瀬音の森日記 41
小菅川放流&清掃ボランティア
1999. 3. 7
山梨県小菅村。東京都奥多摩町に接する県境の村である。この村を流れる小菅川
にキャッチアンドリリース区間が出来る事になった。キャッチアンドリリースと
は釣りを楽しみながら魚はそのまま再放流するという釣り方で、昨年山形県の寒
河江川で本格的に実施され全国的に注目されている釣り方である。
東京に近い川では初めての試みで、もしこれが成功すれば我々キャッチアンドリ
リースを実行している釣り人にとって夢のような釣り場の誕生となる。瀬音の森
会員の渡辺さんの呼びかけで解禁前の放流と川の清掃ボランティアに参加した。
当日はあいにくの雨模様だったが、役場の加藤さん、漁協の古菅(こすげ)組合
長、観光協会の廣瀬会長はじめ大勢の村の方との共同作業になった。
午前10時、我々村外ボランティアは村営釣り場にある「水の館」に集合した。
初めて会う人あり、久しぶりに会う人ありと何となく【瀬音】のOLM(オフライ
ンミーティング)のような雰囲気の集まりだった。
そこに、今回の活動の発起人となったテンカラ名人の堀江渓愚(ほりえけいぐ)
さんがやってきた。堀江さんと言えば2月28日(日)テレビ東京「千夜釣行」
で小菅川でのテンカラ釣りが記憶に新しい。収録されたのは1月だったそうで、
水温3度という寒さの中で見事なヤマメをドライフライで釣り上げてくれたのに
は本当に驚かされたものだった。
堀江さんと役場の加藤さん、そして古菅組合長との話し合いで、キャッチアンド
リリース区間設定の話がトントン拍子で進み、他では例を見ない早さで実現する
運びとなったのだ。堀江さんもその事になるとあまりにも順調で恐いくらいだっ
たと言う。タイミングが良かったのだろう。大きな事業が動き出すときはそんな
ものなのかも知れない。
一番大きな原動力は地元の人の「昔はこんな大きなヤマメが群れて泳いでいた」
という思いを一部の区間でも実現したかったからだ・・とパンフレットに書いて
あった。
小雨の降る中で村の皆さんが大鍋にうどんを作ってくれた。組合長は自慢のヤマ
メを串に刺して塩焼きにしてくれた。大きな岩魚の刺身も作っていただいた。
全員満腹になったところで、役場前に集合しボランティアの会場へと散る。
キャッチアンドリリース区間についた我々はさっそく周辺のゴミ拾いを始めた。
各自ビニール袋を持ち、川のゴミを拾う。一見するとゴミも無いように見えるの
だが、袋はいつの間にかふくらんで行く。思ったよりもゴミがあるのだ。
そこへ放流魚運搬車がやってきた。今度は魚と水がたっぷり入ったビニール袋を
担いで河原を延々と歩き、なるべく遠くの場所に魚を放流する。ここぞという淵
を探して、そこにビニール袋の口を開いて魚を放流する。ヤマメ達はゆらゆらと
泳いでいるだけで逃げようともしない。足の周りに固まっていて、うっかりする
と踏んでしまいそうだ。
そのまま下流に向かってゴミを拾いながら下る。ビニール袋はすぐに一杯になっ
てしまう。一杯になった袋は道の横にデポしてさらにゴミを拾いながら下る。
様々なゴミがあるのだが、一番多いのは農業で使ったビニール関係だ。風で飛ば
されて川に落ちてしまうのが原因らしい。ガードレールなどの大物は手も付けら
れない。川の中よりも岸の増水した時の跡にゴミが多い。イヤになる程多い。漁
協では毎年2〜3回こうして川の清掃をしていると聞いた。本当に頭が下がる。
釣りをする立場からするときれいな川は当たり前のような気もするが、こうして
自分でゴミを拾ってみるとなおのこと川はきれいであって欲しいと思う。目の前
でゴミを捨てるような奴がいたら殴ってやろう・・とみんなで言って笑った。
こうして集めたゴミは軽トラック2台分はあった。漁協の皆さんがそれを片づけ
ているのを見ながら我々ボランティアは閉会式を行った。漁協からのはからいで
小菅の湯に無料で入れる事になり、三々五々温泉に向かった。正直寒さが染み込
んでいたのでこの配慮はありがたかった。
小菅の湯で体を伸ばしてみんなと語り合う。どの顔も充実感でいっぱいだ。釣り
もいいけど、こうしてボランティアで汗を流すのもいいものだ。小菅川のキャッ
チアンドリリース区間が成功して魚が残るだけでなく、再生産出来るようになっ
てくれればいいなあと思いながら暗くなった小菅川を眺めた。
あとはまた明日から。