瀬音の森日記 86
どっこい、川は生きている。
1999. 10. 23
10月23日(土)代々木の国立オリンピック記念青少年総合センターで川辺川東京の
会主催のイベント「どっこい、川は生きている。」が開かれた。川辺川ダム問題に関し
ては瀬音の森でも「川辺川に環境アセスを・・」という国会誓願の署名運動を行い、そ
の署名は会員が集めた分だけで750名を超えた。
今回のイベントはその中間報告も含まれており、利水裁判が山場を迎えた川辺川ダム問
題を風化させないように、また、更なる盛り上げを意図して企画されたものだ。熊本か
らも大勢の参加者があり、熱気がこもった会場となった。上映する予定のビデオを届け
るために一足早く会場に着いたのだが、パネリストの名札を書いて欲しいと言われ、急
にスタッフとして手伝う事になってしまった。
いろいろすったもんだがあったのだが、予定通り1時半に開演となった。人吉の佐藤さ
んが撮影したビデオ「めぐりめぐる」が上映される。いつか瀬音の森でもこんなビデオ
を創りたいものだ、と隣に座っていた澤田さんと話す。その後のプログラムは以下の通
りだった。
13:43 開会挨拶(司会 高橋ユリカ)概要説明
渡辺 誠 川辺川東京の会事務局
13:50 川漁師から見たダムと川と魚たちの因果関係
吉村勝徳 川辺川・球磨川を守る漁民有志の会代表(川漁師)
14:30 公共事業と環境アセスメント
原科幸彦 東京工業大学教授
15:00 子守唄の里・五木村の過去と未来と環境
田中雄士 熊本県・五木村村会議員
15:20 休憩
15:30 紋次郎が見てきた球磨川〜川辺川
中村敦夫 参議院議員
16:00 代替案からみる川辺川ダムの問題点
神亀 好 河川技術者
16:20 質疑応答
16:40 環境アセス署名者数発表
川漁師の吉村さんの話は、現場の声が素直に反映されていて、ダムがいかに魚に悪いか
が良く分かった。日本一の水質が日本一の鮎を育てているのだという漁協の根幹にかか
る部分に川辺川ダム問題がある。球磨川下流に出来た二基のダムで不知火海のアサリが
死に、次に海苔がダメになった。という吉村さんの話に山と海がつながっている事を実
感した。川辺川を殺さない為にも吉村さんには是非これからも頑張って欲しい。
原科先生の環境アセスの話は、テキストなしにはちょっと難しい内容だった。世界の流
れからいかに日本が遅れているか、という事が良く分かった。建設業界主導の計画作り
が主流の日本では環境アセスはまだまだ認知されないようだが、これからは無視出来な
い流れになるとのこと。本当に早くそういう時代になって欲しい。
五木村の田中村議は、このシンポジウムに出席する事を禁止するよう村議会に働きかけ
る村議の動きを無視して東京にやって来た。その事は地元の新聞にも大きく取り上げら
れた。そんな地元の声をよそに、田中議員は五木村の過去・現在・未来を真剣に考えて
いる。「山小屋」というペンションを経営しているが、その家の裏手には川辺川の支流
が流れており、来年ここの5キロをキャッチアンドリリース区間に設定して、ヤマメ釣
りの愛好家に解放しようという計画を進めている。頑張って欲しい。
24日のTBSテレビ「噂の東京マガジン」という番組の「噂の現場」というコーナーで
も放映された「川辺川利水訴訟」の原告団の人々3人が紹介された。利水裁判はいよい
よ結審に向かって最後の詰めの段階になっている。農水省の苦戦が報じられているが、
結審するまで分からないので、気が抜けない。会場から3人に大きな拍手が送られた。
中村敦夫議員とは7月に川辺川に同行したので、言わんとする事は良く分かった。いろ
いろな問題と取り組むと、否応無しにこの国の根幹となっている大きな問題とぶち当た
る。利権の実態であり、官僚の腐敗であり、土建体質であり・・・たとえ国会議員とい
えど、一人で戦うには巨大すぎる相手だ。でも、われわれには中村議員しか頼れる人が
いない事も事実なのだ。是非、是非、頑張って欲しい。
神亀さんは河川技術者で、川辺川ダムに関して建設省が出している様々な数値の矛盾点
を解説してくれた。そしてダムを作らずに出来る治水の方法など、環境アセスでいうと
ころの代替案を提示してくれた。こういった専門家の応援はとても有効でありがたい。
各種の専門家が応援ネットワークになっていたらどんなにか力強い事だろう。今後そん
な動きがあれば、全国のダムバスターも、もっと力強くなるのではないだろうか。
最後に環境アセス誓願署名の現在数が発表された。19、339名の署名が集まってい
るとの事。今後、利水裁判などで原告が勝つことがあれば、川辺川ダムは計画変更を余
儀なくされるはずだ。その時には、この署名が大きな意味を持つことになる。まだまだ
署名は集め続けていくとのこと。
有意義なシンポジウムは5時前に終わった。帰り道、澤田さんといろいろな事を話なが
歩いた。当面は西大芦漁協の応援と署名運動をしなくてはならない。
ダムバスターズは元気いっぱいだ・・・・あとはまた明日から。