瀬音の森日記 45


ぶなの森体験塾その1



1999. 3. 20


「ぶなの森体験塾」これは秋田の「森と湖の里、森林とのふれあい推進協議会」
が主催し、仙北農林事務所及び田沢湖町、西木村、角館町が共催で行うJR東日本
の体験型ツアーだ。3日間のツアーは田沢湖駅で26人の集合から始まった。 

場所を田沢湖畔のホテルに移して昼食を兼ねた開校式が始まった。仙北農林事務
所の草階さんの司会で関係者の紹介。田沢湖町の佐川さん、秋田県の宮崎さん、
今晩お世話になる鶴の湯の佐藤社長、JRの小松さんと松尾さん。       

食事の後にさっそく工作の時間。輪切りの板で自分の名札を作る。参加総勢26
名が初対面になるので、名前が分かるようにという事で名札を作る。当然、スタ
ッフの人達も名札を作る。                        

バスに乗り込み、最初に向かったのは田沢湖町の農業小玉さんの椎茸栽培ハウス
だ。ハウスの中は暖かい。農林事務所の松浦さんが説明役でいろいろ説明してく
れる。椎茸栽培は原木栽培から培地栽培に栽培方法が変わってきている。   

ナラなどのおがくずとコーンブラウン、フスマなどを高温殺菌して固めたものに
椎茸菌を植え込む菌床栽培で、原木よりも軽く収量もそんなに変わらないという
事で今や椎茸栽培の主流になっている。                  

ただ、材料の輸入品の薬品処理の問題などがこれからクローズアップされてくる
ことも懸念されている。私は個人的には椎茸は原木栽培であって欲しいと思う。
参加者は椎茸摘みをしている。これを明日の昼食で食べる事になっているのだ。

次に向かったのは、樹齢200年を越える杉林を育てている千葉家の家伝林だ。
雪の山道を歩いて登り急に空が高くなったような気がして見上げると、そこには
素晴らしい杉林が広がっていた。樹齢200年、高さ平均43メートル、太さ直
径63センチ、最大118センチ、500本の堂々たる杉林だ。       

佐竹藩の木山方(もくざんかた)だった千葉さんの祖先が江戸時代に植えた杉を
営々8代に渡って守り育ててきたのだ。戦争当時には大半の杉が切り出されたが
運良く終戦で残されたのがこの杉林なのだ。これはもう日本の財産と言えるだろ
う。造林された杉林では最も歴史のあるものに入るだろう。秋田杉の美林が雪の
中にすっくと立ち並んでいる。                      

素晴らしい杉林の余韻に浸りながらバスは今晩の宿泊地鶴の湯温泉に向かう。雪
の壁は徐々に高くなりブナが段々太くなっていく。鶴の湯温泉は雪の中にひっそ
りと埋もれていた。ここは名湯百選にも選ばれていて乳白色の露天風呂はJRのポ
スターなどにも何度も登場している人気の温泉だ。             

さっそくその露天風呂に入り、冷え切った体を温める。温泉の後は鶴の湯自慢の
夕食だ。ざっとそのメニューを上げると岩魚のたたき・蕗味噌(ばっけみそ)鮭
の煮出し・ひらたけと菊の和え物・山芋千切りとんぶり和え・岩魚の塩焼き・姫
竹油炒め・温かい手打ちそば・山菜おつくり・山の芋鍋・香の物・ご飯など。 

そしてお酒は、またたび酒・にごり酒・鯛の骨酒・原酒などが次々に出てくる。
囲炉裏の周りでは寒干しもちを焼いて食べる。これもほんのり甘くておいしい。

食事の後は宮崎さんの夜学だ。宮崎さんは白神山地のフィールドガイドや秋田の
防風林を取材して緑の遺産という本を書いた人で、この土地の事を熟知している
人だ。おまけに話がうまい。参加者は宮崎さんの楽しい話にぐいぐい引き込まれ
ていく。西木村に伝わる「カンデッコ上げ」の話から始まり、山の話、森の話、
ちょっとエッチな話などが次から次に飛び出してみんな大笑いだった。    

そのころ私は囲炉裏の横で原酒を飲みながら気分良くコックリコックリと居眠り
をしていた。                              

もう今日はおしまい・・・あとはまた明日から。