矢のように流れ去る。深場
に魚が集まっているようで、淵に毛針を落とすと魚が見に来るが食うことはない。   

川は増水していて遡行するのが大変だった。 やっと釣れた一匹。これは嬉しかった。

 白い大きな鳥が「キュォー」と鳴きながら川面すれすれに飛んだ。「ヤマセミだ!」こ
の川でヤマセミを見たのは初めてだ。同じ大きさの少し黒が混じる鳥が続いて飛び去る。
どうやらヤマセミの番いが飛んでいる。天敵のヤマセミが二羽も飛び交っているようでは
魚は出ないだろうなあ・・と暗澹たる気分になる。それにしても間近で見るヤマセミは本
当にデカイ。北海道の西別川で見て以来なので感動した。しばらくしたら今度は上流から
下流に向かってすごい速さで二羽が飛び下って行った。               

 魚は出るが毛針をくわえることがなかった。そんな時、いつもここで出るというポイン
トでやっとヤマメが釣れた。これは嬉しかった。これでボウズはなくなった。     
 その後、普段出たことがない場所からヤマメが飛び出した。これも嬉しかった。それに
しても増水した川での遡行は難儀した。広い瀬以外では川を渡ることが出来ず、流されな
いように足を運ぶことだけに神経を使った。                    

いい型のヤマメが釣れた。 こんなヤマメが釣れれば御の字。


いいヤマメが釣れて笑顔の自撮り。 霧のような靄のような川面をヤマセミが飛ぶ。

 川を渡れず五十メートル下って渡るような事を繰り返しながら上流へと足を運んだ。高
巻きをして再度入渓したところに静かな淵があった。中央に毛針を落とすと黒い影がさっ
と寄って来て毛針が消えた。合わせると大きなイワナが暴れる。慎重に引き上げるといい
顔をしたイワナが悔しそうに睨んでいる。こちらは笑顔だ。「ありがとうよ」と言いなが
らリリースする。なんだか。この一匹で満足してしまった。             

深みからすうっと上がってきて毛針を加えたイワナ。 なかなかいい型のイワナだった。嬉しい。

 第二の橋で脱渓する。まだ雨は降っていなかったが雲は確実に厚くなり暗くなって来て
いた。林道を歩いて車に戻る時に静かに雨が降り出した。いいタイミングで脱渓したよう
だ。今日は川でヤマセミを見た。林道で二頭の鹿を見た。車で走る道で猿の群れを見た。
この川の豊かさを実感した釣りだった。魚がもう少し多ければよかったのだが、それは次
回の楽しみにしておきたい。                           

増水していたけど満足の釣りができた。 ヤマアジサイの水色が綺麗だった。


林道を歩く足が軽い。気分は上々。 堰堤の水量は半端なく多かった。大増水だね〜。

 車に戻り、着替えて走り出す。霧が濃く、百メール先が見えないのでゆっくり走る。雨
は間断なく降っている。高速に乗り、山形を目指す。今日の宿は南陽市の赤湯温泉にある
丹波館という温泉宿だ。山形の明日の天気は曇り予報だったのだが、果たしてどうか。 

林道の最後を飾るシダの森。 ダムの上は霧で何も見えなかった。

 赤湯温泉に到着し、宿にチェックインする。感染対策がしっかり施されており、マスク
着用で行動する。すぐに温泉に入り、体を温める。さらりとしていい温泉だった。   
 夕飯は食事処で食べる。椅子席で透明パネルで仕切られていて、中井さんの給仕もフェ
イスシールドをつけて最小限だ。これが今後の温泉宿の姿なんだろうと思う。     
 料理は豪華でとても美味しかった。米沢牛のミニステーキがサービスでついたのも美味
かったが、米沢牛そぼろを乗せたご飯が一番美味かった。この宿は当たりだ。     

赤湯温泉・丹波館の部屋。 お風呂。


部屋のテーブルに宿の心配りがいっぱい。 夕食はダイニングのテーブル席。アクリル仕切りがある。


ウナギの蒸し物。 鍋は米沢牛のすき焼き。


サワラの西京焼き。 魚料理ふた品。


刺身。 サービスの米沢牛ミニステーキ。


米沢牛そぼろが乗ったご飯。これは美味かった。 最後のデザートで満腹に。

 天気予報が良くない。明日行こうと思っていた置賜に大雨注意報が出されている。明日
の朝から大雨だ。さてどうするかと思案する。県北方面は曇り予報だ。明日は朝から2時
間走って新庄に行こうと決める。                         
 朝5時に起きて温泉に入る。朝からすでに雨が降っている。朝食は7時から。昨夜と同
じ席で静かに食べる。サラリーマンや若い女性客がすでに食事をしていて、皆さん早くか
ら動いている。良い宿だ。                            

朝から雨が降っていた。部屋の外。 朝飯は昨夜と同じ席。美味かった。

 車は東北中央道を新庄に向かって走る。約2時間かけて山形県を縦断する。一山越えれ
ばもう秋田という場所まで走った。目指したのはK川。コンビニで釣り券と行動食を買い
川を目指す。まだ雨は降っていない。駐車場には車が一台停まっているが気にしない。 
 着替えてすぐに入渓する。この川も増水している。そういえば最上川で洪水被害が出た
のはまだ四日前のことだった。この川もその時の雨で増水しているのだろう。     

この川も増水していたがいい感じだった。 すぐにイワナが釣れた。これでボウズはない。


またイワナが釣れた。同じサイズだ。 嬉しいイワナだった。

 気分は上々だった。綺麗な川で竿を振るのは本当に楽しい。入渓してすぐに小さいイワ
ナが釣れたのでボウズがなくなった。増水はしているが遡行が難しいほどではない。そん
な油断が足元を狂わせた。渡渉していた時にバランスを崩し、流れに倒れかけた。とっさ
に左手で体を支えたのだが、太ももを大きな岩にぶつけて激痛が走った。足が痛みで動か
ない。左足を引きずるように流れから上がるが動けない。しばらく河原の石に座って痛み
が落ち着くのを待った。どうやら「モモカン」と同じ状況のようだ。打ち身だが痛い。骨
には異常がなさそうだ。油断したバチが当たった。片手が濡れただけで済んだのが信じら
れない。                                    

いいヤマメが釣れて大満足の笑顔。 こんなヤマメが釣れた。


いい型のヤマメだった。 川面が暗くなってきた。そろそろ降り出しそう。


この川のヤマメは本当に美しい。 こんなヤマメが釣れてくれたらもう大満足だ。

 痛む片足を引きずるようにしながら釣り上がる。いい型のヤマメが釣れた時は嬉しかっ
た。この川のヤマメは本当に綺麗だ。魚が釣れると足の痛みも弱くなる。その後もヤマメ
が釣れたりイワナが釣れたりと飽きることがなかった。しかし、徐々に空が暗くなる。そ
してとうとうポツポツと雨が降り出した。時間はお昼を少し過ぎた頃。        
 雨の中で無理して釣りをする気力もない。足も痛いし、ここで脱渓することにした。ヤ
マメが4尾、イワナが3尾遊んでくれたので満足だ。楽しい釣りができた。      

こんなヤマメが釣れたよ。 脱渓点の下流方面を見る。


脱渓点の上流方面を見る。 登山道が草刈りされていた。

 車に戻ると雨が本降りになった。いい時間に脱渓した。先に停まっていた車はすでに消
えている。着替えて車に入って、昼用のおにぎりを食べる。雨を避けての釣りだったが、
なんとかいい釣りができた。自分の判断に満足し、充実した時間だった。さて、あとは雨
の中をひたすら走って家まで帰るだけだ。山から下りる雨の道もなかなか楽しい。   



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