韓国紀行 その1


社員旅行で韓国に行った。その初日の様子を書きました。



韓国紀行 その1

4月18日から20日まで社員旅行で韓国に行った。韓国で会った沢山の人々や美味
しい食べ物、珍しいものや楽しかったことなどについてレポートしてみたい。韓国に
ついては私自身先入観があって、多くの勘違いをしていた事が分かった。少しでも皆
さんの韓国知識のお役に立てれば嬉しい。                   

4月18日朝7時5分新宿発の成田エクスプレスに乗車。我が家からは西武線の始発
に乗らなければ間に合わないという大変な集合時間だったが、何とか間に合い全員集
合して成田に向かう事が出来た。車内ではほとんど昨夜のサッカー日本対コスタリカ
戦を報じたスポーツ新聞を読んでいた。引き分けの試合だったが、何となく釈然とし
ないものを感じていて、その原因を自分の中で探していたような状態だった。   

成田空港の大韓航空搭乗口にジャージの一団がいた。良く見ると昨夜日本と戦ってい
たコスタリカの選手達だった。せっかくの機会だからと、一行に近づいて日本語と英
語混じりの挨拶をした。昨夜の試合は素晴らしかった、韓国でも頑張って下さい、と
言ったつもりだったが果たして分かってくれたのかどうか??          
それでも、にっこり笑って手を握ってくれた。                 

9時30分大韓航空706便は定刻に離陸し順調に飛行、11時55分韓国仁川(イ
ンチョン)空港に着陸した。さあ、韓国に着いた。ここでもコスタリカの選手と一緒
だった。プロのサッカー選手の一行と一緒に飛行機に乗ったのは初めてで、一緒に写
真を撮ってもらおうとしたら韓国人の関係者に「NO!NO!」と言われて止められ
た。向こうで女の子が撮っているのには何も言わないくせに、このケチ!!    

空港で一緒になったコスタリカのサッカー選手一行。 ソウル支庁前のワールドカップモニュメント。熱意が伝わってくる。

仁川(インチョン)空港ではハンナラ観光のチェ・ウンスクさんが待っていて、我々
をエスコートしてくれた。レンタル携帯電話を3台借りて、リムジンバスに乗り込み
ソウルを目指す。車内ではチェ・ウンスクさんの韓国訛の日本語が楽しい。周辺のガ
イドを一生懸命してくれるのだが、みんな何となく聞いている風もない。私はといえ
ば車窓の景色に夢中になって話を聞くどころではなかった。           

リムジンバスから見た韓国の印象は、一言で言えば「何だか乾燥しているなあ・・」
というものだった。白っぽい山肌、乾いた赤い土、アカマツの多い山並み、木々はま
ばらで細く種類も少ない。これが大陸の風景なんだと日本との違いを実感していた。
ソウル市内に近づくにつれて高層ビルが増え、ハングルの看板が多くなってきた。ビ
ルは総じて華奢な印象で地震の無い国だということが実感できた。それにして凄いビ
ルの数だ。空港からソウルに向かう高速道路の街路灯にワールドカップ出場国の国旗
がはためいている。何だか嬉しくなってくる。                 

街は思ったよりもずっときれいでゴミが少ない印象だった。日本ではどこにもある放
置自転車が無いことや、無秩序な看板が少ないことがそう思わせるのだろう。もっと
アジア的なにぎやかさを期待していたのだが、思った以上にソウルはきれいだった。
メインストリートは片側5車線の広い道路で、車の数もものすごく多い。街路灯の柱
にはワールドカップ出場国の国旗がはためいていて実に美しい。中国対韓国の親善マ
ッチの横断幕があちこちに掲げられていてワールドカップへの期待感を盛り上げてい
る。国を挙げてワールドカップに取り組んでいる印象が強烈に伝わってくる。市庁前
には巨大なサッカーボールのモニュメントが回転している。夜にはライトアップされ
るそうだ。ぐるりと取り巻く開催国の国旗が美しい。こうして見ると日本の方がよほ
どワールドカップに無関心な事がよく分かる。本当に大丈夫なのかニッポン?!  

ホテルで金子さんの友人キム・ソンミンさんの出迎えを受けた。ソンミンさんは日本
の武蔵美に留学していた人で日本語はペラペラ、せっかく覚えた韓国語の挨拶もまっ
たく必要なくちょっと残念。部屋に荷物を置き、さっそく街に繰り出す。ソンミンさ
んの案内で明洞(ミョンドン)の街を散策し、とあるしゃれた喫茶店に入って休憩し
、日本のものと全く違うトマトジュースを飲む。白く甘くて美味しい。その後も明洞
の街をぶらぶら歩きいろいろな店を楽しむ。マクドナルドもセブンイレブンもロッテ
リアもミニストップも全部看板はハングル。何だか楽しい。           

地下鉄に乗って市庁前から梨大(イデ)に移動する。10人が初めて乗る地下鉄にお
っかなびっくり。チケットを買って回転式の改札を通り抜け電車に乗る。車内で我々
の話す日本語にびっくりする周りの人。日本人が日本で外国人に対する反応とまった
く同じで面白かった。梨花女子大は韓国でもっとも有名な女子大で、大学のある街は
一大マーケットを形成している。                       

全員初めての地下鉄に乗るところ。少々圧倒されて緊張気味です。 さなぎ売りを見つけて、さっそく食べてみる鈴木さん。

ここで偶然話題のサナギ売りを発見。何にでも興味を示す鈴木さんがさっそく挑戦す
る。コップ一杯のサナギ2000ウオン。私は3粒食べた。全員一口づつ食べてその
感想を口にした。「虫だ・・」「まずい!」「せめて揚げてあれば・・」「つゆが生
臭い」とさんざんな声が飛び交う。口中には独特の生臭い味が充満している。残った
サナギは食べずに捨てた。ソンミンさんに聞くと、韓国でも一般の人は食べないらし
い。子どもの頃、食べ物がないときにおやつがわりに食べたものとのこと。これだか
ら日本のテレビ情報は当てにならない。                    

ここで男性チームと女性チームに分かれて街を散策することになった。公衆トイレで
用を足し(トイレはとてもきれいで日本よりも清潔)ぶらぶらと散歩していたらビニ
ールテントの屋台があったので入る。「アジュンマァ、トッポギ セ チュセヨ」と
言うと、たくましいアジュンマがにっこり笑い調理しながらいろいろと話しかけてく
る。少ししか分からないので、片言の韓国語で今日日本から来たこと、韓国語は少し
しか分からないことなどを話した。トッポギは韓国餅を甘辛いタレで煮込んだもので
屋台があちこちに出ている人気メニュー。ここではそれにおでんも加えて出してくれ
た。おでんは薄い練り物をじゃばらに折って串に刺して煮たもの。日本のそれとは少
し違う。お皿をビニール袋に入れて、そのビニールの上に盛りつける。こうすれば、
お皿を洗わなくて済むという屋台の知恵だ。じつに合理的。           

初めての屋台体験はとても楽しいものでした。 後ろに見えるのが有名な梨花女子大。すれ違う女性は美人ばかり。

先ほどの虫の味がまだ口中に残っているのでビールが欲しくなり「メクチュ イッス
ムニカ?」と聞くと、アジュンマはにっこり笑い、やにわに電話をつかむと何か怒鳴
っている。程なくどこからともなくビール(OBのラガービール)が1本運ばれてき
て紙コップが渡された。どうやらここはお酒は禁止されているらしかった。抜け道は
どこにでもあるということだ。隣に二人の女子大生が入ってきて揚げまんじゅうを注
文した。それが美味しそうだったので、こちらも注文する。目の前に積んである巨大
な餃子状の物体を油の大鍋にガッと投げ込み、サッと揚げてハサミで3〜4個にガシ
ガシと切り分けてトッポギの甘辛いタレを絡めて出してくれた。これは、じつになん
とも美味しかった。「ヘイ!サービスヨ」とウインクしながら出してくれたイモ天も
美味しかった。じつに楽しい屋台経験だった。                 

それから集合時間までの長い時間は男性陣にとって忍耐の時間だった。何と言っても
女子大前のマーケットだから、女性向けの店ばかりなのだ。ブランコが椅子になって
いるかわいい喫茶店とか、小物の店、洋服の店、カメラ屋さん、バッグの店、靴の店
、エトセトラ。男5人組の我々が入れる店と言えばバーガーショップとかCDショッ
プくらいのもので、この街で2時間を過ごすのは大変だった。          

韓国に来て早々に気づいたことがあった。大きな木には必ずと言っていいくらい鳥の
巣があるのだ。最初はヤドリギかと思ったのだが、よく見ると大きな鳥の巣だった。
カラスの巣かとも思ったのだが、カラスが飛んでいる姿は見かけない。この街でその
正体が分かった。なんとそれはカササギだったのだ。カササギはカラス科の鳥でオナ
ガのように尾が長く、オナガよりも短く「ギャッ、ギャッ」と鳴く。黒い体で羽根を
広げると白い、粋でダンディな鳥である。日本では九州の一部にしか生息しておらず
もちろん私も初めて見た鳥である。最初に飛んでいる姿を見たときは、一瞬我が目を
疑ったものだった。この韓国では至る所でカササギの姿を見る事が出来る。カササギ
は縁起の良い鳥として大切にされているとのこと。カササギにとっては住みやすい国
なのだろう。                                

近くのシンチョンの駅。これは地下鉄ではなく国鉄の駅。 アイドル風に撮った写真を見せる女の子たち。とても本人には見えない。

待ち合わせの時間から20分遅れて女性陣が帰って来た。3人は写真スタジオでアイ
ドル風の写真撮影をしていたとのこと。見せてもらうと、本当にアイドルのように見
える写真に出来上がっている。日本でも需要があるのではないか?と思わせる素晴ら
しい出来上がりだった。他の3人はネイルアートを施してもらったとのこと。思い思
いの色の指先を水切りするようなかっこうでプルプルさせている。やはりここは女性
の街だ。女性にとっては天国のような街なのかもしれない。           

地下鉄で夕食を予約したレストランの駅、麻浦(マッポ)まで移動する。男性陣はや
や疲れ気味。このお店は私が日本で韓国語を教えてもらっている権(クォン)先生が
予約してくれた進士宅(チンサッテ)という店でコース料理の美味しい店とのこと。
先生もちょうど韓国に帰国していて、今日この店で待ち合わせしているのだ。民芸風
の造りの店内に入り、部屋に案内された。床がオンドルで暖かい。韓国に来てオンド
ルの床を体験できたのは良かった。暖かい床に座りお茶を飲んでいると、韓国に来た
んだなあ・・としみじみ実感が沸いてきた。中庭にチマチョゴリの女性が降りてきて
琴の演奏を始めたので、それを聞く。許可を得て写真を撮らせてもらった。ふんわり
したチマチョゴリは日本の着物とは違う美しさを見せてくれる。原色の色使いもこう
して韓国で見ると違和感なく美しい。                     

夕食はここで食べます。進士宅(チンサッテ)の入り口で集まって。 お店のサービスでしょうか、きれいな人が琴の演奏と歌を聞かせてくれました。

権(クォン)先生と恋人のガイさん(イギリス人)が到着し、全員が揃ったのでビー
ルで乾杯した。ガイさんとは久しぶりに会うが元気そうで何よりだった。先生は姪御
さんのお祝いで帰国し、ガイさんを家族や親戚に紹介したのだそうだ。慣れない環境
でガイさんが疲れたのではと聞いてみたが大丈夫とのこと、まずは一安心。楽しい話
を聞きながら次々に運ばれてくる料理に舌鼓を打った。             

合流した先生とガイさん。日本の知り合いと韓国で合流するのも何か変な感じ。 料理は本当にたっぷりで種類も多く、韓国料理を堪能いたしました。

料理はコース料理で・エリンギのごま油付け・煮アワビの前菜・刺身7点盛り(ナマ
コ、ヒラメのえんがわ、鯛、イトヨリ、その他)・わかめスープ・薄い牛肉でニンニ
ク、辛み白髪ネギを巻いて食べるもの・山ゴボウの辛味噌漬け・タッカルビ・煮豚の
白菜巻き・ワタリガニ・テンジャンチゲ・ご飯・ご飯のスープ・五子味茶・・・  
いやあ、満腹になりました。俗に五味五珍と言いますが、まさにその展開です。素材
と味をバラエティ豊かに組み合わせ、変化に富んだコース料理でありました。お酒は
カスのフレッシュビール、ソジュ(焼酎)のサン、トンドン酒とこれまたバラエティ
豊かな組み合わせでした。チャル モゴッスムニダ!              

10時過ぎ、これからミリオネに買い物に行くという元気いっぱいの女性陣とは逆に
男達は寝不足の目が今にも閉じそうなのでホテルに帰ることにする。ソンミンさんが
読んでくれた黒いタクシーに乗って麻浦(マッポ)駅からホテルを目指した。運転手
の李(イー)さんは私の片言の韓国語に片言の日本語を交えて応えてくれた。李(イ
ー)さんはしきりに「空港からのリムジンは高い。今度はタクシーを使いなさい。」
と言い、自分の名刺を出してくれた。リムジンは免税店やお土産屋と結託してリベー
トを懐に入れているのだと、ののしっていた。ワールドカップにまたおいでと言って
くれた。優しい人だ。                            

運転手の李(イー)さん。今度来るときは電話してくれと言ってくれました。 韓国のLGグループが出しているコンビニです。日本と商品構成は変わりません。

ホテルに帰り、近くのコンビニに行く。セブンイレブンもあったのだが、せっかく韓
国に来たのだからと「LG25」に入って買い物をする。私はソジュ(焼酎)のサン
とジュースとオニギリを1個買った。コンビニの商品は日本と似たようなものが多い
が、良く見ると微妙に違っていたりして楽しい。ホテルの部屋に戻ってテレビをつけ
るとサッカーをやっていた。さすがにサッカーどころである。フランスとロシアの親
善マッチだった。ロシアは日本がワールドカップ本戦で当たる相手とあってほろ酔い
気分もすっかり消えて真剣に試合に見入ってしまった。結果は0ー0のスコアレスド
ロー。日本が5−0と大敗したフランス相手に互角の勝負をするのだからロシアの実
力もあなどれない。いよいよ、各国がワールドカップモードに入ってきたということ
だ。今のままでは日本は勝てない。試合が終わったら我慢できずにそのまま就寝。