瀬音の森日記 40


東京大学で秩父演習林の話を聞く



1999. 3. 5


会員の菊池さんの尽力で、秩父の東大演習林の担当技官の方と話が出来る事にな
った。地下鉄の本郷三丁目駅から歩いて龍岡門から東大に入る。約束の時間まで
30分程あるのでキャンパス内を散歩する。東大病院の方に歩いて行き、グルリ
と廻って三四郎池に出た。                        

菊池さんはここでテンカラのキャスト練習をしていて大きな緋鯉をかけたそうだ。
三四郎池の近くに大きな「釣り禁止!」の看板があったのには笑ってしまった。
ここで釣りをする人がいるとは・・・想像すると何だかおかしい。      

三四郎池の周りは立派な木がたくさんあるので楽しい。大学らしくそれぞれの木
に名札がついている。見ると変わった知らない木が多いのに気がつく。やはり何
かの研究対象になっているのだろうか?大学は大きな植物園でもあるようだ。 

約束の時間に菊池さんの部屋に行く。挨拶もそこそこにすぐに農学部まで行きま
しょうという事になる。菊池さんは歩くのが速いのでついていくのが大変だ。ラ
グビーで鍛えた足腰は普通の人よりも頑丈に出来ているのかもしれない。   

ひたすら構内を歩く。龍岡門から農学部はもっとも遠い学部になる、距離にして
約1キロの早足である。万歩計も大活躍だ。目指す農学部1号館は道路をブリッ
ジで越えた場所にあった。汗をかいてしまった。              

農学部の建物に入り廊下の奥のドアを開けたところが演習林の事務局で、事務局
長の植田さんと秩父演習林の事務主任の小貫さん、技官の佐々木さん同じく技官
の大村さんが待っていた。名刺交換しながら流れる汗を拭うのに忙しい。緊張も
あってか、なかなか汗が止まらないので困った。              

希望として15人くらいで、演習林の中の植生や渓畔林の実体を説明して頂きな
がら勉強するツアーを組みたいのです・・という話をした。もちろん瀬音の森の
話や我々が目指す森作りの話をした上での事だった。            

「いいですよ、構いませんよ」と嬉しい言葉が帰ってきた。宿舎に一泊してもら
ってもいいし・・なんて嬉しい事も言ってもらえた。一泊する場合は宿所も食事
も平日ならOK、土日の場合は自炊なら使用可能、という話だった。      

釣りをする人間が多いのでという話をしたら、技官の大村さんが「私は今岩魚の
生態を研究しているんですよ」という事を話してくれ、ご自身で撮られた写真を
たくさん見せてくれて、しばらく秩父岩魚の話で盛り上がってしまった。   

演習林でもっとも見学に適した時期は?の質問に、やはりそれは新緑の季節でし
ょうとの答え。5月後半から6月中旬までの時期に計画したいという事で了解を
頂いた。服装は普通の登山の仕度で充分との事。1泊コースにするか?日帰りコ
ースにするか、いずれにしても秩父の原生林の姿を勉強するには最高の条件が整
った事になる。                             

演習林利用申込書を頂いて書き方の説明を受け、全国の演習林のパンフレットと
秩父演習林のパンフレットを頂き、さらに演習林の管理地図までもらってしまっ
た。これを元にして演習林見学会の計画を立てたいと思う。         

農学部の建物を後にして、同じ道を龍岡門に戻る。東大の中の樹木は素晴らしい
大きさでのびのびと育っている。今、東京の中でこれだけ樹木がのびのび育って
いる空間は少ないと思う。学問の場には大きな樹木がよく似合う。帰りは周りを
のんびり眺めながらゆっくり歩いた。自分が東大の中を歩いている不思議さもち
ょっぴり味わいながら春一番の強い南風の中を歩いていた。         

菊池さんのおかげで思いがけず東大演習林の見学会が出来る事になった。不思議
な縁だなあと思う。瀬音の森を立ち上げて以来こんな事が続いている。何か必要
になるとその機会が向こうからやってくるようなのだ。不思議な事だ。    

今回は本当に菊池さんのおかげです。ありがとうございました。       

心地よい余韻を感じて・・あとはまた明日から。