瀬音の森日記 38
営林局で西丹沢の話を聞く
1999. 2.18
東京営林局に行った。先日の西丹沢視察の記憶が新しいうちに、実際の分収育林
の現状を調べて確認するためだ。アポは前もって取ってあったのでスムーズに話
が進んだ。応対してくれたのは分収林係長の林さんと森林活用課長の益子さんだ
った。
まず、西丹沢の現状確認。私の撮ってきた写真と管理地図を照合しながら分収育
林の場所を確認する。数字を見てそれを台帳で調べると広さ、樹種、樹齢などが
分かる。先日見た杉・ヒノキの林は一斉皆伐された跡のようで、皆37年生くら
いの木のようだ。手入れの有無は台帳では分からず、担当の2人もそこまでは把
握していないとのこと。それをいいことに思いっきり悪口を言ってしまった。
そこで、これから分収育林出来る場所の確認に入る。地図上の育林と書かれた場
所以外はどこでも可能だという事だが、林道が近く、沢に近い場所というと少な
い。そこで高橋さんと考えていた作戦をぶつけてみた。「契約してからすぐに取
り分の7割を切ってしまう事は出来ますか?」2人は一瞬黙ってしまったが、す
ぐに「それは出来ません」ときっぱり言われてしまった。
あくまで育林であり、切る事はだめなのだそうだ。何だか良く分からないが、ど
うやら契約者が切る権利は無いような話なのだ。国が切ってその収益を分配する
のだからという説明だが、要は契約者が木に手を出してはまかりならんという事
らしい。
それでは、広葉樹の林を契約するしかないではないか?・・・さあ困った。3人
で広葉樹の林班を探すのだが、これがなかなか少ない。三の沢の右岸に一固まり
の林はあるが、道がない場所だ。まして、木に手を出せない契約ではお金を何の
為に出すんだか分からないではないか。
105林班に「へー5」という林班が9ヘクタール程の広さで残っている。三の
沢上流の三国林道に近い場所だ。調べると100年生の広葉樹の林である。参考
までに分収育林した場合の金額を聞いてみた。林さんが言うには、100年生の
広葉樹の場合分収育林の金額は1ヘクタール300万円から400万円はかかる
でしょうとの事。ちょっと待てよ、オイ、それじゃあ何かい?切る予定が無い育
林でも2700万から3600万もかかるってのぉ〜?? うへぇ〜〜
ここで課長から耳寄りな話が出た。「確か、津久井の方に分収造林の場所があっ
たんじゃないか?」その資料をさっそく見せてもらう。林さんの方ではすでにそ
の物件を「ニッセイの森」用にリストアップしてあったらしいのだが、資料を見
せてくれた。場所は相模湖の南258林班の2、8ヘクタールの国有林である。
場所はなかなかいい。道志川のすぐ近くで、林班の中を細い川が流れていて、相
模湖にそそぎ込んでいる。広さも適当かなと思うし、何より広葉樹を植林から育
てる事が出来るのが魅力だ。費用はかかるだけ自分持ちだとの事。この辺は先般
もらった費用一覧表の通りだろう。
ただし、2月26日までに返事をしなくてはならないのだそうだ。何とも忙しい
事だ。物件というものはそういう物なのだなあ・・と、つい不動産取引の事を思
い描いてしまった。まあ、似たようなものか?
「勝手に契約しない事」と高橋さんからきつく言われていたので、この話も聞く
だけにしたが、場所は見に行きたいものだ。相模湖インターのすぐ近くという地
理的には申し分ない場所なのだが、釣りという事で考えるとちょっとイメージが
違うような気もするし、とにかく現場を見ない事には何とも言えない。
課長は釣りに理解のある人で、渓流の流域に広葉樹が必要だという事は分かって
いるようだった。今までの政策でこうして杉・ヒノキが植えられてしまったのだ
が今後は考えていかなければならないだろうと話していた。
課長が水戸インターの近くにある御前山という場所にあるケヤキの一斉林の話を
してくれた。何とも気持ちのいい林だそうで、近くではヤマメが釣れるらしい。
「そこにハンモックを吊って昼寝でもしたら最高だよねえ・・」と目を細めて話
していたのが印象的だった。
やっぱりみんなそう思っているんだよなあ、それなのに、いざ広葉樹を植えよう
とすると実績が無いとか、保安林だからダメだ、とか言う。おかしい話だ。
水源かん養林としてや保安林としても広葉樹の方が優れているのは分かっている
のに、ただ、実績がないというだけで許可してもらえない。個人では分かってく
れるのに、組織としては許可出来ない。いろいろな役所でくり返される光景と言
ってしまえばそれまでだが、この壁は厚い。
ともあれ、3月10日には新しい分収造林地の情報が入ってくる事になっている
とのこと。そのほかにも情報が入ったら連絡してくれるそうなので、それを待つ
事にしよう。
役所へ行くと何だか疲れる・・・あとはまた明日から。