瀬音の森日記 78
川は土砂捨て場?
1999. 9. 5
久しぶりに奥秩父を廻ってきてその工事の多さに驚かされた。滝沢ダムの周辺整備事業
などもあるのだろうが、山を削り、穴をあけ、その土砂を川に落とす。考えられないよ
うな工事がすすんでいる。
滝沢ダム建設現場では両岸の山を削って土砂を川に落としている。川は土管のような水
路になって工事現場の下流で放水している。あれはもう川ではない。ひどいものだ。コ
ンクリートを打つ前に山の土砂を剥ぐ工事がすすんでいるのだ。山は表土を削られ川に
流れ込んでいる。
車を停め、缶ジュースを飲みながらアンパンをかじる。眺めているとたまらなくなって
目をそらしたくなってくる。でも、この光景を目に焼き付けておかなければならない。
これは、秩父から北上し雁坂トンネルの手前、ループ橋を渡りトンネルをひとつ超えた
ところで見られる。
次に変な工事跡を見たのは滝川だった。東大演習林の樹木園から滝川に降りる道の途中
でそれを見た。トンネルのものか道路工事のものか?大量の土砂が国道から滝川に向か
って落とされていて階段状に固めてある。
見上げるような巨大な壁が中央に排水の為にコンクリートのトイが作られていて、国道
から滝川まで一直線に落ちている。谷が一つ土砂で埋められているのだ。その工事現場
の近くには土壌安定剤の薬品の袋が無造作に置いてあった。薬品で土砂を固めて崩れな
いようにしているのだろう。
この川の魚影が薄くなったという。このような巨大な土砂の壁があちこちにあり、そこ
から土壌安定剤や凝固剤の薬品が溶けて流れているとしたら川虫も魚も生きてはいられ
まい。道路工事のツケはそんな形で出てくる。無惨な光景だ。国道からは見えない場所
でひどい工事をしているものだ。固められた斜面を見上げていると怒りが湧き起こって
くる。いったい誰がこんな工事を許可したのか・・・
次に見たのは「わさび沢」だった。雁坂トンネルを掘った時の土砂でわさび沢を埋め立
てたのだ。巨大な土砂の壁が固められて、その上を整地して今は立派な休憩所と駐車場
とヘリポートが建設されている。その駐車場を歩いていると、かつてここがわさびの茂
る緑豊かな清冽な沢(の上空)だったとはとても思えない。
山を削った平地ではなくて土砂で固めた平地だと考えると、いつか崩れるのでは?と不
安になる。これだけ大量の土砂が崩壊したら滝川はどうなってしまうのか?トンネル工
事が始まった時に「滝川はもうだめだ」と誰かが言っていた。工事の土砂捨て場がどん
な状態になるのかを良く知っていたのだろう。
この休憩所の二階に東大の資料館があってそこを見学させていただいた。(現在は開館
準備中で、今回は特別に見させて頂いた。)この場所の建設前と建設後(現在)の写真
が展示してあり、わさび沢での様々な薬品の水質調査結果が一覧表になっていた。この
一覧表は是非皆さんに見て頂きたいものだ。建設前の調査数字と建設後の調査結果がは
っきりグラフになっているので一目で建設後の水質が悪くなっているのが分かる。土壌
安定剤、凝固剤などが川に流れ出しているのがはっきりと数字で分かる。
土木事務所の圧力に負けて開館時に別の展示に切り替わったりしないように節に関係者
にお願いしたい。水源の森を守るのが我々の大いなる願望だが、こうした具体的な数字
はその後押しとなってくれるはずだ。環境に影響のない工事なんてない。水源を薬品ま
みれの土砂で覆っていいのか?水質悪化の責任は誰がとるのか?そのグラフを見てじっ
くりと考えて欲しい。
水源にトンネルを掘ったり林道工事をしたりするという事はこういう事なのだ。土砂で
谷を埋め薬品で固める。いつ崩れるかも分からない土砂の斜面。崩れた土砂は川を埋め
、砂防堰堤を埋め、ダムを埋める。砂防堰堤もダムも埋まってしまえば何の役にも立た
ない。だから埋まらないように更に砂防堰堤を建設し土砂を薬品で固める。
その薬品が水に溶け、川虫を殺し、魚を殺す。そして、その水は我々の水道水になるの
だ。本当にこのままでいいのか?この3つの現場を是非下流の人に見てもらい聞いてみ
たい、本当にこれでいいんですか?もっともっと声を上げないと我々の水源はどんどん
壊されていきますよ。
川の反対側から工事現場を見るとその異常さがよく分かる。工事している側からでは見
えないものが沢山あることがよく分かる。これも釣り人ならではの視点かもしれない。
そんな視点をもちながら川や森を歩くことも大切な事だ。
あらためて崩壊の速さを思う・・・・あとはまた明日から。