瀬音の森日記 76
「川とつきあう」を読む
1999. 8. 25
岩波書店の「川とつきあう」(小野有五 著)という本を読んだ。北海道のひろしさん
から贈られた同じ著者の書いた「北海道森と川からの伝言」という本も読んでいたので
内容は素直に頭に入っていった。川が好きで川に遊ぶ全ての人に読んで欲しい本だ。
今、日本の川がどうなっているのか。このままでは将来日本の川は無くなってしまうの
ではないか?と思わせる内容に「このままではいけない!」と、おそらく誰もが思う事
だろう。私も本を読んで日本の川の危機的な状況がよく分かった。
著者が「川だけで川ができるのではない。森だけで森が出来るのではない。森と川、そ
の二つがいっしょになって、はじめて私たちが【川】とよんでいる自然は出来ているの
だ。 川には森がなければならない。」と書いている部分に強い共感を覚えた。
河畔林、渓畔林の必要性が強く叫ばれる。そう、川は水路ではないのだ。森から流れ出
て海に至る生態系なのだと思う。私は北海道の西別川に毎年釣りに行く。この川は河畔
林だけでかろうじて生きている川なのだが、じつに豊かな川なのだ。
見渡す限りの牧場の中を蛇行してゆったりと流れる西別川。河畔林は牧場の中に忽然と
現れ、そこに川があることを示している。その河畔林の中にだけ野生が生きる事が許さ
れる。野生動物にとって貴重な空間だ。釣り人にはその野生がじつに手強い。
たかだか50メートル幅ほどの河畔林なのだが、ジャングルのように猛々しい野生にあ
ふれている。当然ながら魚も野趣あふれた元気者が我々と遊んでくれる。北海道の中で
も貴重な野生あふれる川なのだ。
この川に河畔林を植えようという運動が起きたのはそう昔の事ではない。1988年か
ら毎年春にミズナラやハルニレなどを植える「おさかな増やす植樹運動」を始めたのは
河口別海町で鮭漁をしている漁協の婦人部の方たちだった。100年かけて100年前
の自然の浜を取り戻そうというのである。
森の栄養分が海に届いてこそ豊かな海の幸に恵まれる。幸いなことに西別川にはダムが
ない。日本中の川にダムが出来て海がダメになる現実はその判断が正しかった事を裏付
けている。河畔林を植えて育てて森にする。それが豊かな海の幸を約束してくれる。
川というのは山(森)と海とをつなぐ命の流れなのだと思う。せき止めることの弊害は
誰の目にも明らかだ。この本にかかれているように川が死んでからあわてても遅い。
死ぬ前に何とかしなくてはいけない。
川を殺さないためにはどうすればいいのか? それは簡単なこと。今のままで手を加え
ない事が川を生かすことなのだ。護岸は仕方ない事もあるだろうが、せき止める事だけ
やめなければならない。堰堤、砂防堰堤、砂防ダム、ダム、河口堰、これらがない川が
いまやどこにあるだろうか?
著者は「川の自然をとりかえす」・「川との新しいつきあい方をもとめて」と未来に向
かって川とのつき合い方を書いている。経済活動が停滞して見直す事も多くなっている
この時代に、川とのつき合い方を見直すきっかけになればいいなあと思う。
河畔林を考えながら・・・・あとはまた明日から。